前回に続きます。
3 収賄罪の主体は誰?
もちろん公務員です。ただし,例外として,事前収賄と事後収賄は厳密には公務員ではありませんが,広い意味では公務員に含まれますので,同じようなものです。
したがって,例えば,私立学校の先生が業者から多額のリベートをもらったり接待を受けたりしても,収賄罪は成立しません(もちろん,学校の内規違反で解雇となるかもしれませんが,刑事罰とは別の話です。)。
「あれ,でも公務員でない妻が逮捕されたよね」と思われた方,鋭い!
実はここは難しい話なのですが,簡単に説明しますと,まず収賄罪は,公務員限定犯罪なので,このような犯罪のことを「身分犯」と呼んでいます。そして,身分犯の場合,身分がないものが犯行を犯しても罪になりません。
したがって,例えば,公務員の妻が勝手に,「私,土木課の職員の妻だけど,私に100万円払えば,夫に頼んで仕事有利にしてあげる」といって業者からお金をもらっても,これ自体は何ら罪にはならないのです(ただし,詐欺罪になりうるなど別の犯罪の可能性があり得ますが。)。
では,なんで妻が逮捕されるということがあったのでしょうか。
実は,「公務員である夫と一緒になって犯罪をした」からなのです。いわば,2人で銀行強盗をしたことと同じとして扱われるのです。これを「共同正犯」といいます。俗に「共犯」と呼んでいるものです。
共犯の場合,身分がなくても身分があるものとして処罰していいよと規定しているため(刑法65条1項),妻が夫と打ち合わせの上で賄賂をもらったとすれば,公務員でなくても処罰されるのです。
したがって,事情を熟知した上で妻が業者からお金を受け取れば,公務員でなくても「収賄罪」が成立するのです(この辺が,第三者収賄罪との切り分けの難しいところとなりますが,この難しい話は割愛します。)。
4 職務に関連しているとはどういうことか
自分自身に職務権限がある場合はもちろんのこと,職務と密接な関係がある行為も含みます。
例えば,土木課の職員の場合,担当事務が道路工事であれば,道路工事に関することでお金をもらえば「職務に関している」といえます。また,土木課では河川工事も担当しているが,この職員は河川工事とは関係ないとしても,同じ課にいる以上河川工事に絡む可能性があると言うことから,河川工事業者からお金をもらっても,「職務に関連している」といえます。
一方で,この職員が,学校教科書販売業者からお金をもらったとしても,それは職務とは全く関係がないため,その後教育委員会にあっせんをするなどのことがない限り,収賄罪にはなりません。
ただし,公務員には「転勤」が付き物です。そこで,転勤後に賄賂をもらった場合はどうでしょうか。例えば,土木課職員が,福祉課に異動した後に,道路工事業者から賄賂をもらったとしたらどうでしょうか。
この場合,一見すると,福祉課の職員には「道路工事に関する権限」はないため,「職務の関連して」いるとはいえず,収賄罪が成立しないともいえそうです。しかし,それでは「異動してから賄賂を渡せば大丈夫」ということで,異動の度に賄賂をもらって大もうけということになりかねません。
そこで,いろんな考え方がありますが,判例は,「職務」には過去の職務も含まれるとして収賄罪の成立を認めています。
だから,異動しても安心して逮捕できるのです。
5 請託をするとはどういうことか
単純収賄罪以外では,請託を受けることが要件となっていますが,この請託とは何でしょうか。
これも難しい話ではなく,単純に「職務に関して一定の依頼をすること」をいいます。ただし,この依頼は必ずしも不正行為に限らず,正当な職務でも大丈夫です。したがって,例えば,業者が「次回の入札も,是非とも中立公正な形で変な不正が入らないようにしてくださいね。」といって賄賂を渡したとしても,「請託を受けた」ということになります。
6 贈った方の責任は?
賄賂を贈った業者については,贈賄罪が成立します。つまり,「両者処罰する」ということになるのです。
7 賄賂をもらった公務員は,賄賂もらい得なの?
かつて5億円の賄賂をもらったと認定された大臣がいましたが,例えば,5億円もらって懲役5年だとした場合,見方を変えれば「年収1億円のお仕事」ともいえるために,仮に公務員をクビになっても「おいしい仕事」ともいえそうに思えます。
そこで,世の中そんなに甘くないということを見せしめるため,もらった賄賂はすべて没収または追徴します。つまり,手元から全部取り上げます。
没収とは,持っているお金を取り上げることです。追徴とは,お金以外でもらっていた場合に,金銭に換算した金額の支払いを命じることをいいます。例えば,ゴルフ接待であれば,ゴルフプレー代相当が追徴額となります。
8 賄賂のようで賄賂でないもの
以上が収賄罪の概要ですが,では収賄罪のように見えて収賄罪にならないものとはどういうものでしょうか。
(1) 政治献金
これは,政治家支援者が当該政治家や政治団体に対し,お金を提供することをいいます。
これは,あくまでも政治家に対する応援のための供出金であり,職務に関して提供している訳ではないことから,収賄罪になりません。
ただし,名目が政治献金であったとしても,明らかに政治家の職務に関連して提供していると認められる場合であれば,収賄罪の対象となりうる場合があります。例えば,何らかの見返りを期待して献金をして,政治家もその見返りを理解している場合などがあげられます。
(2) 適度な接待
公務員倫理法で規制は受けていますが,それを別にすれば,社会的に相当といえる範囲での接待については,前述のとおり賄賂とはいえないとなります。例えば,業者が安い居酒屋に公務員を招待することや,退職や異動時の寸志として数千円の商品券を渡すことなどがあげられます。
(3) 公務員の指示がない状態での第三者への金銭提供
公務員の指示の元で第三者へ金銭を提供すれば第三者収賄罪となりますが,公務員が全く知らないうちに,第三者に金銭などを提供した場合は,賄賂を収受したとはいえませんから,収賄罪が成立しません。
たとえば,政治家の秘書に,業者が自分の判断で「秘書さん,いつもお世話になってますので,これは秘書さんの分として」といってお金を渡すことがあげられます。もちろん,その事実を政治家が知りながらそれを放置した場合は収賄罪となる可能性が出てきますが,本当に「秘書と業者」だけの関係である限り,収賄罪とはなりません。
(4) あっせんしない収賄
職務権限がない公務員に対して賄賂を渡した場合,そこから職務権限ある公務員への斡旋を依頼すれば,あっせん収賄が成立しますが,あっせん行為がない通常の場合であれば,収賄罪が成立しません。
例えば,政治家に対して,業者が「今度の道路工事は是非我が社に」といって金銭を提供しても,政治家が「いやあ,僕にはそんな権限ないからねえ」などと言いながらお金をもらったとしたら,収賄罪にはならないのです。もっといえば,業者が「黄金色のお菓子でございます」といってお金を渡し,政治家が「おぬしも悪よのう,おほほほ」といってそれをもらったとしても,それだけでは何の罪にもならないのです。
ちなみに,同じケースでも「よし,任せろ」といってお金をもらえば,その後全く動かなかったとしても「約束した」ことになるので,あっせん収賄罪が成立します(ただし,立証は相当大変だとは思いますが。)。
以上が収賄罪の超概要です。
とにかくいえることは,「>李下に冠を正さず」ということです。公務は常に中立公正である必要があります。これは当然政治家も然りです。お金で公務を動かすことは,「金持ちのための政治」となってしまいます。そういう自体を防ぐ意味でも,収賄罪とは厳しく規定されるべきものなのだ,ということをご理解いただければ幸いです。
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3 収賄罪の主体は誰?
もちろん公務員です。ただし,例外として,事前収賄と事後収賄は厳密には公務員ではありませんが,広い意味では公務員に含まれますので,同じようなものです。
したがって,例えば,私立学校の先生が業者から多額のリベートをもらったり接待を受けたりしても,収賄罪は成立しません(もちろん,学校の内規違反で解雇となるかもしれませんが,刑事罰とは別の話です。)。
「あれ,でも公務員でない妻が逮捕されたよね」と思われた方,鋭い!
実はここは難しい話なのですが,簡単に説明しますと,まず収賄罪は,公務員限定犯罪なので,このような犯罪のことを「身分犯」と呼んでいます。そして,身分犯の場合,身分がないものが犯行を犯しても罪になりません。
したがって,例えば,公務員の妻が勝手に,「私,土木課の職員の妻だけど,私に100万円払えば,夫に頼んで仕事有利にしてあげる」といって業者からお金をもらっても,これ自体は何ら罪にはならないのです(ただし,詐欺罪になりうるなど別の犯罪の可能性があり得ますが。)。
では,なんで妻が逮捕されるということがあったのでしょうか。
実は,「公務員である夫と一緒になって犯罪をした」からなのです。いわば,2人で銀行強盗をしたことと同じとして扱われるのです。これを「共同正犯」といいます。俗に「共犯」と呼んでいるものです。
共犯の場合,身分がなくても身分があるものとして処罰していいよと規定しているため(刑法65条1項),妻が夫と打ち合わせの上で賄賂をもらったとすれば,公務員でなくても処罰されるのです。
したがって,事情を熟知した上で妻が業者からお金を受け取れば,公務員でなくても「収賄罪」が成立するのです(この辺が,第三者収賄罪との切り分けの難しいところとなりますが,この難しい話は割愛します。)。
4 職務に関連しているとはどういうことか
自分自身に職務権限がある場合はもちろんのこと,職務と密接な関係がある行為も含みます。
例えば,土木課の職員の場合,担当事務が道路工事であれば,道路工事に関することでお金をもらえば「職務に関している」といえます。また,土木課では河川工事も担当しているが,この職員は河川工事とは関係ないとしても,同じ課にいる以上河川工事に絡む可能性があると言うことから,河川工事業者からお金をもらっても,「職務に関連している」といえます。
一方で,この職員が,学校教科書販売業者からお金をもらったとしても,それは職務とは全く関係がないため,その後教育委員会にあっせんをするなどのことがない限り,収賄罪にはなりません。
ただし,公務員には「転勤」が付き物です。そこで,転勤後に賄賂をもらった場合はどうでしょうか。例えば,土木課職員が,福祉課に異動した後に,道路工事業者から賄賂をもらったとしたらどうでしょうか。
この場合,一見すると,福祉課の職員には「道路工事に関する権限」はないため,「職務の関連して」いるとはいえず,収賄罪が成立しないともいえそうです。しかし,それでは「異動してから賄賂を渡せば大丈夫」ということで,異動の度に賄賂をもらって大もうけということになりかねません。
そこで,いろんな考え方がありますが,判例は,「職務」には過去の職務も含まれるとして収賄罪の成立を認めています。
だから,異動しても安心して逮捕できるのです。
5 請託をするとはどういうことか
単純収賄罪以外では,請託を受けることが要件となっていますが,この請託とは何でしょうか。
これも難しい話ではなく,単純に「職務に関して一定の依頼をすること」をいいます。ただし,この依頼は必ずしも不正行為に限らず,正当な職務でも大丈夫です。したがって,例えば,業者が「次回の入札も,是非とも中立公正な形で変な不正が入らないようにしてくださいね。」といって賄賂を渡したとしても,「請託を受けた」ということになります。
6 贈った方の責任は?
賄賂を贈った業者については,贈賄罪が成立します。つまり,「両者処罰する」ということになるのです。
7 賄賂をもらった公務員は,賄賂もらい得なの?
かつて5億円の賄賂をもらったと認定された大臣がいましたが,例えば,5億円もらって懲役5年だとした場合,見方を変えれば「年収1億円のお仕事」ともいえるために,仮に公務員をクビになっても「おいしい仕事」ともいえそうに思えます。
そこで,世の中そんなに甘くないということを見せしめるため,もらった賄賂はすべて没収または追徴します。つまり,手元から全部取り上げます。
没収とは,持っているお金を取り上げることです。追徴とは,お金以外でもらっていた場合に,金銭に換算した金額の支払いを命じることをいいます。例えば,ゴルフ接待であれば,ゴルフプレー代相当が追徴額となります。
8 賄賂のようで賄賂でないもの
以上が収賄罪の概要ですが,では収賄罪のように見えて収賄罪にならないものとはどういうものでしょうか。
(1) 政治献金
これは,政治家支援者が当該政治家や政治団体に対し,お金を提供することをいいます。
これは,あくまでも政治家に対する応援のための供出金であり,職務に関して提供している訳ではないことから,収賄罪になりません。
ただし,名目が政治献金であったとしても,明らかに政治家の職務に関連して提供していると認められる場合であれば,収賄罪の対象となりうる場合があります。例えば,何らかの見返りを期待して献金をして,政治家もその見返りを理解している場合などがあげられます。
(2) 適度な接待
公務員倫理法で規制は受けていますが,それを別にすれば,社会的に相当といえる範囲での接待については,前述のとおり賄賂とはいえないとなります。例えば,業者が安い居酒屋に公務員を招待することや,退職や異動時の寸志として数千円の商品券を渡すことなどがあげられます。
(3) 公務員の指示がない状態での第三者への金銭提供
公務員の指示の元で第三者へ金銭を提供すれば第三者収賄罪となりますが,公務員が全く知らないうちに,第三者に金銭などを提供した場合は,賄賂を収受したとはいえませんから,収賄罪が成立しません。
たとえば,政治家の秘書に,業者が自分の判断で「秘書さん,いつもお世話になってますので,これは秘書さんの分として」といってお金を渡すことがあげられます。もちろん,その事実を政治家が知りながらそれを放置した場合は収賄罪となる可能性が出てきますが,本当に「秘書と業者」だけの関係である限り,収賄罪とはなりません。
(4) あっせんしない収賄
職務権限がない公務員に対して賄賂を渡した場合,そこから職務権限ある公務員への斡旋を依頼すれば,あっせん収賄が成立しますが,あっせん行為がない通常の場合であれば,収賄罪が成立しません。
例えば,政治家に対して,業者が「今度の道路工事は是非我が社に」といって金銭を提供しても,政治家が「いやあ,僕にはそんな権限ないからねえ」などと言いながらお金をもらったとしたら,収賄罪にはならないのです。もっといえば,業者が「黄金色のお菓子でございます」といってお金を渡し,政治家が「おぬしも悪よのう,おほほほ」といってそれをもらったとしても,それだけでは何の罪にもならないのです。
ちなみに,同じケースでも「よし,任せろ」といってお金をもらえば,その後全く動かなかったとしても「約束した」ことになるので,あっせん収賄罪が成立します(ただし,立証は相当大変だとは思いますが。)。
以上が収賄罪の超概要です。
とにかくいえることは,「>李下に冠を正さず」ということです。公務は常に中立公正である必要があります。これは当然政治家も然りです。お金で公務を動かすことは,「金持ちのための政治」となってしまいます。そういう自体を防ぐ意味でも,収賄罪とは厳しく規定されるべきものなのだ,ということをご理解いただければ幸いです。
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【 埼玉県警察学校 校長 小河進 副校長 岩淵敏雄 が業務上横領 】
12月6日 さいたま県警の元幹部でさいたま市警察部長(警視正)まで務めた警察OBの田中三郎氏(60歳)が、埼玉県県政記者クラブで記者会見を行って、元埼玉県警察学校長等 を 業務上横領の疑いでさいたま地検に告発したことを明らかにした。
記者会見には、「明るい警察を実現する全国ネットワーク」の代表で田中氏の代理人である清水勉弁護士と同ネットワークの会員で「市民の目フォーラム北海道」代表の原田宏二が同席した。
埼玉県警察学校の学生と教職員の任意団体「校友会」が、構内の売店業者から売上金の3%を「助成金」名目で上納させていたが、
告発状によると田中氏の前任だった平成16年当時の校長(警視正 既に退職)は、庶務・厚生担当事務官(警部級)に「助成金は、当時の副校長(警視)に渡すよう」に指示し、平成16年4月から12月までの間の「助成金」計約125万円を「校友会」の出納帳に記載せず、
当時の校長や副校長ら3人が着服したとしている(告発状はPDF参照 http://www.ombudsman.jp/fswiki/wiki.cgi/akarui?action=PDF&page=%BA%EB%B6%CC%B8%A9%B7%D9%BB%A1%B3%D8%B9%BB%A1%A1%B9%F0%C8%AF%BE%F5 )。
埼玉県警察学校 校長 小河進 は 幹部職員(警視正)でありながら業務上横領。
埼玉県警察学校長→ 交通部長 →勇退(退職金全額もらい退職)。その後、一般財団法人 埼玉県警察福祉協会 理事に。
処分を受けずに天下り?
blog.livedoor.jp/saitamalivdoor/archives/3297522.html
【 埼玉県警察学校 校長 副校長が業務上横領 】
埼玉県警察学校の元校長が前任者ら3人 (警察学校長 小河進 副校長 岩淵敏雄)を業務上横領で刑事告発
blog.livedoor.jp/saitamalivdoor/archives/3297533.html
埼玉県警 不祥事
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