劇で見た族譜と作家梶山季之のことがどうも私の心に水紋を広げてきた。
そうだ、図書館へ行こう。
数多くの本が並べられている書架。しかし、梶山氏の書物は数冊しかなかった。流行作家の宿命か。それでも族譜の入った短編集があったので早速借りた。後書きを見てみると45才でなくなったと記されている。無頼とか放浪とか言う言葉が未だ生きていた時代であった。
読み始めて驚いた。近頃、文字を読むのがあまりに遅々として進まず、遠ざけていたのだが、ぐんぐん文字の世界に入っていけるではないか。読むスピードと内容が呼応し、何も知らない朝鮮の京城の様子がうっすらとイメージできて、自分自身が梶山氏の文字で構築された世界になめらかに沿うように入っていく。文章が練り上げられているので、どんよりしたこの頭にも優しいのであろう。また、人間の哀しさや人間への暖かなまなざしが感じられるので、筆者の思いに、素直に身をゆだねて読み進められるのだ。
戦争という極限状態。誰しもが自己保存の中で非人間的で残虐に変わっていき、弱さや狂気が露わになっていく。その中で、もがきながらも何が正しくて何が愚かしいことかが主人公を通して、浮かび上がってくるような内容。
平和な時代にはありえないようなことが、日常茶飯に起き、人の運命が木の葉の舞うように簡単にひっくりかえされていく。
強権に押しつぶされるような毎日の中で自分だったらどう生きていくだろう。あらがいようなく生きていかねばならぬ時、私のおぞましい本性がむき出しになっていくであろう。
そんなことがつい数十年前、現実だったのだ。
どうかそのような未来が来ないでほしい。いつまでも命を大切にする世の中であってほしい。
今もニュースではアフガニスタンで少年が自爆装置を付けて兵士に近づき自爆し数人がなくなった、と報じている。
少年やその家族の気持ち、遥か遠くに派遣されて命を落とす若き兵士たちの辛さなど想像してみる。ぬくぬくしたところにいて、何億分の一も共有できない自分だが、この同じ月を見、同じ空気を吸って生きている今、この地よりずうーっと西に行けばそれも全く恐ろしい現実として繰り広げられていることに、切なく胸が詰まる。
そして、翻ってここ日本、今の若者の就職状況の鬱屈した悲惨さを思うとき、それがますます続けば絶望した若者たちが、歴史でよく出現する狂信的な者にとらわれていったようになっていかないかと不安になる。
そうだ、図書館へ行こう。
数多くの本が並べられている書架。しかし、梶山氏の書物は数冊しかなかった。流行作家の宿命か。それでも族譜の入った短編集があったので早速借りた。後書きを見てみると45才でなくなったと記されている。無頼とか放浪とか言う言葉が未だ生きていた時代であった。
読み始めて驚いた。近頃、文字を読むのがあまりに遅々として進まず、遠ざけていたのだが、ぐんぐん文字の世界に入っていけるではないか。読むスピードと内容が呼応し、何も知らない朝鮮の京城の様子がうっすらとイメージできて、自分自身が梶山氏の文字で構築された世界になめらかに沿うように入っていく。文章が練り上げられているので、どんよりしたこの頭にも優しいのであろう。また、人間の哀しさや人間への暖かなまなざしが感じられるので、筆者の思いに、素直に身をゆだねて読み進められるのだ。
戦争という極限状態。誰しもが自己保存の中で非人間的で残虐に変わっていき、弱さや狂気が露わになっていく。その中で、もがきながらも何が正しくて何が愚かしいことかが主人公を通して、浮かび上がってくるような内容。
平和な時代にはありえないようなことが、日常茶飯に起き、人の運命が木の葉の舞うように簡単にひっくりかえされていく。
強権に押しつぶされるような毎日の中で自分だったらどう生きていくだろう。あらがいようなく生きていかねばならぬ時、私のおぞましい本性がむき出しになっていくであろう。
そんなことがつい数十年前、現実だったのだ。
どうかそのような未来が来ないでほしい。いつまでも命を大切にする世の中であってほしい。
今もニュースではアフガニスタンで少年が自爆装置を付けて兵士に近づき自爆し数人がなくなった、と報じている。
少年やその家族の気持ち、遥か遠くに派遣されて命を落とす若き兵士たちの辛さなど想像してみる。ぬくぬくしたところにいて、何億分の一も共有できない自分だが、この同じ月を見、同じ空気を吸って生きている今、この地よりずうーっと西に行けばそれも全く恐ろしい現実として繰り広げられていることに、切なく胸が詰まる。
そして、翻ってここ日本、今の若者の就職状況の鬱屈した悲惨さを思うとき、それがますます続けば絶望した若者たちが、歴史でよく出現する狂信的な者にとらわれていったようになっていかないかと不安になる。