前回に続きます。
前回までは,憲法上の権利を説明しました。
そして,この規定を受けて,刑事訴訟法において,これらの権利を更に具体的にしています。これを書き出すと,刑事訴訟法の教科書になってしまいますので省略しますが,主なところだけざっくりと。今回は,被疑者,被告人個人の権利を中心に説明します。
今回も,あくまでも,前回同様「自分が無実なのに突然逮捕されたらどうする」という視点で読んでください。
よく分かる(?)シリーズ 被疑者,被告人の権利について(その1)
よく分かる(?)シリーズ 被疑者,被告人の権利について(その2)
第4 その他の諸権利
1 逮捕勾留の時間制限
この点は,後日改めて記載しますが,無制限に身柄を拘束できるのではなく,現在は最大23日間(超例外で28日間)の拘束しかできません。
なお,逮捕勾留されている者が起訴された場合,その後は,2ヶ月身柄拘束が可能で,裁判所はその後1ヶ月ごとにその拘束期間を更新(延長)することができます。
だから,逮捕された人が裁判になっても,当然警察や拘置所から裁判所に行くわけです。
2 保釈
保釈とは,平たくいえば,判決が出るまで外で自由に生活できる,という制度です。よくニュースで聞く「保釈金1億円払って保釈された」等というのがこの制度です。
ただ,よく誤解があるのが次の点です。
まず,保釈はいきなりお金を積めば出るものではなく,裁判官の決定が必要です。
従って,「金持ちは常に保釈になる」というのは,大きな誤解です。
次に,保釈は起訴後,すなわち裁判中の制度です。従って,捜査中である逮捕勾留中は,保釈制度はありません。
さらに,あくまでも裁判中の制度なので,判決確定後は保釈がありません。従って,懲役刑に処せられた人は,幾らお金を積んでも外に出ることはあり得ません。
3 伝聞証拠の排除
なんか難しい言葉になりましたが,簡単に言えば「裁判所では,裁判官が直接話を聞いたり証拠を見たりできたものだけが証拠になる」というものです。
例えば,「**さんが『被告人が殺すところを見た』と言っていたよ。」と言っても,それは証拠になりません。
もっと典型例は「警察や検察の調書」です。
これも,取り調べた刑事や検事が書いた書類にすぎないので,この書類だけでは証拠となりません。必ず,この刑事や検事が法廷で証言する必要があります。
でも,これってうっとうしいですよね。そこで,例外として「被告人が調書を証拠にしてもいいよ,と同意した場合」は,この調書が証拠になります。
多くの裁判では,事実に争いがないため,警察や検察の調書を全部同意することで,裁判をスピーディーに進めています。
従って,なぜ堀江容疑者が調書に署名拒否をしているのかというと,「俺はこの調書を絶対裁判所の証拠にしない」という意思の表れなのです。こうなると,裁判では取り調べた検事が証言台に立つことになるかもしれません。
第5 まとめ
以上が,ダイジェスト(とはいってもだいぶ長くなりましたが)的な被疑者,被告人の権利です。
実際には,もっと細かく規定があるのですが,それを書くと相当マニアックになるだけではなく,教科書になってしまうので,止めておきます。
また,何度も書いているように,「自分が無罪だったら」の前提の権利です。
従って,「有罪だった場合」という視点で見ると,ものすごく違和感があったり,逆に有害的とも思える権利もあると思いますが,その点は,やむを得ないところではないでしょうか。現に,実例としては,松本サリン事件の河野さんは,これらの保護規定があったからこそ,今日無事生活できているのです。このような規定がなければ,今頃は松本サリン事件の犯人として処罰されているおそれがあるばかりか,ひょっとするとオウム事件自体が今のように裁かれなかったかもしれません。
仮に,「自分が無実で処罰されてもいいから,100人の犯罪者を処罰してくれ」という国民が過半数を超える状態になれば,これらの権利についても憲法上から見直しがあるかもしれませんが,現状的にはまずあり得ないでしょう。
また,問題点として,確かに「加害者にあつすぎる」というのがあるかもしれません。
しかし,これは更に逆の視点,すなわち「自分が被害者だったら」という考え方が現行憲法や刑事訴訟法にはほとんど盛り込まれていないことによるものです。
よって,「加害者の権利を削る」という議論よりも,まず「被害者の権利をもっと高める」というのが,本来的な姿なのではないかと考えます。
以上,最後までおつきあい頂きまして,ありがとうございました。
後日(近いうちに),逮捕勾留部分について,さらにいろいろ説明する予定でいますので,その際は引き続きご愛顧のほど,よろしくお願いします。
これで,「後ろに警官がきて,突然逮捕」されても大丈夫ですね。(^_^)V
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前回までは,憲法上の権利を説明しました。
そして,この規定を受けて,刑事訴訟法において,これらの権利を更に具体的にしています。これを書き出すと,刑事訴訟法の教科書になってしまいますので省略しますが,主なところだけざっくりと。今回は,被疑者,被告人個人の権利を中心に説明します。
今回も,あくまでも,前回同様「自分が無実なのに突然逮捕されたらどうする」という視点で読んでください。
よく分かる(?)シリーズ 被疑者,被告人の権利について(その1)
よく分かる(?)シリーズ 被疑者,被告人の権利について(その2)
第4 その他の諸権利
1 逮捕勾留の時間制限
この点は,後日改めて記載しますが,無制限に身柄を拘束できるのではなく,現在は最大23日間(超例外で28日間)の拘束しかできません。
なお,逮捕勾留されている者が起訴された場合,その後は,2ヶ月身柄拘束が可能で,裁判所はその後1ヶ月ごとにその拘束期間を更新(延長)することができます。
だから,逮捕された人が裁判になっても,当然警察や拘置所から裁判所に行くわけです。
2 保釈
保釈とは,平たくいえば,判決が出るまで外で自由に生活できる,という制度です。よくニュースで聞く「保釈金1億円払って保釈された」等というのがこの制度です。
ただ,よく誤解があるのが次の点です。
まず,保釈はいきなりお金を積めば出るものではなく,裁判官の決定が必要です。
従って,「金持ちは常に保釈になる」というのは,大きな誤解です。
次に,保釈は起訴後,すなわち裁判中の制度です。従って,捜査中である逮捕勾留中は,保釈制度はありません。
さらに,あくまでも裁判中の制度なので,判決確定後は保釈がありません。従って,懲役刑に処せられた人は,幾らお金を積んでも外に出ることはあり得ません。
3 伝聞証拠の排除
なんか難しい言葉になりましたが,簡単に言えば「裁判所では,裁判官が直接話を聞いたり証拠を見たりできたものだけが証拠になる」というものです。
例えば,「**さんが『被告人が殺すところを見た』と言っていたよ。」と言っても,それは証拠になりません。
もっと典型例は「警察や検察の調書」です。
これも,取り調べた刑事や検事が書いた書類にすぎないので,この書類だけでは証拠となりません。必ず,この刑事や検事が法廷で証言する必要があります。
でも,これってうっとうしいですよね。そこで,例外として「被告人が調書を証拠にしてもいいよ,と同意した場合」は,この調書が証拠になります。
多くの裁判では,事実に争いがないため,警察や検察の調書を全部同意することで,裁判をスピーディーに進めています。
従って,なぜ堀江容疑者が調書に署名拒否をしているのかというと,「俺はこの調書を絶対裁判所の証拠にしない」という意思の表れなのです。こうなると,裁判では取り調べた検事が証言台に立つことになるかもしれません。
第5 まとめ
以上が,ダイジェスト(とはいってもだいぶ長くなりましたが)的な被疑者,被告人の権利です。
実際には,もっと細かく規定があるのですが,それを書くと相当マニアックになるだけではなく,教科書になってしまうので,止めておきます。
また,何度も書いているように,「自分が無罪だったら」の前提の権利です。
従って,「有罪だった場合」という視点で見ると,ものすごく違和感があったり,逆に有害的とも思える権利もあると思いますが,その点は,やむを得ないところではないでしょうか。現に,実例としては,松本サリン事件の河野さんは,これらの保護規定があったからこそ,今日無事生活できているのです。このような規定がなければ,今頃は松本サリン事件の犯人として処罰されているおそれがあるばかりか,ひょっとするとオウム事件自体が今のように裁かれなかったかもしれません。
仮に,「自分が無実で処罰されてもいいから,100人の犯罪者を処罰してくれ」という国民が過半数を超える状態になれば,これらの権利についても憲法上から見直しがあるかもしれませんが,現状的にはまずあり得ないでしょう。
また,問題点として,確かに「加害者にあつすぎる」というのがあるかもしれません。
しかし,これは更に逆の視点,すなわち「自分が被害者だったら」という考え方が現行憲法や刑事訴訟法にはほとんど盛り込まれていないことによるものです。
よって,「加害者の権利を削る」という議論よりも,まず「被害者の権利をもっと高める」というのが,本来的な姿なのではないかと考えます。
以上,最後までおつきあい頂きまして,ありがとうございました。
後日(近いうちに),逮捕勾留部分について,さらにいろいろ説明する予定でいますので,その際は引き続きご愛顧のほど,よろしくお願いします。
これで,「後ろに警官がきて,突然逮捕」されても大丈夫ですね。(^_^)V
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