参勤交代。江戸時代に各藩の大名が領地と江戸を定期的に往復し、将軍に拝謁するという行事だ。しかも江戸に1年間滞在しなければならないため、大名にとっては大きな出費だった。もっとも、狙いはそこにカネを使わせ、謀反につながる武装にカネを回させないように、というものだったらしい。けさの「暴れん坊将軍」はそれがテーマだった。
大名になる最低レベルの十万石という極小の三日月藩は名物もなく窮乏しており、江戸まで四百里ある今回の参勤交代も出発が1か月遅れていた。大目付(大名を管轄)に𠮟責されて困り果て、領内の古墳に埋まる宝物を掘り出し、江戸で売って旅費にしようと苦悩の決断をする。はしゃぐのは姫の雪(野咲たみこ)だったが、道中で何者かの集団に襲われる。だいぶ省くが、江戸で起きた事件に三日月藩が関係していると思った吉宗は御庭番2人とともに三日月藩に入っていた。突然の出来事を見て襲撃軍団を蹴散らす。徳田新之助と名乗ると雪姫に「用心棒としてついてこい」と命じられ、行列の最後尾からついて行く。宿泊費を節約するために寺に泊まり、自炊する武士たちと話もした。初めての経験に「これが参勤交代か」と勉強する。
そして、何よりの難敵は雪姫だった。庶民の窮乏も知らずにわがままばかり言っている。そして、入浴シーンを見られたと勘違いした雪姫は殿や家老の前に吉宗を呼び出し、無礼打ちにするように言う。
吉宗が逆に雪姫の贅沢と勘違いぶりを厳しい言葉でたしなめると、雪姫は激怒する。
しかし、改めて謝罪に来た吉宗に「謝るだけではすまぬ。わらわをそなたのものとしなさい。これまで厳しいことを言われたことはなかったわ」と、実は孤独で寂しかった生活を吐露した。
ようやく江戸に着いた行列だが、大目付に囚われる。荷物の中に盗品があるからという。覚悟を決める殿だが、吟味のときに荷物箱から出て来たのはなんと雪姫。「あれは全部ニセモノでした」。実は、御庭番たちの調べで、大目付が盗賊を操り、各地の古墳から盗掘を繰り返して私腹を肥やしていたことが分かっていた。三日月藩内の古墳もすでに盗掘しており、代わりにニセモノを埋めてきたのだった。そして、盗掘を藩のせいにしようという魂胆だったのだ。
大目付は逆上するが、同行した吉宗が冷静に成敗。新之助が吉宗と知った雪姫はこれまでの無礼ぶりを土下座して詫びるが、吉宗は「そんなことはない。とても愛らしかったぞ」と笑顔で返した。
雪姫は、このお話で唯一見せた飛び切りの笑顔で吉宗を見つめた。
三日月藩に御咎めはなし。吉宗は参勤交代の負担を身をもって感じ、その規則をかなりゆるめたという。