滋賀県警の西村真子さんは、事件現場で採取した靴跡や手袋などの痕跡の特徴を分析する、滋賀県警鑑識課の足痕跡(そくこんせき)係の中で、裁判での証拠となる鑑定書を作る「鑑定官」に1月24日、指定された。
女性では全国で7人目、近畿2府4県では初めて。「責任ある立場になる。1つずつ確実に作業していきたい」と気を引き締める。
西村真子(にしむら・まこ) 1994年、東近江市出身。巡査長。小学校低学年で始めた剣道は3段。警察官を志すようになった八幡商高(近江八幡市)では、滋賀県団体ベスト4に入った。趣味はサイクリング。大津市在住。

↑写真:中日新聞より
足痕跡係は現場に残された靴跡などの「足跡」や、工具やタイヤなどの「痕跡」が、容疑者の物と一致するかどうかを調べる。細かい作業が多く、短期集中型の仕事。「同じ作業が続かない性格だから、物によって内容が変わるこの仕事が性に合っているんです」と笑顔を見せる。
鑑定官になるには、足痕跡の業務で5年以上の経験と、法科学研修所(千葉)での研修が必要。
警察官に女性が少なかったことや「鑑定官は男性」という風潮があり、これまで女性は少ない。「性別は関係ない仕事」と強い意志を持ち続け、今回指定された。
剣道一筋だった高校1年のとき、警察官を志望するようになった。2つ上の部活の先輩が警察官になったのを見て「人の役に立つ仕事に就くのもいいな」と志した。高校卒業後の2012年に採用され、初任地は守山駅前交番。日頃の巡回が、地域の人からの信頼の礎になると感じた。
鑑識との出合いは、2014年に異動した守山署刑事課だった。「緻密な仕事で、向いていないかな」と思っていたが、やってみると指紋や足痕を見つけることができた。「証拠につながって、やりがいがある」
迷いもあった。向き合うのは物ばかり。被害者との直接の関わりはあまりない。戸惑いに気付いた上司に言われた。「被害者のための鑑識だから、最後までやり抜きなさい」。採取した指紋が容疑者特定につながった経験もあり「この道で行く」と決めた。
2016年、滋賀県警察本部鑑識課に配属され、最初は機動鑑識班に。鑑識の中でも足痕跡に興味を持ったのは、空いた時間に補助で入ったとき、先輩鑑定官に「やってみないか」と声をかけられたからだった。「向いていると思われたのかな」とはにかむ。
その後は鑑定官になろうと、2017年から兼務、2019年から専任となり、5年経験の条件を満たした。「限られた資料から特徴を見つけ出すのは、パズル合わせみたいで面白い」とやりがいを語る。
「女性初」といっても、気負いはない。「男性は多いけど、女性もこういうことができると興味を持ってもらえたら。しゃべり相手もできたら嬉しいです」と後輩の誕生を期待する。「これまで先輩にいろいろ経験させてもらった。それを自信にして、やっていきたい」と力を込めた。
<中日新聞より>