あれは,あれで良いのかなPART2

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娘殺しも自供?でも児童相談所にまで責任を押しつけないで

2006年07月17日 02時36分23秒 | 裁判・犯罪
畠山容疑者が自分の娘の彩香さんの殺害を供述したようで,早ければ週明けにも再逮捕される見通しとなりました。
また,これに関連して,一部報道では畠山容疑者が彩香さんに対する虐待が行われていたこと,またそれに対して警察や児童相談所が動かなかったことについて非難が寄せられているとのことです。

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児童相談所は神様じゃないぞ!

畠山容疑者の供述は,2点3点しており,また核心部分については何とも分からない点が多いため,詳細は今後の捜査を待ちたいと思います。
ところで,児童相談所が動かなかったという点について,早くも一部コメンテーターは「警察や行政の怠慢」と厳しい口調で攻めはじめてきました。
しかし,本当に児童相談所の怠慢だったのでしょうか。

ここ一連の報道を見ていますと,畠山容疑者が逮捕されるまでは,「彼女は離婚後も彩香さんに対して人一倍の愛情をかけていた」などと報じ,それに沿うような知人の証言が報じられていました。
ところが,彩香さんが虐待されているという報道がされたのは,ここ数日前頃からです。しかも,近所の人の証言も,これまでの論調とは全く別で,「日常的に虐待が行われていた」といわんばかりの証言が続出し,さらには「彩香さんの死亡事故のころから怪しかった」などとう証言まで飛び出しています。
事の真偽は分かりませんが,少なくとも確実に言えることは,「人によっていうことが全く違うとなると,虐待が日常的に行われていたという事実は,少なくとも児童相談所に誰1人通告していなかったのではないか」ということです。
仮に誰かが児童相談所に対して通告していながら,それを完全に放置していたのであれば,児童相談所の責任は問われるべきでしょう。しかし,児童相談所に通告がされない以上,そもそも児童相談所は畠山容疑者が虐待を行っていた可能性があること自体知るはずがありませんから,当然何ら措置を講じていないはずです。
そもそも,児童相談所は神様ではありません。また,職員だってわずかしかいません。さらには,管内すべての家庭を一件ずつ訪問しているわけではありません。したがって,誰かがいわなければ虐待の事実なんて分かるはずがないのです。
それなのに「児童相談所は仕事をしていない」などと鬼の首を取ったかのように述べているコメンテーターは,現状認識が甘いといわざるを得ません。

もっというと,児童虐待防止法の改正により,一般人に対しても虐待の事実を認識した場合の通告義務を課するようになりました。そして,確かに児童相談所に対する通告件数はここ数年で急増しています。
しかし,児童相談所の職員はここ数年ほとんど増加しておらず,ところによっては公務員の削減のあおりを受けて減少しているところすらあります。つまり,増加件数に対応しきれていない実情があります。そして,その原因は,知事の人事政策のミスです。

また,自分自身に置き換えて考えてみましょう。隣近所で,子供の泣き声が聞こえてきた場合,「すわ虐待か」といって直ちに児童相談所に連絡するでしょうか。っていうか,隣の家のことをどの程度知っているでしょうか。おそらく,泣き声が聞こえても全く放置しておくか,せいぜい,「隣の家,虐待してるんじゃないの」って井戸端会議をするのがオチではないでしょうか。

さらに,「児童相談所の調査権限が甘い。もっと強制力を持たせるべきだ。」という意見もあります。確かにこの点は一理あります。
しかし,強制調査権を設けるとなると,もはや行政調査を越えるため,裁判所の令状が必要となるでしょう。そうなると,裁判官を納得させる証拠が必要となることから,調査の迅速性を害することになります。
また,一般人の通告がどの程度正確なのか,怪しい場合が多いです。例えば,自分の子供に夜泣き癖があるだけだったのに,近所の人が「虐待だ」と勘違いして児童相談所に通告し,児童相談所の職員が「立ち入り調査に来た」といきなりやってきたらどう対応しますか。きっと,むかっと来るのではないでしょうか。そんな状態の中,さらに例えば「強制立ち入り調査権」が児童相談所の職員に認められていたとした場合,こういう事例で強制調査を甘んじて受ける余裕があるでしょうか。おそらく,「うちは虐待じゃないぞ,ぼけ!」と逆ギレするのではないでしょうか

以上のように,現状では,はっきり言ってしまうと,「児童相談所は物理的にも制度的にも調査に限界がある。まして,通告がない以上,虐待の事実なんてわかりっこない。」という実情にあるのです。
児童相談所が仕事をしていないと非難するのは簡単です。また,児童相談所の自助努力をもっと求めることも大切でしょう。しかし,そもそもなぜそういう状況にあるのか,もう一歩踏み込んでからコメントをするべきでしょう。むしろ,突っ込みどころはそんな児童相談所の現状をおざなりにしている知事や厚生労働省,そして中途半端な立法を作った国会議員らの方にあると言えます。

今回の事件とは直接関係はありませんが,あまりに面白いことを言っている人がいたので,思わず突っ込み返してしまいました。

ちなみに,高齢者の虐待についても,最近法律ができて一般人に福祉事務所に対する通告義務を課しています。しかし,ほとんどの福祉事務所もこれに対する人員増を行っていないことは,法律上調査権限に限界があることから,「絵に描いた餅」のような制度になってしまっています。

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