核兵器が大量殺戮の残虐兵器であることは誰も否定できない。なくすべきことも否定はしない。なのに、原爆投下の「おかげ」で第二次世界大戦が終わったとか、核兵器の「おかげで」核戦争を防いでいるというけったいで馬鹿げた議論が1954年以来、米ソ両大国の「抑止と均衡]による平和の理屈として積み重ねられてきた。いまでは、そんな議論を正面から振りかざす人はごく少数だろう。その種の議論を一時期信奉したが間違っていたと反省する人もいる。核兵器をなくすかどうかは技術的な問題ではない。為政者の意思にかかる。しかし、為政者の態度を待ち望んでいるだけではことはすすまないだろう。NPT再検討会議が高く評価した「市民社会」の草の根の力が世界を動かす。ぼくもその中の一匹の虫。蝉には負けるが、賀茂の鶴で乾杯できる日をめざして詠い続けよう。
<句集原爆忌より>
日本中を祭壇にして原爆忌 虎三
癌のごと雲むら立ちぬ原爆忌 若水
漁火殖ゆはよし原爆の忌なりけり 柑風
白雲へ白鳩発ちぬ原爆忌 愚句