あれは,あれで良いのかなPART2

世の中の様々なニュースをばっさり斬ってみます。
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よく分かる(?)シリーズ 被疑者,被告人の権利について(その1)

2006年01月28日 01時23分16秒 | よく分かる(?)シリーズ
堀江容疑者が逮捕,勾留されましたが,調書にサインを拒否しているというニュースが報じられています。
また,全く別の事件ですが,愛知県の方では幼女殺害の容疑で裁判を受けていた被告人に対して無罪の判決がでました。
一方で,地下鉄サリン事件の松本被告の裁判における言動や弁護人の行為などに対する批判もあり,一部では「加害者保護が甚だしい」という声も聞こえてきます。
そこで,今回は被疑者,被告人の権利(加害者の権利)にどのようなものがあるのか,簡単に説明するとともに,署名拒否の意味などについても説明したいと思います。

よく分かる(?)シリーズ 被疑者,被告人の権利について(その2)
よく分かる(?)シリーズ 被疑者,被告人の権利について(その3)
第1 被疑者,被告人の権利を考える上での大前提
まず,大前提として,この権利は「あんな犯罪を犯した奴を保護するとはけしからん」と考えないでください。
逆に,これだけ厚い保護をしている最大の理由は「無罪の人を絶対に処罰しない。」という観点に立っている,ということが前提であると考えてください。
分かりやすくいえば,「今,突然あなたの後ろから警察官がやってきて,『お前,殺人罪で逮捕する』といわれてあなたが警察に連れて行かれた場合にどうするか。」という発想で以下考えながら読んでみてください(もし,あなたが本当に殺人を犯していた場合は,すぐに自首してください(^_^;))
ちなみに,「被疑者」とは,逮捕勾留されて起訴(裁判所に処罰を求めること)されるまでの状態の人をいい,「被告人」とは起訴後の人をいいます。
従って,実名を出して恐縮ですが,堀江容疑者は被疑者,松本被告は被告人といいます。

第2 組織的にみた主な被告人,被疑者に対する権利
1 罪刑法定主義(憲法31条)

  「法律なければ刑罰なし」ということです。説明するまでもなく,「俺がルールブックだ」という警察官を封じるためです。

2 公開法廷での裁判を受ける権利(憲法32条,37条1項,82条)
  某国では,逮捕即処刑というめちゃくちゃな所もありますが,日本では,刑罰を決めることができるのは,唯一「裁判所」だけです。
  従って,一般に公開された裁判をちゃんと受ける権利が認められています
  ちなみに,裁判を公開している理由は,今はやりの情報公開の趣旨ではなく,裁判を公正,公平にやっていることを国民にアピールするためです(いい加減な判決を防ぐ,ということです。)。

3 裁判所の独立(憲法78条等)
  裁判所は国家機関ではありますが,他の行政機関から独立しています。従って,誰の指図も受けないため,当然警察や政治家のいいなりにはなりません。
  また,裁判官自身も独立が守られています。従って,たとえ最高裁長官であっても,判決の方向を決めたり,令状の許否に口出すことは許されません。
  ちなみに,裁判所のトップは法務大臣と思っている方が意外と多いですが,法務省は行政官庁なので,裁判所とは一切関係がありません。
  裁判所のトップは,最高裁長官です。

4 令状主義(憲法33条から35条)
  逮捕,勾留,捜索差押えなどは,必ず裁判官が発布した令状がなければ行えません。国に気に入らない人間を理由もなく逮捕勾留することを防ぐ意味や,自宅のプライバシーを保護するという理由によります。
  よく,「警視庁24時」などで,警察官が任意同行を求める場面がありますが,あれは令状がないからです。だから,「嫌だ」と言われるとそれまでなのですが,そこからは警察はぎりぎりのラインで「うん」と言わせるよう努力しているわけです。私の大学時代の先生が,「任意同行とはナンパみたいなものだ。しつこく食いつかないと捜査にならない。」と言っていましたが,なるほど,っていう感じです。
  ちなみに,太陽にほえろなどでかっこよく逮捕するシーンがありますが,令状も示さずいきなり手錠というのは,ありゃ完全に違法逮捕ですので,要注意!

5 拷問の禁止(憲法36条)
  江戸時代や戦前のように,殴る蹴るなどの暴行を加えて,自白をさせるということは絶対的に禁止されています。また,徹夜の取り調べや,食事を与えない,薬物等を投与する,嘘をついて自白させるなども許されません。
  もしこの原則に違反した場合は,やった警察官らは刑事処分されるだけではなく,このような拷問で得た自白や証拠は裁判では一切証拠として採用されず,結果無罪放免となってしまいます。
  従って,西部警察に捕まった犯人は,おそらくほぼ全員が,裁判で無罪となるでしょう。

6 三審制
  裁判に不服があっても,高等裁判所に対して控訴申立ができ,それでも不服ならば,最高裁判所に上告ができます。
  このように3回裁判を受けることで,裁判の公正を担保しています。
  ただし,高裁以上の裁判所では,事実認定は行わず,法律的な調べや量刑の妥当性のみの判断しか行いません(裁判にも,被告人は出頭せず,弁護人のみが出頭します。)。従って,重大な事実認定の誤りがない限り,事実それ自体は,第一審裁判所でほぼ確定します。

7 無罪推定の原則
  これ自体は憲法に直接規定はありませんが,当然の前提とされています。
  つまり,裁判所で「判決,お前は死刑」等といわれない限り,あくまでもその人は無罪であるとして扱わなければ行けないということです。
  だから,今刑事裁判を受けている人でも,判決が確定しない限りは国会議員になれるのです(道義的責任は別にして。)。まして,逮捕段階で起訴以前であれば,なおさらの話です。
  この原則がなければ,結果的に「逮捕=犯罪者」となってしまい,無罪を叫ぶ人間にとってはものすごく不利になります(大前提を考えてみてください)。

以上のとおり,これらの権利は,多くは国の最高法規である憲法に基づいているものなのです。
そして,なんでここまでするのかというと,冒頭にも書きましたが,もっといえば「たとえ100人の犯罪者を逃がしても,1人の無実の者をも処罰してはならない」という大原則があるからです。
長くなりましたので,次回に続きます。

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