我が家の「その部屋」に入るたびに、思い出す人がありました。
Hさん 日本人男性。年恰好は、そうですね、65歳くらいではないでしょうか。
まだ働いておられます。非常に勤勉。仕事もよくおできになると思います。
完全に「良い方」です。嘘をつかれませんし、十分信頼に足る方なんです。
というわけで、私、Hさんとお付き合い願っています。もう、かれこれ5年近くになりましょうか。
ただ、ここで、問題が一つあります。
Hさん、面白くない。魅力がないんですね。
一緒にいて、楽しいというわけではないのです。だいたい「冗談」というものを口にされませんし、我々の会話は、大体私の主導。
これで、お酒でも飲まれれば、話は違ってくるんでしょうが、「一滴もダメ」と来ています。ご一緒していると、なんとも時の経つのが遅いこと。ああ、退屈。さあどうしましょうか?
我が家の、「その部屋」とは、台所のことです。
機能の側面だけから言えば、全く問題はありません。そこに置いてあるもの、全てきちんと作動しますし、それに文句を言ってはいけません。
ただ、そこにいて、私、楽しいなどと思ったことは一度もありません。用事が終われば、さっさと出て行く。心をウキウキさせるものがないんですね。なんだか、事務所みたい。
一方、私の家の他の部分では、どこにいても、心が落ち着きます。結構楽しいんです。
私の今住んでいる家は、21年前に新築で買った建売住宅です。8戸連棟の一つ。立地条件も、家そのものも気に入っています。
尤も、比較的安いものでしたので、内装がなんともお粗末。嫌でしたが、そんな贅沢は言っておられません。とにかく、家を持たなくては、というわけで、友人と共同で買ったのです。
爾後16年、経済的な見通しがある程度ついたところで、いそいそと改装に取り掛かりました。
第一に手掛けたのは、勿論、一番嫌だった台所です。台所は、どんな家においても、しょっちゅう使われるところですしね。
しかし、困ったことがありました。その時点で、自分に、どれほどの経済的余裕があるのか、的確な予測がつかなかったのです。
したがって、それほど多額の金は出せませんでした。
結果的に、それがいけなかった。出来上がりは、機能的だけれど、味もシャシャリもない事務所みたいな台所という始末です。
でも、文句は言っておられません。そんな事務所台所でも、使っていかなければ、。
台所の場合、その壁に貼るタイルで、結構オシャレができるんですが、この事務所のは、大きなベージュ色の正方形が、何枚か貼り付けてあるだけ。
あれは、改装を手がけた職人が、手を抜くために、そんなのを使ったのだとしか思われません。なんとも殺風景です。
それと、調理台に当る部分(working surface)は、分の厚い木材。本当は、全面、石にしたかったのですが、。
そういう事務所台所も、できてから、もう4歳半になりました。
この時点で、家の他の部分の改装は、もうほとんど全て終っています。
というわけで、ホッと一息吐いたところ。
しかし、同時に、事務所台所に対する鬱憤が再勃発してきました。
明日、台所の壁の大きなタイルを取り壊しに、職人さんが来られます。
そこには、石みたいな小さな、しゃれたタイルを貼り詰めます。おっしゃれ〜 。
調理台は、いうまでもなく、黒い石のピカピカするものを。
こういうのが、出来上がると、料理していても、楽しいでしょうよ。台所ばかりにいるかもしれません。
この改装が終ると、一度Hさんをお呼びしようと思っています。
でも、ご招待しても、期待とは裏腹に、何もおっしゃらないかもしれませんよ。
もっと極端に、改装に気づかれない可能性すらあります。
そういう人なんですわ、Hさんって。
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