おかあさんのうた

どこをどう歩いてきたんだろう。
おかあさん、子供たちよ。
あのぬくもりはもう帰っては来ないのだろうか。

追憶

2010-06-12 18:20:20 | 随筆
 そろそろ梅雨明けだろうか。
きょうは朝から晴れているけれど、夕方の今はどんよりした曇り空。
この風に誘われて日記を繰ってみた。
この日記はお前に「別れよう」と決心していた頃の日記だ。
2009年6月20日付け。
深酒だった。


『きょうは珍しくいい天気だった。

金もない。明後日は金を振り込まなくてはならない。

「たいへんだねえ」

他人が云ってくれたって何になる。

誰にだって話せるものか。

大変なのはおれ自身で、おれが解決するしかない。

「後輩や先輩が、いい、いいって言ってくれるのはお世辞だよ」

由布子はそう言った。

そうだね、気に掛けておかないと、と思った。


 13年前に甘い言葉に魅せられたのは紛れもない自分自身だった。

今宵、したたかに酒を呑んで15分の夜道を歩いて帰った。

「由布子、お前に逢いたい。愛しているよ」

独り言しかならない夜空に向かって、何度も何度も、心に叫んだ。

そんなことが、今更何になる、くだらない。

我慢しきれずに路地の電柱に隠れて立ちションをやった。

なんてみっともないことやってんだ!

己に腹が立った。

涙も出なかった。

もうお終いか。

友も去っていった。

誰の所為でもない。己の所為だ。

この日記も、もう何ヶ月も書いてはない。


 酔いの覚めぬ内に寝よう。

おやすみ、愛し子よ。不甲斐ないこの父を許しておくれ。』