あれは,あれで良いのかなPART2

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脱ゆとり教育への転換,教師のやる気も重要に

2008年12月24日 01時00分16秒 | 教育問題
文部科学省は,2013年度から実施する高校の学習指導要領改訂案を発表しました。これによると,英語教育の充実や,国語教育の充実,さらには「これは扱わない」などといった歯止め規定を廃止するなど,全体的に「脱ゆとり教育」の内容となっています。
文部科学省では,今後,パブコミなどでの意見募集を経て,最終案をまとめる予定とのことです。

「高校英語、英語で教えるべし」学習指導要領の改訂案(朝日新聞) - goo ニュース

伸ばせる子を伸ばすとともに,できない子をしっかりと拾い上げよう

今回の学習指導要領案については,「英語教育を英語で教える」という点ばかり強調されていますが,それ以外にも重要な点は結構あります。
まず,国語教育の充実です。国語総合を必須にして,コミュニケーション能力の向上を図るというのは,単に乱れた日本語を正すというだけではなく,実は国際化社会への対応にとっても重要です。いくら英語ができても,それを伝えるべき「中身」がしっかり育たなければ,結局,国際社会で自分の言いたいことを伝えられないからです。私個人的には,国語力の増強が一番重要と考えていただけに,この改訂は評価できます。あとは,「扱う題材」について,更に検討してほしいものです。

理数系については,「歯止め規定廃止」という点がかなり大きいと思います。今,理科系大学の悩みは「基礎学力不足の学生が増えた」ということです。下手すると,4年間の大学生活で,やっと高校レベルの学力が付いたなんていう笑えない話もあるくらいです。
今回の歯止め規定廃止により,高校の判断で,レベルアップを図ることができます。理系希望クラスにおいては,かなり高度な授業も可能になり,大学でも落ちこぼれることなく授業に付いていくことで,将来の日本の技術を担う理系の人たちを育てることができます。

一方,社会では,今回も「日本史必修」は外されてしまいました。個人的には,「必須科目は世界史よりも日本史」だと思います。誤解のないようにいうと,世界史が不要という意味ではありません。日本人は,世界の地理歴史に疎いこと,国際化のことを考えると世界史は勉強するべき科目です。しかし,国語と同じで,「他の国の文化歴史を知るためには,まず自国の歴史や文化を知ること」から始まります。文化交流をする際,「日本の文化や歴史を正しく伝える」ことが求められるからです。
思想云々ではなく,日本人として,文系理系問わず日本の歴史くらいはしかり学ぶべきです。自国の歴史を知らずに国際化はありえません。

そして,問題の英語ですが,総論としては英語教育の充実は喜ばしいことだと思います。しかし,現実問題として,「英語が話せて,英語で授業ができる教師」がどの程度いるでしょうか。問題はそこに尽きるでしょう。つまり,「仏作って魂入れず」という学習指導要領になりかねないか,不安が残ります。

総じていえることは,「確かにこのとおりやれば学力向上は期待できる」と言えます。また,学校の裁量が増えたことで,「伸ばせる子を伸ばす」という教育も可能となります。あとは,この通り実行することができるか,環境整備や教師のスキル向上が問題となるでしょう。
一方で,「中学の科目の復習」も認められるようになりました。したがって,いわゆる「おちこぼれ対策」も正規カリキュラムとして取ることが可能となります。これにより,「おいてけぼり」を防ぐこともできますので,「基礎学力のない生徒の底上げ」を図ることができます。
ただし,「伸ばせる子」と「落ちこぼれの底上げ」を同じカリキュラムで行うことは無理がありますから,当然,棲み分けが必要となります。この棲み分けについては,これまで教師サイドからの反対もありましたが,むしろ子供達のことを考えると,この棲み分けを容認することが求められるでしょう。当然,教師はもちろんのこと,生徒自身がレッテルを貼ることや,やる気をなくすような雰囲気にすることは絶対に避けなければいけません。こうしたことが起こらない環境作りも非常に重要になってくるでしょう。

今回の学習指導要領は,総じて評価できます。特に,「学習指導要領に縛られない」という姿勢については,学校の裁量を増やし,子供の教育効果を考えていると思います。
あとは,「この趣旨を全うできる環境作り」が大切です。先ほども書きましたとおり,「仏作って魂入れず」の指導要領にだけはしてほしくありませんし,「謎の通達」で実質的な縛りを加えるような「裏指導要領」を作ることも止めてほしいものです。

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