タイトル,ボキャ天からパクリました
さて,3夜連続の「古畑任三郎ファイナル」を,やっとビデオで全部見ました。
以下,簡単な感想と,それだけじゃ芸がないので,例によって,実際にこの事件が起こるとどうなるかを法律的に検証してみたいと思います。
なお,以下,完全にネタばれになりますので,もしまだドラマを見ていないが,近々見ようと思っている方は,十分お気をつけください。
第1 古畑任三郎の感想
1 全体としては,さすが「三谷作品」という感じでした。無駄が多そうで実は多くが複線になっているという脚本は見事でした。
本格推理ドラマではないので,トリックは結構単純ですが,逆にあまり複雑だと訳分からなくなるため,このくらいで十分でしょう。
あと,三谷さんらしい遊びも満載でした。具体的には,3話全体に,「過去のドラマのエピソードや重要アイテム」などをちりばめていました。
おそらく,過去の全部の作品の何らかをちりばめていたと推測されますが,私には,中森明菜,マチャアキ,鶴塀,桃井かおり,加賀たけし,キムタク,沢口靖子,澤村籐十郎(敬称略)のエピソードに関するものしか発見できませんでした。まだまだ甘いなあ
2 個別的には,第1話の石坂浩二さん,やられました。石坂浩二さんを使うからには,ただいるだけとは思いませんでしたが,まさかすべて天馬先生が仕組んでいたとは,してやられた,という感じでした。
第2話のイチローさんについては,役者でも十分やっていけるなあ,という感じでした。また,向島元巡査を準主役にしたのは,ファイナルならではですね。正直,好きなキャラだったので,犯人側で使っちゃうのは,忍びなかったです。
第3話の菜々子さん,実は姉と妹が入れ替わっていたというオチは,途中から何となく見えていたものの,三谷トリックに翻弄されちゃった感じがします。古畑のカフェでの黄色いコート,ちゃんと伏線になっていたのですね。あと,できれば「ブルガリ三四郎」,これを1時間見てみたいものです。
3 これが本当にファイナルというのは,寂しいものです。
どうも田村正和さん側の事情などもあるようですが,是非とも外伝的な内容でも良いので,続編を見てみたいものです。例えば,深夜にやっていた「巡査 今泉慎太郎」でも続けてもらえればいいのになあ,と勝手に思ったりもしています。
第2 もしもこの3話が実際に起こったらどうなるか
もちろん,ドラマの世界ですし,このドラマはリアリティを求めているわけではありませんので,前提に無理があるのは承知していますが,ファイナルということから,あえて検証してみたいと思います(法律論は一応まじめな内容ですが,半分シャレのつもりでご覧ください)。
1 全体的な話として,この3話ともきっと裁判では公判維持ができないでしょう。
古畑任三郎は,理詰めで犯人を追及し,最後は供述の矛盾から自白させる方法をとっています。
でも,裁判の場合,「本人の自白」のみでは有罪にできません。また,裁判の段階で,犯人が「さて,そんなこと言いましたっけ?」などととぼけてしまった場合,その他の証拠から有罪を立証しなければならないことになります。
古畑が手がけた事件は大物が多いことから,優秀な弁護士が付くでしょう。そうすると,警察段階の調書を証拠採用せずに,毎回古畑任三郎が裁判に出て証人として証言することになるでしょう。
古畑警部補,裁判に忙しくて捜査に出られない,という皮肉な状況に陥るかもしれませんぞ。
2 第1話について
(1) 天馬先生(石坂浩二)は,音吉殺しについて本当に罪に問われないか?
結論から言えば,「殺人教唆」になると考えます。
教唆されていた音弥(藤原竜也)は,自分が天馬先生にそそのかされていたことを知らないわけですが,天馬先生は計画的に殺人を教唆しているため「片面的教唆」になるといえます。
そして,通説ではこの片面的教唆も刑法61条の教唆になると言われています。
したがって,殺人教唆が成立するでしょう。ただし,現実的には,裁判での立証が困難なので,果たして公判維持できるのか,微妙なところでしょうね。
(2) 15年前の殺人事件は時効じゃないの?
公訴時効は去年殺人は25年と延びましたが,あくまでも旧法時代の事件なので,やはり殺人事件の公訴時効は15年です。
そして,天馬先生はずっと村にいたらしいことからすると,特に海外に長期間いたとは思えません。
したがって,15年前の先代社長殺し,あれはもう時効が成立しているため,捜査は無理でしょう。残念!!
(3) 記念碑の下を掘るのは,社長夫人の許可だけでできるか?
そもそも(2)で時効が完成しているのであれば,捜査はできないという問題もありますが,その問題は別にします。そのうえで,土地の所有関係もありますが,会社が開発を考えているというのであれば,おそらく裏山の所有権は会社のものである可能性が高いでしょう。とすれば,会社自体の許可が必要です。でもって,あの時点ではまだ社長は亡音弥であり,夫人は会社についての権限がないため,許可は無理でしょう。
したがって,この場合,裁判所の令状(鑑定処分許可状)が必要と言えます。
古畑警部補,違法捜査かもよ!!
3 第2話について
(1) 向島元巡査は本当に無罪か?
いいえ,完全に有罪です(きっぱり!)。ストリキーネをくすねたので,窃盗罪と毒劇法違反,あとはイチローと殺人について共謀しているため,殺人罪の共謀共同正犯が成立すると考えます。
殺人については,古畑は,「向島は何もやっていない」と言っていますが,当初殺人を計画したのは向島自身であり,それをイチローが「自分がやる」と言って出ているものの,向島とイチローとの間では共通して「郡山を殺す」という共同実行の意思があったと言えます。さらに,色紙でアリバイ偽造を計画するなど,イチローの犯罪を容易にしようとしていることからすれば,両者は殺人罪の成立に向けてちゃんとした役割分担を持っていたと言えるでしょう。
よって,共謀共同正犯が成立します。
(2) ダクトで発見したイチローのサインボールの扱いについて
現場保存しないで勝手にボール取り出しちゃったら,「本当にそこにボールがあったのか」が裁判で争点となってしまい,証拠能力は大きく減ってしまうかもしれませんね。
西園寺巡査としては,まず鑑識を呼んで写真撮影をするべきでした。
4 第3話について
(1) もしも,古畑警部補がもみじのトリックにしばらく気が付かなかったら,どうなるか?
まず,戸籍上,もみじが死亡したことになります。
したがって,もしもこのトリックに遅れて気が付いたとしたら,もみじとかえでについて,「戸籍訂正」の許可を家裁からもらう必要が出てきます。
また,もしも,もみじがかえでとして自首をして裁判を受けて判決をもらったが,その後実はもみじだったことが判明した場合は,ものすごくややこしいことになります。
結論的には,かえでの裁判を再審により公訴棄却して,その上でもみじとして裁判をやり直すことになるでしょう。
(2) 古畑警部補は地方公務員法違反か?
打ち上げで,「このことは内密に」とは言いながら,西園寺らの突っ込みに対しては,「広報課から話があった」と説明しています。かえでの言動からも,おそらく後者の説明が正しいと思われるため,ドラマへの監修は「正当な職務」であったと言えるでしょう。
よって,古畑警部補は地方公務員法違反にはなりません。よかった,クビにならなくて!!
以上,法律的に考えると,こんな感じになろうかと思います。まあ,冒頭にも書きましたが,多少シャレですので,この点はお手柔らかに!!
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http://todaynews.seesaa.net/article/7645009.html
さて,3夜連続の「古畑任三郎ファイナル」を,やっとビデオで全部見ました。
以下,簡単な感想と,それだけじゃ芸がないので,例によって,実際にこの事件が起こるとどうなるかを法律的に検証してみたいと思います。
なお,以下,完全にネタばれになりますので,もしまだドラマを見ていないが,近々見ようと思っている方は,十分お気をつけください。
第1 古畑任三郎の感想
1 全体としては,さすが「三谷作品」という感じでした。無駄が多そうで実は多くが複線になっているという脚本は見事でした。
本格推理ドラマではないので,トリックは結構単純ですが,逆にあまり複雑だと訳分からなくなるため,このくらいで十分でしょう。
あと,三谷さんらしい遊びも満載でした。具体的には,3話全体に,「過去のドラマのエピソードや重要アイテム」などをちりばめていました。
おそらく,過去の全部の作品の何らかをちりばめていたと推測されますが,私には,中森明菜,マチャアキ,鶴塀,桃井かおり,加賀たけし,キムタク,沢口靖子,澤村籐十郎(敬称略)のエピソードに関するものしか発見できませんでした。まだまだ甘いなあ
2 個別的には,第1話の石坂浩二さん,やられました。石坂浩二さんを使うからには,ただいるだけとは思いませんでしたが,まさかすべて天馬先生が仕組んでいたとは,してやられた,という感じでした。
第2話のイチローさんについては,役者でも十分やっていけるなあ,という感じでした。また,向島元巡査を準主役にしたのは,ファイナルならではですね。正直,好きなキャラだったので,犯人側で使っちゃうのは,忍びなかったです。
第3話の菜々子さん,実は姉と妹が入れ替わっていたというオチは,途中から何となく見えていたものの,三谷トリックに翻弄されちゃった感じがします。古畑のカフェでの黄色いコート,ちゃんと伏線になっていたのですね。あと,できれば「ブルガリ三四郎」,これを1時間見てみたいものです。
3 これが本当にファイナルというのは,寂しいものです。
どうも田村正和さん側の事情などもあるようですが,是非とも外伝的な内容でも良いので,続編を見てみたいものです。例えば,深夜にやっていた「巡査 今泉慎太郎」でも続けてもらえればいいのになあ,と勝手に思ったりもしています。
第2 もしもこの3話が実際に起こったらどうなるか
もちろん,ドラマの世界ですし,このドラマはリアリティを求めているわけではありませんので,前提に無理があるのは承知していますが,ファイナルということから,あえて検証してみたいと思います(法律論は一応まじめな内容ですが,半分シャレのつもりでご覧ください)。
1 全体的な話として,この3話ともきっと裁判では公判維持ができないでしょう。
古畑任三郎は,理詰めで犯人を追及し,最後は供述の矛盾から自白させる方法をとっています。
でも,裁判の場合,「本人の自白」のみでは有罪にできません。また,裁判の段階で,犯人が「さて,そんなこと言いましたっけ?」などととぼけてしまった場合,その他の証拠から有罪を立証しなければならないことになります。
古畑が手がけた事件は大物が多いことから,優秀な弁護士が付くでしょう。そうすると,警察段階の調書を証拠採用せずに,毎回古畑任三郎が裁判に出て証人として証言することになるでしょう。
古畑警部補,裁判に忙しくて捜査に出られない,という皮肉な状況に陥るかもしれませんぞ。
2 第1話について
(1) 天馬先生(石坂浩二)は,音吉殺しについて本当に罪に問われないか?
結論から言えば,「殺人教唆」になると考えます。
教唆されていた音弥(藤原竜也)は,自分が天馬先生にそそのかされていたことを知らないわけですが,天馬先生は計画的に殺人を教唆しているため「片面的教唆」になるといえます。
そして,通説ではこの片面的教唆も刑法61条の教唆になると言われています。
したがって,殺人教唆が成立するでしょう。ただし,現実的には,裁判での立証が困難なので,果たして公判維持できるのか,微妙なところでしょうね。
(2) 15年前の殺人事件は時効じゃないの?
公訴時効は去年殺人は25年と延びましたが,あくまでも旧法時代の事件なので,やはり殺人事件の公訴時効は15年です。
そして,天馬先生はずっと村にいたらしいことからすると,特に海外に長期間いたとは思えません。
したがって,15年前の先代社長殺し,あれはもう時効が成立しているため,捜査は無理でしょう。残念!!
(3) 記念碑の下を掘るのは,社長夫人の許可だけでできるか?
そもそも(2)で時効が完成しているのであれば,捜査はできないという問題もありますが,その問題は別にします。そのうえで,土地の所有関係もありますが,会社が開発を考えているというのであれば,おそらく裏山の所有権は会社のものである可能性が高いでしょう。とすれば,会社自体の許可が必要です。でもって,あの時点ではまだ社長は亡音弥であり,夫人は会社についての権限がないため,許可は無理でしょう。
したがって,この場合,裁判所の令状(鑑定処分許可状)が必要と言えます。
古畑警部補,違法捜査かもよ!!
3 第2話について
(1) 向島元巡査は本当に無罪か?
いいえ,完全に有罪です(きっぱり!)。ストリキーネをくすねたので,窃盗罪と毒劇法違反,あとはイチローと殺人について共謀しているため,殺人罪の共謀共同正犯が成立すると考えます。
殺人については,古畑は,「向島は何もやっていない」と言っていますが,当初殺人を計画したのは向島自身であり,それをイチローが「自分がやる」と言って出ているものの,向島とイチローとの間では共通して「郡山を殺す」という共同実行の意思があったと言えます。さらに,色紙でアリバイ偽造を計画するなど,イチローの犯罪を容易にしようとしていることからすれば,両者は殺人罪の成立に向けてちゃんとした役割分担を持っていたと言えるでしょう。
よって,共謀共同正犯が成立します。
(2) ダクトで発見したイチローのサインボールの扱いについて
現場保存しないで勝手にボール取り出しちゃったら,「本当にそこにボールがあったのか」が裁判で争点となってしまい,証拠能力は大きく減ってしまうかもしれませんね。
西園寺巡査としては,まず鑑識を呼んで写真撮影をするべきでした。
4 第3話について
(1) もしも,古畑警部補がもみじのトリックにしばらく気が付かなかったら,どうなるか?
まず,戸籍上,もみじが死亡したことになります。
したがって,もしもこのトリックに遅れて気が付いたとしたら,もみじとかえでについて,「戸籍訂正」の許可を家裁からもらう必要が出てきます。
また,もしも,もみじがかえでとして自首をして裁判を受けて判決をもらったが,その後実はもみじだったことが判明した場合は,ものすごくややこしいことになります。
結論的には,かえでの裁判を再審により公訴棄却して,その上でもみじとして裁判をやり直すことになるでしょう。
(2) 古畑警部補は地方公務員法違反か?
打ち上げで,「このことは内密に」とは言いながら,西園寺らの突っ込みに対しては,「広報課から話があった」と説明しています。かえでの言動からも,おそらく後者の説明が正しいと思われるため,ドラマへの監修は「正当な職務」であったと言えるでしょう。
よって,古畑警部補は地方公務員法違反にはなりません。よかった,クビにならなくて!!
以上,法律的に考えると,こんな感じになろうかと思います。まあ,冒頭にも書きましたが,多少シャレですので,この点はお手柔らかに!!
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