あれは,あれで良いのかなPART2

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ISILの真意が分からない人質殺害

2015年02月01日 23時55分18秒 | 外交・海外情報
イスラム国(ISIS,ISIL)に拉致された日本人人質は,2名とも殺害されるという最悪の展開となりました。

何を考えているのやら

当然の前提として,この行為を絶対に許してはなりませんし,ISILに屈してはなりません
一方で,今回の政府対応の是非や今後の対応についていろいろと言われていますが,論点がぼけることと,ここで国内がごたごたすることは,まさにテロルたちの思うつぼなので,ここでは話題にしません。
ここで私が気になったこと,それは「ISILがなぜ日本人人質を拉致し,殺害したのか。」ということです。これ,正直言って,ほかの国(特に米英)と毛色が違いすぎるため,かなり不可思議としか言いようがないのです。

1 なぜ日本人人質を拉致したのか
  ようつべの内容では,日本が人道支援として支払うことにした2億ドルがISILに対する宣戦布告的な意味合いだ,としておりました。
  ところが,実際にISILが二人を人質としたのは,去年の11月頃までの話であり,日本が2億ドルを拠出することを決めるはるか前の段階です。
  だとすると,その段階で,日本人を人質として取る何らかの大義名分が必要なはずですが,その時期に日本人人質を取る積極的理由はないのです。
  まあ,無理に解釈すると,「集団的自衛権の行使が可能になった」ということと「安倍政権が選挙により長期政権化する可能性が高かった」という時期だといえますが,こんな理由で人質を取るほどISILも暇ではないはずなのです。
  だとすると,正直「たまたま人質に日本人が含まれていただけ」というところだったのではないでしょうか。だとすると,湯川さんはともかく,後藤さんは完全に事故のようなものです。

2 なぜ人質を殺害する必要があったのか
  ISILは,無駄に人質は殺しません。それぞれ意味があります(それが良いこととは全く思いませんが。)。
  今回の場合,湯川さんのケースでは,「身代金を払わなかった」としていますが,後藤さんに至っては正直かなり意味不明な理由で殺害されています。
  ものすごく平たく言うと,湯川さんの場合,日本政府が金を払えば助かったかもしれないのですが,後藤さんの場合,何をすれば助かったのか,よくわからないのです
  「あれ,ヨルダンの死刑囚を解放すれば助かったのでは」と思う方も多いかと思いますが,仮に本当にそうであれば,後藤さん処刑の際に,そのことを触れるはずなのです。ところが,ISILは後藤さん殺害の際にそのことにはふれず,単に抽象的なことしか言っていません
  さらに,米英の人質の場合,次の人質がいるぞ,だから空爆とかやめないと次の人質も同じ目に合わせると,的な威嚇効果があるのですが,今回の場合,幸い日本人人質は他にはいない(はず)です。だとすると,ここで後藤さんを殺害して威嚇するメリットもISILにとっては皆無なのです。
  あえていうと,今回のニュースで日本国民がビビってしまうかもしれない,っていう思惑があるのかもしれませんが,これまでの手口を踏まえると,ISILがそんな小学生的な発想にはならないはずなのです。
  いずれにせよ,今回後藤さんを殺害した意図が正直全く分かりませんし,理解できません

3 仮説

  今回の日本人人質の殺害ですが,仮説として考えられるのは,「実は去年のうちに既に殺害していた」ということです。
  ISILの手口が卑劣なのは,実はようつべなどに映像を流す前に水面下で身代金交渉を進めているということです。そうなんです,人質を取ることは,単純に「金目的」だけなのです。
  そのうえで,解放されている事例では,多くは,ようつべ映像公開前にある程度交渉が進んでいた,というものでした。
  ところが,今回の日本人ケースでは,事前に身代金要求があれど,これに対する具体的な交渉はしなかったようです(おそらくですが。)。
  なので,「これ,金にならない」と判断し,殺害してしまった,あとは大義名分を探していたところ,ちょうどいいタイミングで安倍総理が中東入りしたので,これを使おう,っていう安直な発想だったのかもしれません。
  もちろん,前述のとおり,そんな小学生的な発想で動く連中ではないとは思うのですが,金が絡む話だとすると,案外単純な理由なのかもしれません。
  また,もっというと,ISIL自体が一枚岩ではない可能性もあります。ISIL内の一部が暴走して勝手にやっているだけという可能性もあります。この仮説の場合,ISILがそのうち内部崩壊することになるでしょうが,その場合,それはそれで周辺諸国にとばっちりがやってくる可能性も高く,中東情勢が相当混乱してしまう怖さがあります。

4 政府の対応と報道について
  ここで,一つご理解いただきたい点があります。
  今回の一連の報道について,何らかの形でバイアスがかかり,または意図的に虚偽情報を混ぜ込んで報道されている,つまりすべてが真実であるわけではないということです。
  これは,国民を欺くとかいう意味ではなく,国際交渉という話になる以上,やみくもに自分たちの手の内を敵に晒す必要はないという理由によります。なので,このあとおそらく徐々に「話が違う」的なネタが出てくると思いますが,それはある意味当然の法理だといえます。
  また,一般に,政府とテロルとは仲介者を通じてではありますが,一定のチャンネルはどこの国でも持っています。日本も,今回どこまで使ったかは別にして,当然何らかのチャンネルは持っているはずです。
  なお,そのことと,政府が腹の中で何を考えていたのかは全く別の話です。やるべきことをやっていたのか,見殺しにしたのかは,今後明らかになるでしょう。

5 今後日本が注意すべきこと
  安倍総理は「やられたやり返す,倍返しだ」的な報復攻撃を示唆していますが,当然ながら,現行憲法下では日本が独自に報復攻撃を行うことはできませんので,やるとなったら,集団的自衛権の行使という名目において,米英軍に参加するということになると思います。
  ところが,これがまたちょっと曲者なんです。前述のとおり,日本人人質は,現在別にいません。とすると,日本固有の利益として,「別の人質を助ける」という大義がありません
  だとすると,日本が集団的自衛権を行使するための大義としては,「在外邦人が危険にさらされる恐れがある」ということにつきます。でも,これって,誰かが拉致されるか,または日本企業が爆破テロにあうなど,さらなる被害の発生(未遂でいいでしょうが)が必要となります。それがなければ,単純な報復行為としての集団的自衛権になってしまうため,行使要件は具備しないでしょう。
  逆に言うと,これで集団的自衛権が行使できるのであれば,どんな理由でも日本は簡単に戦争に参加できるということになってしまいます。
  また,仮に集団的自衛権の行使として空爆等に参加した場合,日本はISIL等のテロルからますますターゲットになってしまうことになります。最悪のシナリオは,「日本国内における自爆テロ発生」です
  もちろん,これも,集団的自衛権行使の有無に関係なく発生可能性がありますから,今のうちから警備強化をする必要があることは言うまでもありません。
  いずれにせよ,水際で抑えるという警備強化を行わざるを得ないでしょう。そのためには,警察庁,防衛省,法務省等が連携して情報共有を行う必要があります。ここが変に縦割り行政で動くと,確実にその穴をついてテロルはやってきます。ここ,絶対的にセキュリティホールはふさぐ必要があります。
  また,警備強化も仕方ないでしょう。当然ながら,警備強化の裏返しとしては,「市民生活への影響」も出てきます。国民としてそれを受忍するための説明責任が政府に求められるでしょうし,国民として「我が身を守るため」として受忍する必要もあろうと思います。
  いずれにせよ,何よりも重要なことは「テロに屈しない」ためには,テロルからの傍若無人な行為に対しても毅然と立ち向かえるだけの「守りを固めるということです。

以上が,別の視点から気になった点と,今後注意するべき点です。
ほんと,今回のISILの行為は,許せません。それは確実に言えることです。

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