私の母の実家は呉服を商う家でした。
そして母は仕事柄、洋装よりも着物を着ている事の方が多い女性です。
私自身お洋服も着物も大好きですが、
その一番の魅力は自分がそれを着る事よりも、
テキスタイルそのものの美しさや、平面的な柔らかい素材を、
立体に寄り添わせて行くデザインや技術に、
より大きな魅力を感じているような気がいたします。
にもかかわらず、私が織物の奥深い魅力に取り憑かれるようになったのは、
日本を離れてからだったように思います。
学生時代、民俗学の授業で様々な民族衣装を学んだ事も大きなきっかけでした。
そんな私が旅に出ますと、帰りのスーツケースには、
タペストリーに限らず、旅先で仕入れた沢山の布が詰め込まれます。
マレーシア、タイ、ベトナム、インドネシア・・・・・
東南アジアは美しい織物の宝庫ですね。
これらは皆東南アジアの国々から仕入れたタペストリーです。
3点ともシルクですが、使われている糸によって光沢や質感が全く違います。
私は、ストールとして使える裏面の処理をしてあるものよりも、
織り上げた職人さんの足跡である織り糸が渡っているものを好みます。
東南アジアだけでなく、世界中女性のいる所であればもれなく美しい布があります。
南米各国の色鮮やかな布も大変魅力的です。
コットン、シルク、麻。その土地で最も良く育つ繊維で紡がれた織物は、
見飽きる事がありません。
ところで私は蘭の花が好きで、この家に来てからは欠かした事がありません。
特に白い蘭が好きなのですが、我が家の壁は明るいベージュ。
そのまま飾ったのでは、気高い花の輪郭がぼやけてしまいます。
そんな時にもタペストリーが役に立ちます。
花の背景に、花びらと色を合わせたタペストリーを掛けてあげますと、
輪郭が際立つ上に、床の間をイメージさせるような特別な空間が生まれます。
蘭にはそのような特別感が相応しい気がいたします。
そんな私の蘭に対する思いから、鉢カバーも特別に焼きました。
タペストリーは額装された絵画よりも収納場所を取りませんので、
気に入ったものを季節ごとに取り替えて楽しんだりしております。