最近、スマホでのゲームを日課にする様になった。元々、それほどゲームに興味は無かったのだが、今や主に脳トレの為である。オセロなどの対戦ゲーム、音楽の為の音感トレーニング、ソロバン、記憶力を鍛えるゲーム、瞬発力や反射神経を鍛える為のレーシング・ゲームなどなど…
まぁ、その関係で他人がゲームしながら実況してる動画もたまに観たりもする。これが意外と面白い。へぇ、そこでそんなアイテム使うんだ…とか。
で、ふと気付いたんだけど、これってジャズと似てるなぁ…と(笑)
ジャズって、ゲームの「新しい『アイテム』をゲットして、『敵』を倒す」って感覚に近いんじゃないかと。『アイテム』ってのが、誰かのフレーズとかスケール等のコンセプト、『敵』ってのが難曲であったり複雑なコード進行。
ジャズはその進化に伴って、敵は強敵となって行き、アイテム=武器も進化して来た。また、古い武器で闘う事も可能ではあるが、新しい武器で闘う方がスマートでカッコ良いとされて来たフシがある。僕の若い頃は、その最新のアイテムでありアイコンがマイケル・ブレッカーだった。
このご時世、ジャズ・ファンの殆どが僕以上の年齢の中高年だ。ライブ・ハウスの客席に若者の姿を見る事は殆ど無い。なのに若い新人が次々とデビューするのが不思議で仕方なかったのだが、若者達を夢中にさせるジャズの魅力ってのが、もしかしたらこのゲーム感覚ではないのだろうか…と思うようになった。
古いアイテムから新しいアイテムに至るまで、様々な武器をゲットする事によって、様々な難局(難曲)やシチュエーションに対応出来る様になるのは確かにとても面白い。そういう意味では、昨今の国内外の若手の能力はめちゃくちゃ高くて驚愕する。恐らく、昔はそういう人は一握りで、天才と呼ばれたのだろうけど、ネットでの情報も多く、教育システムが整った現代では、そういう人が多くなって当たり前なのだろう。
しかし、残念ながら、僕のコンテンポラリー・ジャズへの興味は、マーク・ターナーやクリス・ポッター辺りで止まってしまってる。「俺も歳とったからかなぁ…」なんて溜息も出たのだけど、それでも、若手チェックを辞めたわけではない。素晴らしいと思う演奏も数々有る。ただ、ジャズにそのゲーム感覚が見えると途端に冷めてしまうのだ。
ジャズの魅力は「個性の手作り感」だと僕は思ってる。決して「そのアイテム、クールだね!何処でゲットしたの⁈ イェーイ!」ではないと思うんだな。
スタン・ゲッツは北欧に住んでた頃、母国のコルトレーンが新しい音楽を作って絶大な支持を得てる…と聞いて、慌てて帰国し、コルトレーンの奏法に寄せはしたけど、決して単純にアイテムをゲットしたり、自分の個性を崩しはしなかった。「Another Coltraneは要らない」と僕も在米中よく言われたけど、アメリカ人はその意識が強く、「他人と違う事をやってやろう!」という気概のミュージシャンが多かったと記憶している。勿論、伝統を踏まえた上での話だ。
しかし、昨今のアメリカの若手を聴いても、びっくりする程個性的なアーティストを正直聴いた事が無い。やはり、何処かゲーム感覚が見えてしまう。まぁ、僕のリサーチも年々いい加減になって来て、それよか時代背景の考察と共に古いレコード聴いてた方が刺激的…なんて考えちゃうから、正しいとも言えないけど。
でも、最近、超バカテク(ブレッカーどころじゃない!)のアルトの若手を聴いた時の自分の恐ろしい程の冷め具合を客観的に分析すると、ジャズの魅力って本来はそこには無いのだろうな…というのは何となく分かって来た。恐らく、我らがブレッカーも自身でそれには気付いていて、「俺はジャズじゃない…」なんていう、僕らからしたらとんでもないコンプレックス(これホントの話)を抱えていたのだろうと思うし、晩年、レジェンド達と演奏する様になって、心底楽しそうだったのは、そういう葛藤を経て、漸く彼自身が考える「真のジャズ・メン」になれたからではないかと推察する。
多分、世界中の一般のリスナーの多くがこんな事どうでも良いと思ってるだろうし、価値観のズレなんて何処にでも存在するのだから、それを論った所で何の解決にもならないだろう。「教育しなければリスナーが育たない。」という、ジャズ(或いはクラシックもそうかも)の最大の弱点が、結局はジャズをつまらなくしてるのかも知れない。アイテムが多過ぎて重い鎧兜を纏った様な音楽を聴いてるよりは、素っ裸のチェット・ベイカーを聴いてる方が今の僕には心地よい。
ま、演奏もリスニングも、収入や注目度を度外視して、心から楽しもうと思えば思うほど、シンプルになって行くんだなぁ…というのが分かっただけでも、長年ジャズに携わって来て良かったなぁと思える。そして、そういう音楽こそ最も心に沁みる。
「教育しなければリスナーが育たない」問題は、昨今のライブ・ウォッチャーの高齢化問題に繋がるのだけど、それはまたの機会に。
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