日本国内でも,いよいよ「バカ地域」を作ろうとしているようです。
足立区では,学力テストに応じて,予算配分を変えることを検討しているそうです。
学力テストで予算に差 足立区教委、小中学校4ランクに(朝日新聞) - goo ニュース
学校間競争ってこれ?
一見すると,がんばった学校に対するインセンティブになるため,校長以下教員は学力向上に必死になるとも思われます。確かに,今の教育行政にはインセンティブ制度がほとんどないため,このように努力が報われる制度というのはありのようにも思えます。
しかし,ここには重大な問題が残ります。
学校で学力格差をつけるということは,基本的には「学校がある地域の学力の格差をつける」ということになるのです。すなわち,足立区では基本的に学校自由選択,変更制度を採用していないはずですし,仮にこの制度を導入するとしても,導入済み地域の実例を見ても半分以上の人がいわゆる「学区内」の学校を選択していることから,結果的には「A町は頭がいい住民,B町はバカ住民」と住んでいる人たち自体をランク付けすることになりかねません。
また,学校選択制度を導入するからそんなことにはならないと反論もあるかもしれません。
しかし,学校選択制度を導入したから,100%自由に選択できるとは限りません。地域の交通条件等地理的関係,家庭の経済力や家族環境,労働環境などによっては,「よそに行きたくても近くの学校しか行けない」という状況に陥る場合があります。特に,経済的弱者については,子供の交通費(送迎)からままならない状態にあるため,なおさら選択の余地はなくなるでしょう(そういう意味で,私は安倍首相提唱しているバウチャー制度には消極的です。)。
とすると,経済的にゆとりのある人は「成績優秀学校」を選択するが,経済的にゆとりのない人は「運」に頼るしかないということになります。これでは,ますます地域間学力格差を拡大させるだけです。
さらに,学校の本来的役割は,「学力の定着と向上」にあります。とすると,むしろ学力の低い学校に対し,重点的に予算を配分して徹底的に学力向上のための指導をしていくべきであるといえます。学力の低かった学校の予算を下げることは,そのような「徹底した指導」自体も行えないことになってしまい,ますます学力格差が広がってしまうのではないでしょうか。
もちろん,足立区も,非常勤講師の追加派遣など,単に予算配分とは別に学力格差がつかないような手法を考えているようですが,「バカ地域」レッテルが絶対につかないようにしなければなりません。バカ地域のレッテルが貼られてしまうと,それを原因に地価が下がり,地域に住んでいる人もどんどん流出してしまいます。そして,家賃なども下がってくるため,経済的弱者が多く住み始めるようになってきて,最悪「スラム街」のような状態にもなりかねません。
(詳しくは,こちらのブログでも大変お世話になっています松本武洋さんの著書「自治体連続破綻の時代」をご覧ください。この本のレビューについては後日したいと思います。)
インセンティブ制度自体は否定しません。しかし,それが回りに与える影響力も十分に考慮する必要があります。どんな施策もそうですが,必ず何かやれば周辺に波紋が広がります。その波紋を確実につぶしていくことも行政として当然の役割であるといえます。
そして,なによりも「その制度によって一人の落ちこぼれも出さない」くらいの効果が出なければなりません。ところが,このインセンティブ制度は,あくまでも学校(もっと言えば校長)のみが喜ぶ制度であり,生徒に対するインセンティブではありません。とすると,これにより本当に学力低下が改善できるのか,大いに疑問を感じざるを得ません。学校長の出世街道確保のための制度であるならば,やらないほうがましです。
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TB先一覧
http://d.hatena.ne.jp/kaikai00/20061104/1162603257
http://imprezza-inada-1973.seesaa.net/article/26767644.html
http://kurumachan.seesaa.net/article/26762624.html
http://ameblo.jp/takeyan/entry-10018839194.html
http://blog.goo.ne.jp/proudcity/e/7749ab1e9eb6c398fe7ecd7268bf7ea5
http://interceptor.blog13.fc2.com/blog-entry-818.html
http://blogblues.exblog.jp/4644578
http://blog.goo.ne.jp/urmt/e/7dc26853b591b08a177d16c3cd255af4
http://blog.goo.ne.jp/sunafukin-0101/e/9f31e9910f6d3ac117a2fb37ac3a5971
足立区では,学力テストに応じて,予算配分を変えることを検討しているそうです。
学力テストで予算に差 足立区教委、小中学校4ランクに(朝日新聞) - goo ニュース
学校間競争ってこれ?
一見すると,がんばった学校に対するインセンティブになるため,校長以下教員は学力向上に必死になるとも思われます。確かに,今の教育行政にはインセンティブ制度がほとんどないため,このように努力が報われる制度というのはありのようにも思えます。
しかし,ここには重大な問題が残ります。
学校で学力格差をつけるということは,基本的には「学校がある地域の学力の格差をつける」ということになるのです。すなわち,足立区では基本的に学校自由選択,変更制度を採用していないはずですし,仮にこの制度を導入するとしても,導入済み地域の実例を見ても半分以上の人がいわゆる「学区内」の学校を選択していることから,結果的には「A町は頭がいい住民,B町はバカ住民」と住んでいる人たち自体をランク付けすることになりかねません。
また,学校選択制度を導入するからそんなことにはならないと反論もあるかもしれません。
しかし,学校選択制度を導入したから,100%自由に選択できるとは限りません。地域の交通条件等地理的関係,家庭の経済力や家族環境,労働環境などによっては,「よそに行きたくても近くの学校しか行けない」という状況に陥る場合があります。特に,経済的弱者については,子供の交通費(送迎)からままならない状態にあるため,なおさら選択の余地はなくなるでしょう(そういう意味で,私は安倍首相提唱しているバウチャー制度には消極的です。)。
とすると,経済的にゆとりのある人は「成績優秀学校」を選択するが,経済的にゆとりのない人は「運」に頼るしかないということになります。これでは,ますます地域間学力格差を拡大させるだけです。
さらに,学校の本来的役割は,「学力の定着と向上」にあります。とすると,むしろ学力の低い学校に対し,重点的に予算を配分して徹底的に学力向上のための指導をしていくべきであるといえます。学力の低かった学校の予算を下げることは,そのような「徹底した指導」自体も行えないことになってしまい,ますます学力格差が広がってしまうのではないでしょうか。
もちろん,足立区も,非常勤講師の追加派遣など,単に予算配分とは別に学力格差がつかないような手法を考えているようですが,「バカ地域」レッテルが絶対につかないようにしなければなりません。バカ地域のレッテルが貼られてしまうと,それを原因に地価が下がり,地域に住んでいる人もどんどん流出してしまいます。そして,家賃なども下がってくるため,経済的弱者が多く住み始めるようになってきて,最悪「スラム街」のような状態にもなりかねません。
(詳しくは,こちらのブログでも大変お世話になっています松本武洋さんの著書「自治体連続破綻の時代」をご覧ください。この本のレビューについては後日したいと思います。)
インセンティブ制度自体は否定しません。しかし,それが回りに与える影響力も十分に考慮する必要があります。どんな施策もそうですが,必ず何かやれば周辺に波紋が広がります。その波紋を確実につぶしていくことも行政として当然の役割であるといえます。
そして,なによりも「その制度によって一人の落ちこぼれも出さない」くらいの効果が出なければなりません。ところが,このインセンティブ制度は,あくまでも学校(もっと言えば校長)のみが喜ぶ制度であり,生徒に対するインセンティブではありません。とすると,これにより本当に学力低下が改善できるのか,大いに疑問を感じざるを得ません。学校長の出世街道確保のための制度であるならば,やらないほうがましです。
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つまり、0査定はあるが
マイナス査定がない。
それから、学校に一つ
特別進学クラスを作ることを提唱します。
募集も別にするのです。
そのクラスは徹底的に
上位高校、上位大学へ入れるよう
指導します。
ですから、進度も他のクラスよりも速くなります。
このぐらいのことをやって
多様なニーズに合わせた指導を行っていくことが
求められているのでしょう。
教師へのインセンティブは「何点取らせるか」ではなく、「どれだけ伸ばすか」であるべきだと思います。
目標の設定はもっときめ細かく行うものです。
教育の目標は学力だけでなく、自立心、社会性を養うことも必要であり、数値化できない要素をどう盛り込むか、知恵を集めて考えて欲しいものです。
予算だけじゃなくて教員の質も。
子供を格付けする前に、教員を格付けするほうが先なのでは?
(教育委員会の職員?の人も含む)
都市部はともかく、地域差の固定化は田舎の切捨ての気がします。
実際、進学高校に通うために地方都市(といっても人口数万の都市ですよ)にアパート借りてすむというのは、山間部では当たり前のように存在します。
本来のインセンティブは,マイナス査定ではなく,プラス査定なんですよね。ただ,足立区の手法はプラス査定とマイナス査定の併用に思えてきます。
教師自身のやる気は,もっと別の手法で評価し,できる教師を育てていけば十分だろうと思います。
それと,ご提案の特別進学クラス,私も賛成です。むしろ,そうしないと,逆に「できる生徒を見殺しにする」教育になりかねません。
また,こういうクラスを作ることで,逆に「できない生徒に対するフォロー」がより熱くなるのでは,と考えます。
一度「バカ地域」としてのレッテルが貼られてしまうと,もはや修復は困難となるでしょうね。
また,教師へのインセンティブはおっしゃるとおり,「どの程度引き上げたか」の要素も大事です。もっと言えば,「落ちこぼれをどの程度減らしたか」が重要でしょうね。もちろん,今問題になっているような,「机上の統計値」ではなく,現実に,の話ですが。
おっしゃるとおり,成績が良い悪いだけですべてを評価することは必ずしも適正なものであるとは言いきれないと思います。
極論ですが,成績が良いが素行が悪い生徒ばかりの学校と,成績は普通だが素行が良い生徒が多い学校とでは,どちらの方が将来社会の役に立ち,また地域社会の役に立ち,さらには自分たち自身のためになるでしょうか。
数値では評価できないことはたくさんあると思います。
おっしゃるとおり,教師の質の維持向上,それが大切です。
今回のインセンティブ制度には,主にそういう教師の質向上という側面があるらしいのですが,学校全体で評価されると,その中にいる「ダメ教師」も一緒に「良い教師」として扱われてしまうため(もちろん,逆もありますが),果たしてこの制度で本当に教育の質が維持できるのか,疑問は残ります。
ともっちさまのコメントでも書きましたとおり,私も特別クラス,賛成です。どこかの自治体で構造改革特区でやってほしいと思っているのですが,これだけはなかなかやろうという自治体はありませんね。
やはり,良くある批判の「子供の序列化につながる」とか「不平等だ」という点をかわせないからでしょうか。
でも,今のままだと,「できる子供が私立に流出」という自体が解消できませんし,もっと言えば「できる子供だったのにお金がないから公立に残り,結果できなくなってしまった」という子供が発生しかねず,そうなることの方が国家的損失だと思います。