あれは,あれで良いのかなPART2

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よく分かる(?)シリーズ 証券取引法について

2006年01月30日 23時44分55秒 | よく分かる(?)シリーズ
ライブドア前社長の堀江容疑者らの逮捕容疑が「証券取引法違反」ということですが,更に粉飾決算の容疑についても特捜部で捜査中等という報道が連日なされています。
ところで,「証券取引法ってそもそも何なの?」とか,「ライブドアは結局何をやったのがいけなかったの」などという素朴な疑問を感じた方も多でしょう。
そこで,今回は,証券取引法について,超ダイジェスト的に説明したいと思います。ただし,証券取引法は条文自体もかなり膨大である上,ほとんど日常生活に関係ないものが多いことから,有名な違反行為をいくつかピックアップする程度の説明にとどめておきます。

1 証券取引法とは何か
  簡単に言えば,「株取引の大原則を定めた憲法」です。
  証券会社は,この法律に従って,株取引を行い,また顧客に対しても対応をしているのです。

2 どのような原則が定められているのか
  株取引が,適正,公正,公平,迅速に行われることを理念にしています。
  つまり,株式とは,魚屋でサンマを買うみたいに「物を見て価格が分かる」というものではありません。サンマは,外見を見れば何となく生きがいいか悪いか分かりますから,買う方もある程度の値踏みができます。しかし,株式の場合,外見的には「ただの紙切れ」です。この紙切れに数万円というお金を支払う以上,その紙切れが「それだけの価値がある」ことをきちんと立証する必要があります。
  また,株価は毎日取引に応じて変動していきます。そういう意味では,魚屋で売っているサンマと同じようなものです。
  例えば,サンマは昨日100円だったけど,今日は90円だ,ということがよくあるかと思いますが,昨日買うのか,今日買うのかは私たちの自己責任に委ねられています。ところが,「奥さん,内緒だけど,明日サンマ90円で売るからね。」なんて言われていた場合,その奥さんは1人お得ですよね。
  それじゃあ,公平じゃない,というわけで,証券取引法の世界でも,「奥さん,内緒だけど」というやり方は止めて,必ず特売広告を配るようにして,みんな平等に教えなさい,と定めているのです。
  つまり,証券取引法を考える上では,意外かもしれませんが「魚屋のサンマを買う」ということを想定してみると,ある程度はイメージがわくといえます。

3 具体的にはどのようなルールを定めているのか
  細かいことがたくさんありますが,代表的なものとしては概ね次のとおりです(逆に言うと,これに反することをしたら違反になります。)
(1) 有価証券報告書等の企業内容の公開義務
  平たく言えば,決算書を公開することです。株式が正しい価格かどうかの判断材料になります。いわゆる情報公開義務です。他にも,いろんな場面でこの情報公開義務が発生してきます。
  サンマで言えば,「気仙沼産サンマ」などと店頭に表示しているようなものです。
(2) 大量取引の際の報告義務
  一度に沢山の株式を取得したり,あるいはトータルで大株主になったときには,必ず届出をしなければなりません。今後の株価や,株式を取得する際に重要な事項(経営権を取得できるかとか,株価が上がるか,下がるかなど)の判断材料となるからです。
  サンマで言えば,隣のスーパーが買い占めてしまったときは,必ず「サンマ大量仕入れ,大売り出し準備中」などというチラシを配れ,ということになります。
(3) 身内の取引制限及び内部情報に基づく売買の制限
  会社の関係者は,自社や関連企業の株式を買う場合,一定の制約があります。
  内情を知っていることから,正しい価格で買うことができないおそれがあるからです。
  サンマでいれば,先の「奥さん,内緒だけど,明日特売やるよ。」という情報を出すことと,それに基づいて,翌日サンマを買いに行くことはだめ,ということになります。

4 主な違反行為(刑事罰の対象)
  3の逆のことです。ポイントは,「適正,公正,公平に反する」という点になります。
(1) インサイダー取引
  会社内部情報に基づいて取引をすることは,他の投資家との間で不公正になりますので,禁止されています。一時期,インサイダー取引によって多額の利益を得た政治家がいましたが,「すべて秘書がやった」と説明した事件は,記憶に新しいのではないでしょうか。
  サンマで言うと,何度も出てくる,「奥さん,内緒だけど」の状態です。
(2) 風説,虚偽情報の流布
  これは,株価を左右するための情報について,うそのことを言いふらしたり,大げさに言ったり,あるいは重要な情報を隠したりすることを言います。これでは,その株価が適正なのかどうか判断することができず,場合によっては,単なる紙切れに数億円を払うという損害にもなりかねないため,処罰対象としています。
  サンマで言うと,本来は冷凍サンマで1匹50円の価値しかないのに,「このサンマは昨日水揚げされたばかり」などと言って,一匹100円で売ってしまっている状態を言います。
(3) 相場操作,不正取引
  本来は取引がないのにあたかも取引があったかのように装うことで,株価をつり上げ,または下げることなどしてしまうことをいいます。相場を操縦すると言うことは,結局,株価を意のままに操っているため,自分の利益だけが図られ,他の投資家に対して不公正,不公平となるから処罰対象としています。
  サンマで言うと,本来は100匹仕入れたのに,店先で「はい,残り10匹,今買わないと今年はサンマ食べられないよ。さあ,120円だ!」等と言っている状態を言います。
(4) 粉飾決算
  決算書の数値をごまかすことです。落語の「花見酒」が,このイメージにちょうどいいでしょう(ちなみに,「花見酒」とは,2人で酒を売ろうとして酒樽を1つ買って一杯五文で売ろうとしたところ,途中で1人が五文銭を拾ってしまったために,以後,2人でその五文銭を交互に支払続けて酒を飲んでしまい,気がつけば樽は空っぽ,だけど手元には五文しか残っていない,という古典落語です。)。(←2/1追記。落語の名前,間違えていましたね。「五文酒」じゃなくて「花見酒」が正式名称でした。)
  もう少し言えば,本来会社は赤字なのに,あたかも黒字の会社でもうけがあるように装うことを言います。これは,赤字会社であれば,株価は下がり,場合によっては紙切れになるというリスクがあることから,投資家も敬遠しがちなのですが,黒字と偽ることで,株価も上がり,しかも投資家が沢山集まってしまうことから,投資家に対する公正を欠くために処罰対象としています。
  サンマで言うと,「大赤字覚悟,大処分セール」というチラシを貼って,サンマを1匹60円で売っているが,実は仕入れ値は30円なので,全然赤字ではなく,魚屋大もうけという状態を言います(赤字と黒字は逆ですが,まあイメージですので。)。

5 証券取引法の問題点
  証券取引法は,猫の目のようにいろいろ変わっています。正直,私もすべて追っかけきっていません。
  よく言われる問題点のみを提示しますが,これ以外にもかなりの問題点が含まれているということは参考知識として知っておくと便利でしょう。
(1) 証券取引等監視委員会の権限不足
  証券取引等監視委員会は,アメリカのSECを見本にして設立された組織です。そして,主に,上記不正事案を調べ,検察庁等に告発をすることを業としています(多くはインサイダー取引ですが。)。
  そして,証券取引等監視委員会は,結構権限があり,捜索差押令状を裁判所に請求する権限まで持っています。
  しかし,金融庁直下の組織であり,あくまでも金融庁長官の指揮の下で動くことになります。さらに,金融庁は,財務省直下にあるため,究極的には財務大臣の指揮に従うことになりま。
  とすると,政治家(特に政権与党)に対する追求や,その関連企業などへの追求は,どうしても弱くなってしまい,果たして公正な捜査調査ができるのか,疑問があります。
  公正取引委員会のように独立行政委員会にするべきではないかという意見もありますが,公取の現状を踏まえると,必ずしも問題解決に至るとは言い切れないため,この点については,まだまだアメリカを参考にしつつ改善していく余地は多いといえます。
(2) 罰則や追徴金が少ない
  現行法では,一番重い罪でも5年以下の懲役又は500万円以下の罰金もしくはその両方というものです。また,追徴金についても,不法に得た利益までを最大限に返すだけです。
  一見すると,得た利益をすべて返還し,しかも500万円の罰金を払うのだから,損害が大きいともいえそうです。しかし,追徴金については,立件できた部分,すなわち捜査機関が把握できた部分についてということになります。そして,この手の事件の場合,まず金額が億単位である上に,捜査上の事情や証拠の関係から,全額を立件することは難しい場合が多いです。
  とすれば,罰金や追徴金を払っても,まだ利益が手元に残るというのが実情なのです。
  そこで,一罰百戒の効果をねらうためにも,罰金刑の上限をあげたり,あるいはアメリカのように追徴金は得た利益の最高3倍まで課することができるなど,相当厳しいものを導入しなければ,このような不正は減らないのではないかという指摘があります。

6 おまけ・・でもって,今回のライブドア事件はいったい何なの?
  逮捕容疑だけでとりあえずみると,ようは企業買収の際に,本当は既に必要な株式を買い占めていた後なのに,まだ買っていないようなそぶりをして「これから買収します。みんな,よろしくね。」と言ったために,「よっしゃ,儲かるぞ」と思って投資家がその株を買い始めたために,株価が上昇し,結果的に買い占めていた株価もつられて上昇してライブドア社が大もうけした,という点が「うそつき」であるとして逮捕されたと言うことです。これに対して,堀江容疑者は,「俺はうそついていない」として,容疑を否認している,という訳なのです。
  粉飾決算や特別背任については,まだ噂レベルの話なので,ことの真偽が判明次第,整理したいと思います。

以上,ざっくり証券取引法でした。

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