この日のBCでアクシデント発生
今日、一緒に無意根山(薄別ルート)に登ったMotoさんがスキーで滑走下山途中の林道を
ショートカットしたところで転倒し、左足脛部の骨折と思われる大怪我をして消防ヘリコプターに
よって救助されることになった。
【状況】
■13:55 Motoさんの姿が後方の視界から消えたことに、50mほど前を滑走していたToshiが気付く。
声を張り上げても応答が無いので嫌な予感、すぐさまボードを外して林道をツボ足で上がる。
そこで再び周辺に声を張り上げるとMotoさんの「骨折したぁ~」という力ない声が返ってきた。
「えーーーーっ!」
驚きの声を発したToshiが走ってMotoさんの元へ駆け寄ると、骨折した左足のスキー靴を自力で
スキー板から外していたMotoさんは、落胆した表情で「すみません・・」と
いやいやお詫びなど・・、明日は我が身と心得ています・・
すぐさまスマホで「119番」に電話を入れた。現在地をGPSで捕捉して伝えた後、
「場所は確認しました。これから救急車を発動しますので、いったん電話を切ってお待ちください」
という会話の後一端電話を切って待つ。
~
そうして待つこと約5~7分ぐらいか、スマホに電話が入り「ヘリコプターがただいま向っています、
怪我をしている方の服の色を教えて下さい・・」云々の情報のやり取りをし、
「到着したら手を振ってください」と告げられる。
(感想:GPSで捉えて伝えた現在地は、消防がピンポイントで林道上であることを確認していた)
嗚呼、国道まであと1km手前というこの場所でも結果的にヘリコプターかぁ(現実感なし)
とヘリが頭に浮かんだ後は、これも登山を続ける上での貴重な経験と考えなければと、
Motoさんが苦しい思いをしている横で敢えてその事の一部始終を記憶、記録に留めようと
決める。
~
(感想:ヘリコプター出動と聞いてもそれほど動揺しなかったのは、やはりココヘリに
入会していたことが大きかったようにも思う)
さらに待つこと10分程で1.4km先の登山口方向(国道)でサイレンの音が聞こえ、
再び電話が入る⇒
救助隊:「今、国道に救急車が到着しました。間もなくヘリコプターも到着すると思いますが、救急車は現場まで上がれそうですか?」⇒
Toshi:「えっ?、林道の雪の上を車が走れるものでしょうか?ゲートも閉まっていますけど・・」⇒
救助隊:「ゲートは鍵をもっているので大丈夫です。車はデリカなので林道であれば大丈夫かと・・、まずは走らせてみます、5~10分程で着くと思います」
10分を過ぎても救急車らしき車両が来ないので、寒くて震えが出ていたMotoさんに声を掛けると、
やはり「寒いです」という反応、Toshiの予備のダウンを上半身に掛けるも効果薄で心配になる。
骨折による震えとも考えられる状態だった。
そうこうしていると林道下のカーブを曲がったあたりで人影と話し声が同時に聞こえ、
その格好を観て驚く。なんと写真の様に薄着の救急車乗員がソリを引いてツボ足(長靴)歩行でやってきた。
(感想:見るからに寒むそうで、今日の最高気温は里でもマイナス、とても山に入る格好ではない)
よく見るとその乗員2人に相前後して救助隊と思われる隊員(8名)もツボ足で上がってきた。
(感想:隊員の動きは機敏でなんて頼もしい)
乗員がMotoさんの骨折箇所の確認後、スキー靴を脱がせる作業での一コマでは、
「ごめんなさいMotoさん、スキー靴だけは脱がないといけないです、痛いけど我慢をお願いします。ごめんなさい」
繰り返し低姿勢で救助にあたってくれる姿に気持ちが落ち着いてくる。
ここは記憶が曖昧だが、そうしているうちにヘリコプターの音も聞こえてきたように思う。
救助隊のは当たり前のように手際よく指示しあって、高い樹木が林立する林道の隙間を縫って
ヘリコプターが吊り下げてくる搬送場所のセットアップを始めた。
ヘリは1回、現場に寄り付いたが体制が整わずいったん離れ、再び上空でホバリングしていた。
凄い風が巻き起こるため救助隊員が配慮して、持ち込んできた毛布で覆ってくれ、
肩を組み合った輪の中で待機することになる。
(感想:上空を覗けないためヘリの爆音だけが近づく状況に、この上に落下したらどうなってしまうん
だろうと恐ろしくなる)
この間も若い救助隊員はToshiに「すみません、すみません」と環境が過酷になることを詫びくれる。
まったくと頭が下がる思いだ。
今頃、Motoさんは隊員一人に体を抱えられて上空に吊り下げられているんだろうと、音が引いていく中、
離れていっているヘリの状況を震えながら想像していた。
この間、どれぐらい経過したのか時間感覚が無くなったが、時計を見るとさして時間は要していない。
とにかく素早い連携プレーに感心し、頼もしいの一言だった。
精悍な顔つきの隊員ばかりでなく、少し色白の救急車乗員二人も長靴で雪に埋まりながら作業していた。
その二人も普段から走ってトレーニングを欠かさないのだと、その後の下山途中に話してくれた。
(感想:長靴と足の間にはいっぱい雪が詰まっているのに気にもしていない)
さらに、Toshiは目にすることができなかったがヘリコプターから降りてきてMotoさんを抱えて搬送した
らしい隊員は、もともとヘリコプター乗りを志していたが、最近まで救急車乗員としてケガによる患者の
手当も彼らと一緒にしていたという。
いろいろな経験を積んで今日の業務にあたってくれている関係者に改めて敬意を表したい気持ちになった。
さて、乗員からはMotoさんがその後どうなったかの説明を下山しながらの途中で入れていただいた。
刻々入る情報によるとMotoさんはいったん丘珠の空港に飛び、日曜であるため救急患者を受け入れる
病院が決まってからすぐそちらに転送される予定とのこと、直後に天使病院であることを知らされる。
会話をしながらのツボ足歩行も終焉を迎えるころ林道最後のゲート手前には赤いデリカの救急車と
パトカーが待機していた。
そこには警察官3名も居て林道からさらに国道まで移動する歩行中に状況質問を受ける。
入山目的や登山途中の経過時間、装備や連絡のために携帯している装具等々、警察官と消防関係者も
それぞれ、すでに確認済みの我々の個人情報を伝えあい、最後は消防隊の皆さんの方が警察より先に
現場を離れていった。国道わきには救急車ばかりか大型の消防車が2台止まっていたことに気付いたのは、
もうその車両が札幌市内へ帰っていく頃になってからのことであった。
点滅していた赤色灯を止め消防車が去っていく中、改めて今日一日の山行の教訓をかみしめていた。
Toshiがカギを預かっていたMotoさんの車に乗り込んで帰路についた時間がだいたい15:30なので、
僅か一時間半たらずの間の出来事だった。
因みに、9合目のオープンバーンで一緒に新雪を滑った外国人3人はまだこの時刻になっても無意根山
から下山していなかった。
【事後談】
・隊員の皆さんは、Toshiが何度となくお礼を言うと「これが、自分たちの仕事ですから・・」と意に介さず、
最後まで低姿勢で、むしろねぎらいの言葉をかけてくれた。
・バックカントリーについて興味があったのか、救急車乗員にToshiがBCというものについて受け答えすると、
「いい趣味を持ってらっしゃいますね」と、この件を引きずらないようにという配慮とも受け取られる
励ましの言葉をいただいた。
・警察官に「ココヘリ」や「コンパスアプリ(登山計画)」で警察や家族と情報が繋がっていることを説明すると、
「えっ、今はそんな便利なことになっているんですか」と経験がまだ浅いと思われる若い警察官は驚いていた。
ココヘリの会員証を観て「それは発信機ですか?」との質問に、
「この発信機は3カ月以上未充電で発信を続けられてビーコンと違って半径16km先から探索可能です」
「あ、それから、こんなことがあったのでまだ下山通知を押していませんでしたが、このスマホのアプリを
押すと、、このようなメールが家内のスマホにも届きます」
「ほーっう、なるほどぉ、そうなってるんだ、凄いですね」
今回は事件性のない事故調査でやってきた警察官だったので、本署には入っているだろう
登山届情報は得てきていない様子だった。
定山渓交番勤務者1名と南警察署員2名、バックカントリーでこの日も3人の外国人がまだ
上でボード、スキーを楽しんでいることを説明すると、その人気にも驚いていた。
先週の羊蹄山しかり、北海道の山々に日本国内ばかりか諸外国からも訪れているBC客の現状
の話に熱心に聴き入ってくれたことが印象的だった。
偉そうなことは言えないが、今まで縦割りと思われていた警察署や消防署の対応が違っていた
ことを素直に反省しなければならないと感じた。今やお役所的などではなく、道民、市民の為
という意識が浸透していることに本当に感謝しなければならない。
今回は下山途中、登山口から1kmという距離で起きた事故のため最初に電話した「119番」
通報で、すべて消防署が判断して救急車とヘリの要請、警察への連携もしてくれたようだった。
「もう少し標高の高い山の中で起こっていたら我々救急車は動きません、ヘリコプターだけです」
、と。
実際その時は本当に「ココヘリ」への即時の通報が必要と感じた。
今、書き込んでいてこんなエピソードを思い出した、
隊長と思われる1名が部下の隊員の携帯電話に連絡が入って報告を受けたときに発した言葉、
「何?もうこの時間になってから(出たらいいかどうかって)どういうことだ、いいから此処までこさせろ、
ダメだっ✖絶対に来させろ!」(どうやら何かの理由で遅刻することになった隊員に対し、
もう引き上げる時間になってから連絡が入ったときの一幕と思われた。自分だけ現場に来ないは許されない、
何としても来い)
そうしたやり取りからは人命を預かる職務に関わっていることの厳しさを垣間見た思いとなり、
さらに感謝の念が湧いてきた。
こんな経験を度々するようではいけないが、この経験を生かし、国民として消防や警察組織への理解と
感謝の念を仲間にも共有させなければいけないという気持ちでこの報告を書いた次第。
皆さん、日本の消防も警察も現場は本当に頑張ってくれています。
消防ヘリ呼んだのですね!びっくりした事でしょう。
私もリーダーが沢で落石滑落の際は一瞬頭が真っ白になりましたが、救命を直ぐに考えできる事をやるだけですもんね。沢のあんな場所にピンポイントで飛んで来てピックアップできた時は神様に感謝、消防の方に本当に感謝。後に石狩のヘリの本部にお礼言いに仲間と訪ねました。大変でしたね。Moto さんもうよくなったのかしら?
救命の皆さんにはだだ感謝です
このことが無かったら今回のコロナ自粛期間も低山ぐらいを登っていたかもしれません。
低山といえどもToshiの技量では人を守ってあげることができない。
反省しきりです。
そう自分も守れないかもしれないものは今山に入るべきではない。
(と、、言いながら明日は某スキー場の昇り降り、企てています)
Motoさんは山への復帰を秋と捉えて元気にリハビリを続けていらっしゃいますよ~