松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆自治基本条例をつくるとまちが変わる(焼津市)

2016-10-10 | 1.研究活動

 焼津市で第3回目の市民まちづくり集会が開かれた。

 市民まちづくり集会は、自治基本条例の基づくもので、市民、行政、議会の三者が集まって、まちの未来を話し合う。別に何かを決める会議ではなく、大いに語り、まちの未来のための知恵を出し合う。

 そもそも、何も決めない会議をやって意味があるのかという疑問もあるだろう。しかし、欲張ってはいけない。これまで、自分の住むまちの未来について、語り合う場すらなかったのだから。見知らぬ市民同士、市民と行政、市民と議会が話し合い、知恵を出し合う場をつくったことで、まずは良しとしよう(批判も結構であるが、その場合、自分のまちで、三者が和気藹藹と話し合う場をつくってみてほしい。すぐれたものができたら、さっそく、取り入れたい)。

 一方的な見方や相互の誤解の半分は、話し合いがないことから起こっている。話し合いの中で、相手が理解できるようになれば、相手の言い分が、これまでとは違って見えてくる。いらぬ誤解や偏見を取り除き、本当に議論すべきことに絞って議論すれば、たくさんある課題のいくつかは解決するだろう。50歩100歩というけれども、100歩のほうが確実に前に行っている。

 この日のテーマは、ふるさと納税である。焼津市は、1000品目を超える返礼品があり、ぶっちぎりの全国トップである。寄付額もあっという間に全国2位になった。この根拠となったのが、自治基本条例である。自治基本条例に、まちの一員としての事業者が位置付けられ、産業振興の一環として、このふるさと納税が位置付けられている。

 1000品目というのは、焼津市で活動する企業なら、基本OKという発想である。自治基本条例は、みんなで野球をやろう、つまり全員野球の発想なので、企業についても、一部の選ばれた企業だけでなく、全企業参加でまちを盛り上げようということになる。ふるさと納税も、その延長線になるから、結果、1000品目ということになる。

 これは私の推理ではない。この日の発表は、現在はふるさと納税の担当で、もとは自治基本条例の担当でもあったIさんが行ったが、「自治基本条例をつくった自分が言っているのだから間違いない」と壇上から高らかにいっていたので間違いない。

 自治基本条例というと、抽象的で理念的で、あえて作る意味があるのかという意見があるが、それは「条例をつくる」という意味が分かっていないからである。社会が変わるから条例をつくるのである。逆にいえば、より良いまちができるように、条例をつくるのである。自治基本条例をまともに作った流山市、新城市、焼津市などは、行政、市民、議会から、たくさんの知恵が生まれてきて、全国をリードする政策を次々に打ち出すようになった。

 あらためて自治基本条例をつくれば、まちが変わると実感した。

 この日の焼津には、たくさんの見学者がきた。市民まちづくり集会の元祖、新城市からは、議長さんをはじめとする議員さん、市民の人たち、行政の職員さんたち、20名近くがやってきた。一瞬、新城にいるのかと思った。焼津市の市民まちづくり集会は、新城市の市民まちづくり集会を学んで作ってきたが、本家からの視察を受けて、あらためて恐縮し、さらにファイトが湧いてきたと思う。

 市民まちづくり集会は、今は全国で新城市と焼津市しかないが、早晩、大きな流れになると思う。そのうち、新城市と焼津市の市民、行政、議会の人たちに声をかけて、市民まちづくり集会の本を書こう。流れを後押ししようではないか。

 この日は、松下ゼミからもゼミ生全員の11名が参加した。よそ者、若者であるが、知らない人たちに交じり、楽しそうにやっていた。半年前、ゼミに入ったころの、自信なさがウソのようである。自治基本条例によって、若者たちも育てられてきたということである。

 

 

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