この連休中に群馬県内の地方版やテレビニュースなどで問題を取り上げられている「食の駅ぐんま」の高崎店に買い物行ってきました。
何が問題になっているのかと言いますと,建物の床面積が平屋で約1000平方メートルあるところ,販売面積が50平方メートルしか認められず,その余のスペースが「休憩所」という名のデッドスペースになってしまっているのですが,その理由が「市街化調整区域の建物」ということで,行政側から開発許可が下りなかったということのようです。また,建設途中で市町村合併があり,それによって許可権者が群馬県から高崎市に変わったが,その結果許可基準が変わってしまったという事情もあるようです。
これに対し,会社側は,「もともとOK前提の計画だった。また,目的が地産地消であるため,ここで販売できないと中小農家に与えるダメージが大きい」ということから,なんとか許可がでないかということで,現在も行政側と折衝中とのことです。
地産地消の目的は良いことだけど・・
この問題,実は「噂の東京マガジン」でも取り上げられており,店内でもビデオが流れていました(詳しくはこちら)。ただ,この問題,感情論だけで行くと「行政が全面的に悪い」となりそうなのですが,一方で考えなければならないことは,「開発には都市計画法などを遵守しなければならない」というコンプライアンスです。地産地消が目的だから何でもありとしてしまうのは,「環境問題」や「福祉,教育」をうたい文句にしながら意味不明な事業を展開している国や自治体の無駄遣い行政と構造は同じです。また,食品偽装では企業のコンプライアンスを強く主張しながら,都市計画では法令は二の次というのも,何か矛盾を覚えます。
したがって,この問題は,あくまでも「地産地消問題」と「都市計画問題」は完全に切り離して検討しなければ,問題が見えてきません。
そこで,まずは都市計画問題だけにしぼって,この店の問題点を整理したいと思います。
・行政側の問題点
1 都市計画法34条の基準が許可当時不明確だった(現在は,群馬県については許可基準要綱を作成準備中である。)。
2 群馬県と旧群馬町との間の事前協議の際,行政指導として開発可能面積を書面化しなかった。
3 市町村合併が行われた場合の都市計画許認可に関する措置が法律上不明確(これは国の問題が大きい)
4 合併後の許可権者たる高崎市の許可基準も当時不明確だった(この問題を受けて,平成19年に要綱を作成した。)。
・会社側の問題点
1 市街化調整区域に建設場所を選んでしまった(少し離れれば市街化区域になるエリア。予算の関係かもしれないが,結構大規模な販売店であるなら,他の店同様市街化区域を選択できなかったか。)
2 群馬県との協議結果を書面でもらわなかった(行政手続法で申請すれば役所が作成する。ただし,後に問題になるとは思わないであろうから,ここは会社からすればやむをえないかもしれない。)。
3 高崎市に対し,法的手段を講じていない(もっぱら陳情とデモ行進によっているようであるが,やはり最後は行政不服審査や行政訴訟も必要ではないか。これは決して行政との喧嘩ではない。)
その上で,私見を。
まず,現状として建物が完成していること,販売店スペースにかなりの無駄があること,建設許可が出た当時は群馬県が建設について許可をしており,その前提としてドライブインとして販売スペースまで認めていることからすれば,高崎市としては,一定の許可は特例として認めざるを得ないでしょう。特に,明確な基準が当時存在していなかった(市役所の内規だけでは明確性に欠けるとするのが現在の通説である。)以上,50平方メートル制限の法令上の根拠は乏しいといえるでしょう。
ただし,一方で「乱開発防止」という都市計画法の理念は守らなければなりません。また,今の要綱(外部公開のもの)では300平方メートルまで認める余地があること,そもそも市街化調整区域での開発許可は知事(特例市の場合は市長)の自由裁量にあることを踏まえると,1000平方メートルすべてとは言わないまでも,例えば500平方メートルまでは認めるなどするべきでしょう。いわば「痛み分け」です。また,厳密には,市長裁量による許可になるため,都市計画法34条にも反しません。
あくまでも,「作った物を壊さない」ことと「この特例は過去の行政の不備によるもので,今後は不備を整備したので特例は認めない」ということで,片目つぶるというのが,都市計画法の理念にも反しない大人の解決だと思います。
ただ,今回論点がぼけるのであえて「地産地消」の観点を外しましたが,実はこの問題,「地産地消」を掲げたが為に逆に会社と他の団体との軋轢が生じてしまったのではないか?という臭いもします。
これ以上はまだ資料がないのであまり触れませんし断言は避けますが,簡単に言えば,すぐそばに大型ショッピングセンターがあること,中心商店街が閑散として商工会がさまざま対応策を検討していること,高崎市は過去の乱開発に頭を悩ませていたこと,市町村合併を睨んでJAの組織が大きく変わったこと,地産地消といいながら会社の本社は群馬県にないこと,この会社に野菜を卸している農家は農家人口全体のごく一部にすぎないこと,群馬県は保守王国なので農家と政治家のつながりが強いことなどを踏まえると,「ある仮説」が考えられます
ただ,そこはパンドラの箱なので,ここではこれ以上突っ込みません。
話を戻しますが,都市計画をないがしろにしてはいけませんが,一方で「分かり難い基準」による都市計画はかえって町全体を混乱に招くということを今回の一件で行政サイドは十分学べたかと思います。
一方で,「**だからなんもあり」という発想は,少々考え直した方がいいでしょう。目的はもちろん大事ですが,目的を免罪符にしてしまうと,その後「悪用する連中」が出てきます。前述の環境や福祉,教育を冠にした事業の中で,本当にその目的にかなった事業がどの程度あるか,考えてみれば分かるかと思います。
地産地消の場合,理念は私も賛同できます。しかし,「地産地消だから,市街化調整区域に自由に建物が建てられる」としたら,おそらく田んぼの中にデパートが乱立するでしょう。当然,地産のものはちょっとしか売っておらず,あとはブランド物なんていうおちになりますよ。
都市計画法がある以上,それはしっかり守らなければなりません。もし,それがおかしいのであれば,都市計画法を改正することから考えるべきです。抜け道はどんな法律でも御法度です。それがコンプライアンスです。
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何が問題になっているのかと言いますと,建物の床面積が平屋で約1000平方メートルあるところ,販売面積が50平方メートルしか認められず,その余のスペースが「休憩所」という名のデッドスペースになってしまっているのですが,その理由が「市街化調整区域の建物」ということで,行政側から開発許可が下りなかったということのようです。また,建設途中で市町村合併があり,それによって許可権者が群馬県から高崎市に変わったが,その結果許可基準が変わってしまったという事情もあるようです。
これに対し,会社側は,「もともとOK前提の計画だった。また,目的が地産地消であるため,ここで販売できないと中小農家に与えるダメージが大きい」ということから,なんとか許可がでないかということで,現在も行政側と折衝中とのことです。
地産地消の目的は良いことだけど・・
この問題,実は「噂の東京マガジン」でも取り上げられており,店内でもビデオが流れていました(詳しくはこちら)。ただ,この問題,感情論だけで行くと「行政が全面的に悪い」となりそうなのですが,一方で考えなければならないことは,「開発には都市計画法などを遵守しなければならない」というコンプライアンスです。地産地消が目的だから何でもありとしてしまうのは,「環境問題」や「福祉,教育」をうたい文句にしながら意味不明な事業を展開している国や自治体の無駄遣い行政と構造は同じです。また,食品偽装では企業のコンプライアンスを強く主張しながら,都市計画では法令は二の次というのも,何か矛盾を覚えます。
したがって,この問題は,あくまでも「地産地消問題」と「都市計画問題」は完全に切り離して検討しなければ,問題が見えてきません。
そこで,まずは都市計画問題だけにしぼって,この店の問題点を整理したいと思います。
・行政側の問題点
1 都市計画法34条の基準が許可当時不明確だった(現在は,群馬県については許可基準要綱を作成準備中である。)。
2 群馬県と旧群馬町との間の事前協議の際,行政指導として開発可能面積を書面化しなかった。
3 市町村合併が行われた場合の都市計画許認可に関する措置が法律上不明確(これは国の問題が大きい)
4 合併後の許可権者たる高崎市の許可基準も当時不明確だった(この問題を受けて,平成19年に要綱を作成した。)。
・会社側の問題点
1 市街化調整区域に建設場所を選んでしまった(少し離れれば市街化区域になるエリア。予算の関係かもしれないが,結構大規模な販売店であるなら,他の店同様市街化区域を選択できなかったか。)
2 群馬県との協議結果を書面でもらわなかった(行政手続法で申請すれば役所が作成する。ただし,後に問題になるとは思わないであろうから,ここは会社からすればやむをえないかもしれない。)。
3 高崎市に対し,法的手段を講じていない(もっぱら陳情とデモ行進によっているようであるが,やはり最後は行政不服審査や行政訴訟も必要ではないか。これは決して行政との喧嘩ではない。)
その上で,私見を。
まず,現状として建物が完成していること,販売店スペースにかなりの無駄があること,建設許可が出た当時は群馬県が建設について許可をしており,その前提としてドライブインとして販売スペースまで認めていることからすれば,高崎市としては,一定の許可は特例として認めざるを得ないでしょう。特に,明確な基準が当時存在していなかった(市役所の内規だけでは明確性に欠けるとするのが現在の通説である。)以上,50平方メートル制限の法令上の根拠は乏しいといえるでしょう。
ただし,一方で「乱開発防止」という都市計画法の理念は守らなければなりません。また,今の要綱(外部公開のもの)では300平方メートルまで認める余地があること,そもそも市街化調整区域での開発許可は知事(特例市の場合は市長)の自由裁量にあることを踏まえると,1000平方メートルすべてとは言わないまでも,例えば500平方メートルまでは認めるなどするべきでしょう。いわば「痛み分け」です。また,厳密には,市長裁量による許可になるため,都市計画法34条にも反しません。
あくまでも,「作った物を壊さない」ことと「この特例は過去の行政の不備によるもので,今後は不備を整備したので特例は認めない」ということで,片目つぶるというのが,都市計画法の理念にも反しない大人の解決だと思います。
ただ,今回論点がぼけるのであえて「地産地消」の観点を外しましたが,実はこの問題,「地産地消」を掲げたが為に逆に会社と他の団体との軋轢が生じてしまったのではないか?という臭いもします。
これ以上はまだ資料がないのであまり触れませんし断言は避けますが,簡単に言えば,すぐそばに大型ショッピングセンターがあること,中心商店街が閑散として商工会がさまざま対応策を検討していること,高崎市は過去の乱開発に頭を悩ませていたこと,市町村合併を睨んでJAの組織が大きく変わったこと,地産地消といいながら会社の本社は群馬県にないこと,この会社に野菜を卸している農家は農家人口全体のごく一部にすぎないこと,群馬県は保守王国なので農家と政治家のつながりが強いことなどを踏まえると,「ある仮説」が考えられます
ただ,そこはパンドラの箱なので,ここではこれ以上突っ込みません。
話を戻しますが,都市計画をないがしろにしてはいけませんが,一方で「分かり難い基準」による都市計画はかえって町全体を混乱に招くということを今回の一件で行政サイドは十分学べたかと思います。
一方で,「**だからなんもあり」という発想は,少々考え直した方がいいでしょう。目的はもちろん大事ですが,目的を免罪符にしてしまうと,その後「悪用する連中」が出てきます。前述の環境や福祉,教育を冠にした事業の中で,本当にその目的にかなった事業がどの程度あるか,考えてみれば分かるかと思います。
地産地消の場合,理念は私も賛同できます。しかし,「地産地消だから,市街化調整区域に自由に建物が建てられる」としたら,おそらく田んぼの中にデパートが乱立するでしょう。当然,地産のものはちょっとしか売っておらず,あとはブランド物なんていうおちになりますよ。
都市計画法がある以上,それはしっかり守らなければなりません。もし,それがおかしいのであれば,都市計画法を改正することから考えるべきです。抜け道はどんな法律でも御法度です。それがコンプライアンスです。
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