あれは,あれで良いのかなPART2

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よく分かる(?)シリーズ 特別養子縁組制度について

2007年04月12日 23時29分56秒 | よく分かる(?)シリーズ
タレントの向井亜紀さんが,代理母によって産まれた子供をアメリカで育てると記者会見をしていましたが,その会見の中で,最高裁決定で指摘された特別養子縁組制度についても言及していました。
向井さんの場合は,どうやらこの適用も難しいといわれたようですが,そもそも「特別養子って何」「普通養子と何が違うの」などが分からない方も多いかと思います。
そこで,今回は特別養子縁組制度について,簡単に説明したいと思います。

1 特別養子縁組制度とは?
  簡単に言うと,「養子を自分の子供として育てる」制度です。
  もちろん,普通養子だって自分の子供として育てている場合が多いです。ただ,大きな違いは,「特別養子の場合は,実親との関係を完全に遮断する」という点にあります。
  つまり,法律的にも実子となるのが特別養子なのです。

2 ところで,なぜこの制度ができたの?
  社会的ニーズがあったからです。
  特に,次のような事件が社会的影響を与え,法改正が実現したといわれています。
  ある産婦人科が,不妊に悩む夫婦の治療を行う一方で,堕胎したいという人が来たことから,堕胎したい人にそのまま子供を産ませて,その子供を不妊に悩む夫婦の嫡出子として届け出ればよいのではと考え,それぞれ説得して実行に出てしまいました。およそ20数組はそのような事例があったようです。
  当然,これは違法行為なので,略式起訴されましたが,この医師は家庭の平和を守るため,最後までその20数組の素性は一切明かさず罰金刑に処せられました。
  しかし,この医師がやったことは果たして本当にけしからんことだったのか,ということが議論となり,これを厳格な要件の元で行うのであればむしろ世の中の人のためになるのではないかという意見が出てきたとから,特別養子制度が検討されるきっかけとなったのです。

3 普通養子とは外見上の違いはあるか?
  普通養子の場合,戸籍には養父母の氏名と実父母の氏名両方が記載されています。ところが,特別養子の場合は実親との関係を断ち切るため,養父母の名前しか記載されません。しかも,記載は「父,母」と実親と同じ状態になります。
  したがって,戸籍をぱっと見た限りでは実子なのか特別養子なのかはよく分からない状態になるのです。

4 普通養子とは法律上の違いは何かあるのか?
  普通養子の場合,実親との関係が残ります。従って,養父母が亡くなったら相続権があるのはもちろんのこと,実親が亡くなっても相続権は残ります。一方で,実親に対する扶養義務などもあります。
  一方,特別養子の場合は,実親との関係を断ち切るため,実親が亡くなっても相続権は発生しませんし,逆に扶養義務も一切ありません。
  近親婚制限は残るものの,それ以外については,実親とは完全に赤の他人になります。

5 普通養子との手続き上の違いは何か?
  普通養子の場合,自分より年下であれば何歳の人でも養子にできます。極端な話,100歳の養親が90歳の人を養子にするっていうのもありです。そして,基本的には市役所に縁組届をすれば足ります。また,離縁も簡単にできます。ただし,未成年者を養子にする場合は,家庭裁判所の許可が必要となります。
  一方,特別養子の場合は,養子は6歳未満が原則(例外として養育実績がある場合は8歳未満でも可)となります。これは,「自分の子」として育てる以上,子供側も「この人が実の親」と思わない必要があること,世間の人がはたらか見ても「親子」と分かるようにする必要があることなどから,幼い子供に限定しているのです。また,養親は両親そろっていること(結婚していること)が必要となります。外見上「親子」である必要があるからです。そして,この手続は必ず家庭裁判所の許可が必要となります。さらに,勝手に離縁することはできません。
  家庭裁判所では,特別養子の申立てがあった場合,この養親が実親になるのにふさわしい人か,養子をしっかりと育てる能力があるのかどうかをチェックします。具体的には,6か月以上試験的に養育してみて,その間の動向を裁判所が観察します。
  この違いも,「実親との関係の有無」と「養親が本当の親としてふさわしい人か」という観点によるものです。

6 特別養子はどういう場合に利用されるの?
  以上の制度を踏まえると,特別養子を利用する場面とは,「とにかく実の子として育てたい」という場合になります。例えば,不妊に悩む夫婦などがその典型例といえるでしょう。
  具体的には,いわゆる「里子」に出された子供を自分の子供として育てたい,という方が養親になる場合が多いです。
  一方,未婚の母(ドラマ「14歳の母」のような人が典型例かも)で子供を産んだはいいがとても自分じゃ育てられない,という場合に特別養子に出す場合が多いです。
  もっというと,今問題となっている「赤ちゃんポスト」に遺棄された子供は,今後おそらくこの制度を使って来ると思われます。

7 ところで向井さんの場合,何が問題となるの?

  以上が通常の特別養子の事例です。
  ところが,向井さんの場合,若干話が複雑となります。
(1) 子供の親が誰か
  外国人の子供を特別養子にすることも別に否定されません。したがって,一見すると,向井さんの場合も子供にアメリカ国籍を取得させてから特別養子を申請すればよいようにも見えます。
  ところが,ネバダ州の判決で「子供の親は向井さん夫妻」と出ています。つまり,アメリカで子供の出生証明書を申請すると,「親は向井さん夫妻」と書かれてしまいます。すなわち,書類上は「自分の子供を特別養子にする」という申請になってしまいます。
  よって,これでは特別養子にはならない,と裁判所は判断する可能性があるのです。
(2) 契約上の問題
  仮に,ネバダ州がもう少し融通聞かせて,「親は代理母の人」と証明してくれたとします。
  すると,特別養子の場合,家庭裁判所は実親の同意(特に子供と縁切って良いか)を求めます。
  代理母の場合,そこは既に契約しているので問題はないように見えます。ところが,契約の中身に「代理母とは出産後は一切手続き上の迷惑をかけない」という条項があります。
  すなわち,この同意を取る行為や,裁判所からの許可決定書の送付行為自体が,代理母にとっては「迷惑行為」とみなされ,これが契約違反につながる可能性があるのです。
  契約社会アメリカならではの問題点といえるでしょう。

  もちろん,同意不要の例外もあるのですが,代理母の存在が明らかで,契約は別にすると代理母の意向確認が可能であるという状況からすれば,同意不要の例外に該当するかどうかはかなり難しいと言えるでしょう。

以上ざーっと特別養子制度について説明しました。
そもそも,普通養子自体も実はなじみがありませんが,特別養子となるともっとなじみがないといえるでしょう。
ただ,家族関係が希薄化する一方,不妊に悩む夫婦が増えてきている現状からすると,今後はこの制度の利用がもっと増えるかもしれませんね。

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