ガソリン国会で来年度予算案が半ば強行的に採決されて衆議院を通過したことすら話題にならないほど盛り上がっている「ロス疑惑」問題ですが,三浦氏担当弁護人が,改めて保釈を求め,かつサンフランシスコ移送を拒否する方向で全面対決をするようです。
一方で,ロス市警元捜査官のジミー佐古田氏も「有罪の証拠はある」とこれまた受けて立つ姿勢を示しました。
三浦元社長弁護人「たかがロス市警」 元捜査官の自信に(朝日新聞) - goo ニュース
共謀罪が穴だった
まず,案の定,「一事不再理問題」が出てきました。この点は,私も従前から指摘していたところですが,ちょっと当初の考え方と違ったのは,「カリフォルニア州では,外国裁判についての一事不再理効を適用しない法令」が,日本の最高裁判決確定後にできたという点でした。つまり,この一事不再理問題には,「刑罰不遡及の原則」まで絡んできて,もっと面倒なことになってしまったのです。
この点,分かりやすく説明すると,「後からできた法律は,過去の行為を処罰できない」ということなのです。これを認めると,誰も安心して生活できませんから。
例えば,今日「街中でくしゃみをしたら死刑」という法律が仮にできたとした場合,突然警察がやってきて「お前,1週間前にくしゃみしたから逮捕」といわれたらどう思いますか?きっと「聞いてないよー」と反論するでしょう。これが「刑罰不遡及の原則」なのです。つまり,「聞いてないよー」,だからそれが罪になるとは思わずに行為して当然だろう,っていうことなのです。
で,ロス疑惑事件に当てはめると,日本の最高裁の判決が出た時点では,カリフォルニアでは,外国判決に対して一事不再理を認めていました。とすると,三浦氏からすると,「やれやれ,これでカリフォルニアでも処罰されない」と思うわけですが,それがその後法律変わって「やっぱり適用できるよ」とすると,「そりゃ,聞いてないよー」になるわけです。
もちろん,ここはいろんな考え方ができますので,今後の裁判では,当然ここが大きな争点となります。
ただ,一方で,一事不再理とは別次元の話も出てきました。それが「共謀罪」です。すなわち,日本では「共謀罪」が存在しない以上,この罪で三浦氏を処罰することは絶対にできませんし,日本の裁判ではこれは審理対象外となっていました。
ところが,アメリカには共謀罪があります。そして,アメリカ刑法が属地主義,すなわちアメリカで起こった事件はアメリカで処罰できるという原則を踏まえると,少なくとも共謀罪については,「アメリカで裁判をしても一事不再理には関係がない」ということになるのです。
すると,カリフォルニアの検察官の落としどころとしては,「殺人罪は仕方ないが,共謀罪だけでも十分懲役に持っていける」という裁判方針ではないでしょうか。
ただし,ここにも一事不再理の問題が出ないわけではありません。すなわち,一事不再理の趣旨は「ひとつの事実で複数処罰されない」という原則ですから,ここで共謀罪で処罰することは,まさに「ひとつの事実を違う面から評価している」ということになるのです。
よって,ここも裁判では大きくもめることになるでしょう。
したがって,この裁判,事実認定にいたるまでにかなりの時間をかけて法律論争が続くと思います。もちろん,アメリカの法律が前提なので,これについて日本がとやかく言う筋合いではありませんが。
ただ,グローバル化した現代社会においては,国境をまたぐ事件はたくさん出てきます。したがって,そろそろ「一定の国際的ルール」が必要かもしれません。
ちなみに,これは非常にかんぐった発想で根拠はありませんが,今回,アメリカの逮捕を日本政府が放置している背景としては,「日本でも共謀罪が必要だ」ということを国民に見せ付けるためではないかともいえます。
すなわち,アメリカで彼が有罪になれば,「ほーら,共謀罪っていう罪があれば,こうやって処罰できるようになるでしょう。便利でしょう。」とアピールできます。また,彼が処罰されることで溜飲が降りる人たちも多いでしょうから,おそらく「なんだ,日本に共謀罪があれば,日本の裁判でも有罪になったのに」と考えてしまい,「やっぱり共謀罪必要だ」という論調が増えてきて,結果共謀罪成立が容易になる,っていうことになります。
まあ,根拠0の話なので,これはかんぐりすぎだとは思いますが・・。
いずれにしても,この問題,単なる「真実は何か」という点よりも,かなりディープな法律論争になります。刑法学者や国際公法学者などが,今後どのように評価するか,その点が注目です。
よろしければ1クリックお願いしますm(__)m→人気blogランキングへ
一方で,ロス市警元捜査官のジミー佐古田氏も「有罪の証拠はある」とこれまた受けて立つ姿勢を示しました。
三浦元社長弁護人「たかがロス市警」 元捜査官の自信に(朝日新聞) - goo ニュース
共謀罪が穴だった
まず,案の定,「一事不再理問題」が出てきました。この点は,私も従前から指摘していたところですが,ちょっと当初の考え方と違ったのは,「カリフォルニア州では,外国裁判についての一事不再理効を適用しない法令」が,日本の最高裁判決確定後にできたという点でした。つまり,この一事不再理問題には,「刑罰不遡及の原則」まで絡んできて,もっと面倒なことになってしまったのです。
この点,分かりやすく説明すると,「後からできた法律は,過去の行為を処罰できない」ということなのです。これを認めると,誰も安心して生活できませんから。
例えば,今日「街中でくしゃみをしたら死刑」という法律が仮にできたとした場合,突然警察がやってきて「お前,1週間前にくしゃみしたから逮捕」といわれたらどう思いますか?きっと「聞いてないよー」と反論するでしょう。これが「刑罰不遡及の原則」なのです。つまり,「聞いてないよー」,だからそれが罪になるとは思わずに行為して当然だろう,っていうことなのです。
で,ロス疑惑事件に当てはめると,日本の最高裁の判決が出た時点では,カリフォルニアでは,外国判決に対して一事不再理を認めていました。とすると,三浦氏からすると,「やれやれ,これでカリフォルニアでも処罰されない」と思うわけですが,それがその後法律変わって「やっぱり適用できるよ」とすると,「そりゃ,聞いてないよー」になるわけです。
もちろん,ここはいろんな考え方ができますので,今後の裁判では,当然ここが大きな争点となります。
ただ,一方で,一事不再理とは別次元の話も出てきました。それが「共謀罪」です。すなわち,日本では「共謀罪」が存在しない以上,この罪で三浦氏を処罰することは絶対にできませんし,日本の裁判ではこれは審理対象外となっていました。
ところが,アメリカには共謀罪があります。そして,アメリカ刑法が属地主義,すなわちアメリカで起こった事件はアメリカで処罰できるという原則を踏まえると,少なくとも共謀罪については,「アメリカで裁判をしても一事不再理には関係がない」ということになるのです。
すると,カリフォルニアの検察官の落としどころとしては,「殺人罪は仕方ないが,共謀罪だけでも十分懲役に持っていける」という裁判方針ではないでしょうか。
ただし,ここにも一事不再理の問題が出ないわけではありません。すなわち,一事不再理の趣旨は「ひとつの事実で複数処罰されない」という原則ですから,ここで共謀罪で処罰することは,まさに「ひとつの事実を違う面から評価している」ということになるのです。
よって,ここも裁判では大きくもめることになるでしょう。
したがって,この裁判,事実認定にいたるまでにかなりの時間をかけて法律論争が続くと思います。もちろん,アメリカの法律が前提なので,これについて日本がとやかく言う筋合いではありませんが。
ただ,グローバル化した現代社会においては,国境をまたぐ事件はたくさん出てきます。したがって,そろそろ「一定の国際的ルール」が必要かもしれません。
ちなみに,これは非常にかんぐった発想で根拠はありませんが,今回,アメリカの逮捕を日本政府が放置している背景としては,「日本でも共謀罪が必要だ」ということを国民に見せ付けるためではないかともいえます。
すなわち,アメリカで彼が有罪になれば,「ほーら,共謀罪っていう罪があれば,こうやって処罰できるようになるでしょう。便利でしょう。」とアピールできます。また,彼が処罰されることで溜飲が降りる人たちも多いでしょうから,おそらく「なんだ,日本に共謀罪があれば,日本の裁判でも有罪になったのに」と考えてしまい,「やっぱり共謀罪必要だ」という論調が増えてきて,結果共謀罪成立が容易になる,っていうことになります。
まあ,根拠0の話なので,これはかんぐりすぎだとは思いますが・・。
いずれにしても,この問題,単なる「真実は何か」という点よりも,かなりディープな法律論争になります。刑法学者や国際公法学者などが,今後どのように評価するか,その点が注目です。
よろしければ1クリックお願いしますm(__)m→人気blogランキングへ
法的にもちょっとメディアの論調は
話をややこしくしているかも。
専門的には楽しいですけど
おかにゃんさんの指摘も含めて
国際犯罪が政治的に悪用されそうな気がして
しょうがないです。
外国法と日本法との違いが現れた一場面といえるでしょう。
日本の基準ですべてを考えると,話が違う方向に行ってしまうかもしれませんね。
ただ,おっしゃるとおり,こういった問題が政治的に悪用されないことを願いたいものです。