あれは,あれで良いのかなPART2

世の中の様々なニュースをばっさり斬ってみます。
ブログ界の「おか上彰」を目指し、サボりながらも頑張ります!

ハイテク艦隊といえども,安全確認は人間がやるんだなあ

2008年02月20日 02時19分00秒 | 事故
イージス艦「あたご」が,千葉県沖海上で漁船と衝突し,漁船に乗っていた親子2人が現在も行方不明とのことです。イージス艦については,業務上過失往来危険罪の容疑で現在捜査を受けているとのことです。

海自イージス艦と漁船衝突、親子が不明…千葉・野島崎沖(読売新聞) - goo ニュース

ハイテクは戦闘部分だけ

まずは2人の安否が気がかりです。一刻も早い救助を期待したいと思います。
さて,今回の事故原因については,これから調査に入りますのでその調査結果を待ちたいと思いますが,様々な情報を総合して考えると,やはり自衛隊側に分が悪い事故であると思われます。すなわち,漁業操業中の船については,それを回避する義務があるところ,イージス艦「あたご」はその回避ができなかったからです。いわば,あたご側に「前方不注視」の可能性が高いと言えます。

ところで,今回の事故を受けて,「これじゃあ,体当たり自爆テロの船が来たら終わりだ」とか「レーダー積んでるのになぜ漁船を発見できなかったのか」などの疑問がネット上でもかなりでています。この辺について,プチ補足をします。
まず,「自爆テロ対策」ですが,一般に駆逐艦の場合,魚雷や潜水艦からの攻撃は想定していますが,小型船舶の体当たり攻撃までは想定していない仕様になっています。言い方を変えると,多少の攻撃にも耐えられる構造となっているといえます。もちろん,その想定を超える自爆テロ攻撃であれば元も子もないですが,もっと言ってしまえば,駆逐艦の役割の一つである「空母を守る」という観点からすれば,船自体が盾になるということも当然織り込み済みなのです。
したがって,この仕様の良し悪しは別にして,一般に自爆テロ小型船対策は講じていないのです。
ただし,基本的なレーダーは持っていますので,当然「不審な船が近づいている」ことは簡単に発見はできます。そういう意味では,別に丸腰ではありません。

もう一つの「なぜレーダーで漁船を見つけられなかったのか」ですが,イージス艦が持っているレーダーは,基本的に「航行用」ではなく「防空用」のものです。いわば「制空権対策」という今日の戦闘スタイルに合わせたレーダなのです。したがって,通常の航行時に使っているレーダは,一般の船のものとそんなには変わりません。はっきり言ってしまうと,「普通に航行しているときは人間の目勝負」なのです。
だからこそ,事故防止のためには乗組員がそれぞれの役割を全うしなければならない訳で,この点は大型客船と全く同じなのです。
したがって,レーダー云々は今回の事故ではあまり関係がないのです。

とにかく,今回の事故は,限りなく「人災」といえます。イージス艦だから云々と言うよりも,艦長以下乗組員が「自分の職務を過失なく全うしていたのか」が一番のポイントとなるのです。そして,もし何らかの過失があった場合は,刑事上の責任を負うことはもちろんですが,何よりも「再発防止の為に何をするべきか」を組織全体で真剣に考えるべきでしょう。
なだしお」の教訓を忘れてはいけません。

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9 コメント

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補足しますと (九龍)
2008-02-20 03:45:55
イージス艦のフェーズドアレイレーダーは最大探知距離450キロで出力が恐ろしく強いので、
迎撃戦闘時には、甲板員を艦内に待避させないと、
いわゆる電子レンジのような状態で、甲板員にダメージを与えるような物ですから、
非戦闘時、航行時はそもそもイージス艦の特徴であるフェーズドアレイレーダーは使えません。

確か過去に浮上航行中の海自潜水艦が漁船と衝突した事故もあったと思いますが、
どうも海自はソナーやレーダーの技術員の技能は高いが、目視が苦手のような感じですね。
返信する
メンタマおっぴろげてない? (時評親爺)
2008-02-20 08:43:08
おはようにございます(コーシー終わり汗)

やはり目視不十分?の疑いがありそうですね(不十分汗疑い汗)

http://mainichi.jp/select/today/news/20080220k0000m040144000c.html

>> 前方の船舶を映す水上レーダーでチェックしていた。
>> 海自幹部によると、300~400メートルより近くなるとレーダーは役に立たず、
>> 乗組員の目視に頼ることになる。目視が不十分だった可能性がある。

そんなレーダーと乗組員で、工作船とか自爆テロにどう対処するの?とツッコミたいところ?(汗)

気になるのが・・・

>> 緑の灯火がスピードを上げて動いたため漁船と確認

>> 清徳丸の場合、左舷に赤、右舷に緑、後部に白の灯火が義務づけられている
>> あたごから見て清徳丸は右から左に航行していたとすれば、
>> 赤の灯火が見えることになり、乗組員の証言とは矛盾する。
>> 漁をしている時はこのほかに緑の灯火が必要だが、当時は操業していなかったという

何か違っているのか、漁船が左から右へ航行していたのか?・・・救助活動についても、昨晩のテレビで目撃証言(近くの他の漁船員?)とニュアンスが違っていたような?(真実不明汗)

でも当該漁船は、上掲毎日の各船舶の航路図示からすると、勝浦から三宅島へ向かう予定のようで、するとあたごから見て右から左へ航行していたと考えるのが自然なわけで・・・航路謎
返信する
時評親爺さん (九龍)
2008-02-20 15:49:06
300~400mより近くなると
というのは、水上レーダーがマストに設置されていて、電波を使う以上は仕方ないと思いますよ。
レーダーは電波を放射して反射した電波を観測するものですから
灯台下暗しと同じ理由で。
不信船やテロ等の時には臨戦体制でフェーズドアレイレーダーやファランクス近接防御が使えるでしょうから大丈夫だと思います。
というか、テロ等で撃沈許可が出ていない状態で体当たりを受けた時は巨体ですから避けきれないと思いますよ旋回性能や加速性能が低いわけですから、どうしても巨大な慣性の法則が働きますし。
逆にいえば、巨体ですから、モーターボート程度の体当たりでは傷は付いても、大きなダメージは無いと思いますが。
返信する
九龍さま,コメントありがとうございました (おかにゃん)
2008-02-20 23:24:42
こんばんは。
補足ありがとうございました。結局,イージス艦が本領を発揮するのは,あくまでも戦闘中であって,普通の航行中は一般の艦船と全く同じ訳ですよね。
だからこそ,少なくとも一般の船と同じ注意義務が必要であったと言えるわけです。どうも,この点に気のゆるみがあったのかもしれませんね。
返信する
時評親爺さま,コメントありがとうございました (おかにゃん)
2008-02-20 23:27:33
こんばんは。
どうも自衛隊側の発表が日々刻々と変わってきています。発見時間もだんだん延びてきました。
また,どうやら「勤務交替時間」だったようでもあり,単純な引継ミスの可能性も出てきました。
いずれにしても,まだまだ言うことを鵜呑みにできない状態かもしれませんね。
返信する
九龍さん (時評親爺)
2008-02-21 22:46:21
ご説明ありがとうございます。

先に示した件の毎日記事・・・

>> 海自幹部によると、300~400メートルより近くなるとレーダーは役に立たず、
>> 乗組員の目視に頼ることになる。目視が不十分だった可能性がある。

上記事情が、九龍さんの指摘される「フェーズドアレイ」とか言うシロモノかどうかは、不肖は軍事専門家ではないので判断できませんが・・・

> 水上レーダーがマストに設置されていて、電波を使う以上は仕方ないと思いますよ

上記について

http://sankei.jp.msn.com/affairs/disaster/080221/dst0802211835016-n1.htm

>> 「自分はレーダーで3時半くらいにイージス艦を確認した。
>> イージス艦のレーダーは漁船のレーダーより性能がいい
>> レーダーをきちんと見ていれば(清徳丸との衝突の)少なくとも20~30分前には確認できたはず」

・・・と僚船の方が証言されています。とすれば件のあたごの「フェーズドアレイ」ではない”水上レーダー”というのですか、それについて疑問を感じざるを得ないところです。
返信する
時評親爺さま,コメントありがとうございました (おかにゃん)
2008-02-21 23:04:12
こんばんは。横から竹槍部隊突入です!
どうも,今日の報道からすると,「30分前に漁船はイージス艦の存在をレーダーで探知していた」ということのようです。
っていうことは,少なくとも軍用云々に関わらず,通常の航行用レーダーであったとしてもあたごは十分に存在を把握していたものと思われます。
いよいよ人為的ミスの臭いが・・。

ちなみに,レーダーの細かい性能はきっと非公開でしょうね。なにしろ超軍事機密ですから。
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フェーズドアレイレーダーは (九龍)
2008-02-22 12:32:47
フェーズドアレイレーダーはイージス艦の艦橋部分4面に付いてる8角形の、いわゆる「特徴的な」部分です。
これは、使う時には電波で焼かれないために甲板員は艦内に退避しますから、通常航行時は使っていないはずです。
で、水上レーダーはT字型やパラボラ型でクルクル回っているレーダーなのですが、理屈でいえば、円錐刑を横にしたような探知範囲を回している訳で、近づきすぎるとこの円錐刑の角度から外れてレーダーでは見えなくなるので、「300~400mより近くでは」と言われているのだと思います。
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九龍さま,コメントありがとうございました (おかにゃん)
2008-02-23 00:16:48
こんばんは。
ようは,「近距離は目視でちゃんとやれ」っていうことですよね。
っていうか,船乗りの基本かもしれません。
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