Saxophonist 宮地スグル公式ブログ

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今、手元に無いもの

2018年08月03日 02時03分17秒 | jazz
多忙だった2018年上半期が終わり下半期は割と落ち着いた…というか、暇な日々を過ごしている。お陰で家計簿付ける度に冷や汗が出るけど。(笑)

時間も有るので、忙しい時には出来なかった練習をやり始めた。音楽も沢山聴いている。日々、発見だらけ。まぁ、これらが実際の演奏に結びつくまでには、ある程度の時間が必要だとは思うけど、なるべくライブ活動の中でトライはしようかと。そういう意味でも演奏に追われる日々では無い事が今は助かってるかも知れない。

今年4月のツアーで毎日の様に演奏してるうちに、まぁ、よく有る事だが煮詰まってしまい、もっと違う表現法は無いかな…と思い始めた。自分に飽きるという事は、形が出来てしまってて、そこから逸脱出来ない状態という事だ。それをぶっ壊す事はリスキーで不安や恐怖が付きまとう。でも、今迄もそれはやって来た事だ。自分にそれまで通りの何かを期待されていると感じていると、それは怖くて出来ないと思う。でも、今の僕にはそんなものは無い。

デビュー当時にはまだそんな期待も多少は有ったかも知れないけど、50過ぎの男に最早、世間の誰も大した期待を寄せよう筈もない。ひょっとしたら、既に多くの期待を裏切って来たのかも知れないし。それでも僕は今日まで自分の道を歩んで来たと思う。

僕はそれ程多くの人々に愛されるキャラではないと自覚している。それを恨んだ時期も有ったけど、まぁ、何だかんだで、ここまで好きな様にやって来れたのも、数少ない応援してくれる方々のお陰だととても感謝しているし、もうこの歳で皆の人気者になりたいなんて思わない。(笑)

もっと沢山の人に愛して貰おう…なんて考えないで良いなら、よし、更に自分の好きな道を極めようじゃないか!と思える様になった。ま、この歳でやっとそう思えるなんて、今まで雑念が多過ぎたのかもね。ははは。

僕は、コルトレーン→ショーター→ブレッカーと熱い演奏をする人を追っかけて来て、ウエスト・コーストのクール・ジャズ系には見向きもしなかった。しかし、昨今のマーク・ターナーのブームでトリスターノ一派の代表格、ウォーン・マーシュが再注目されてる事もあり、また、たまたまオファーされた「レスター・ヤング研究」というレクチャーの仕事で、好きでもないレスターを勉強しているうちに、如何に彼が多くのテナー・マン達に影響を与えたかを知る事となり、今迄避けて通っていたプレイヤー達を貪る様に聴き始める様になった。もう、2、3年になるかな。

高校生でアルトを吹いていた頃は、アート・ペッパーが好きで聴いていた。80年代初頭、日本ではちょっとしたペッパー・ブームだった。でも、大学に入ってテナーにスイッチしてからは、全く違うスタイルを求めて、はや30年…イースト・コースト一本槍で来た僕が、ウエスト・コースト系を今から学ぶのは難しい。というか、やはり自分が求めているものは、単純に音色がソフトでスムーズなメロディーライン…というのではない。ウォーン・マーシュの様な奇妙な音使いだったりする。研究すると、スタン・ゲッツもトニック・メジャーで、ドミナントで使うべきテンション・ノートを入れてたりと、プチ・アウトをしていて興味深い。リー・コニッツのクロマティック・ラインは言わずもがな。

結局、トランスクライブをして、そのままそのフレーズを使うというのではなく、何か新しい、今迄に無いものを生み出したいという欲求が強くなって来た。かつては作曲という作業で、こういう欲求を満たして来たが、今は明らかに違う。スタンダードを演奏する上でのオリジナリティーにしか、ほぼ興味が無い。キース・ジャレットが「スタンダーズ」を結成した気持ちが少し分かって来た気がする。

僕のCD制作や作曲やアレンジに関しては「Grooves Around the Globe」というアルバムでとことんやりたい事をやり尽くして満足してしまった。(敢えて言えば、あとやり残したとしたらビッグ・バンドくらいかな。) それ以降はオマケの…というかご褒美の音楽活動だと思って伸び伸びと制作をしている。これが意外と良いものを生んでる気がするし、「ジャズなんか聴きたくもない」と思ってた一時期よりは精神的にも安定して、楽しく過ごせていると思う。

2ちゃんねるでディスられたり、ブログが炎上したりした頃が今では懐かしい。世間の噂にもならず、ちょっと寂しさが滲み出た頃も有ったが(笑)、今やっと音楽と真摯に向き合える様になった気がするし、もっと楽器が上手くなりたいと心から思う。ただ、歳のせいか、ちょっと長い時間練習したら集中力が突如として目に見えてガラガラと崩れ堕ちる様は若い頃には無かったなぁ。

今迄、パターン練習をこれでもかと言うくらいやって来たけど、漸くそれらを自由に変化させる事が出来る様になり、いよいよ長年の憧れである、直感のみでゼロから創り上げる奏法に入ろうとしている。でも、それはイバラの道で過去に何度となく挫折している奏法。今後も様々な葛藤が有るのは目に見えている。

ただ言えるのは、誰かの期待とか、世間のシガラミとか、そういうものから解き放たれた今、日和った演奏をする必要が全く無い今、純粋にやりたい事が出来るって幸せな事だ。

僕は過去を振り返るのはあまり好きじゃない。昔の楽しい思い出に浸りたい気分の時は当然有るけど、過去の演奏は僕にとってフレッシュではなく、反省材料でしかない。だから、ちょっと想像すれば、過去に戻るのは単純に楽しい事ではないのが分かってしまう。だから、前を向いて歩んで行くしか無い。今、手元には無いモノを求めて。
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