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絵じゃないかおじさんぐるーぷ
* 新益京の駄犬コロ(025)
コロは、数年前にわが家に住みついた白い雑種の牡犬である。
誰かが生後数か月の時、わが家の近くに捨てていったのだろう。
そのまま黙って縁の下に住みついてしまったのだ。
子供達も飼ってと譲らなかったので、そのまま住まわせている。
最近では、子供達もコロを相手にしなくなり、
Oさんも散歩に連れていかない。
一日中寝そべっている。
そんなヤツを見ていると、無性に腹が立ってくる。
定年後の己れの姿を見ているようで吐き気を催してくる。
去勢手術を施しているので、食うことだけが楽しみみたいだ。
そうだ、駄犬コロに喝を入れてやろう!
最初は5kmほど離れた山の辺の道に、
コロをサヤカに乗せて置いてきた。
私は、わざと自宅から遠い方へ走った。
ヤツは必死に追い掛けてきたが、所詮犬の足のこと、
バイクに適うものではない。
そのうち撒いてやった。
それでもヤツはその日のうちに帰ってきた。
ワンワンと吠えてOさんに告げ口しているようだ。
彼女は何も知らない。
ヤツが私を恨めしげに見上げるが、そ知らぬ振りをしてやる。
つづく
あ@仮想はてな物語 新益京の駄犬コロ(2/3)
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「コロ、何処に行っていたの?」
ワォン、ワォンと私の方を顔指しながら鳴くが、
オレは知らんぷり。
次は10kmほど離れた吉野の山の中に置いてきた。
Oさんはコロが二日も帰って来ないので心配している。
「鎖外したの、あなたなの?」
私は、曖昧な返事をする。
「何処へ行ったのかしら」
私は、内心ビクビクしている。
駄犬でも居れば少しは役に立つ。
猫を追っ払うことぐらいは出来るのだ。
最近のように家庭から出す塵の量が多くなると、
つい家の外に出す。
それを猫が荒らす。
コロの仕事は、そういう猫や弱そうな犬を追い払うことだ。
3日目の夕方、薄汚れた姿で少しやつれて帰ってきた。
今度の鳴き方は前より凄い。
私に対して大分怒っているみたいだ。
子供達も普段はそこに居るのかとも言わないのだが、
3日も見てないとなると、少しは気になるらしい。
撫でてやったりしている。
良かったな、コロ!
{支離滅裂な、この態度!}
2度あることは3度ある、のである。
コロのヤツも、うすうす覚悟しているだろう。
今度は丹波の山奥に連れてゆくことにした。
私が近づくと、Oさんに報せようとしているのか、
大きい声で恐がるように鳴く。
しかし、今は買物に行っていない。
季節は夏の盛りを少しばかり過ぎた頃だ。
真冬までには帰って来られるだろう。
コロのヤツは小屋のなかに潜りこんでしまった。
私が、引っ張り出そうとすると軽く咬みついてくる。
それでも無理矢理引っ張り出した。
鎖は自然に切れたように細工しておいた。
{暇な悪知恵オッさん!}
暴れるので手足を括ってダンボール箱に入れた。
ギャンギャン殺されるように鳴くので猿ぐつわを咬ました。
一路丹波路へ。
つづく
あ@仮想はてな物語 新益京の駄犬コロ(3/3)
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そんなに重くはないのだが、
暴れ藻掻くのでハンドルが少し取られる。
しかし、そのうち諦めたのか疲れたのか解らないが静かになった。
途中で手足を解き猿ぐつわも外してやったがもう鳴かなかった。
丹波路は秋に近かった。
稲穂が垂れ下り気味であった。
コロを人気のない山路で下ろしてやる。
コロはホッとしたのか何度も身震いをしながらおシッコしている。
ずっと我慢していたのか長い長いおシッコだった。
少し可哀相になった。
私の方に近づこうともしない私は、数100gの焼肉を置いて
サヤカで走り去った。
コロのヤツは附いて来ようとはしなかった。
しばらく後ろを何度も振り返りながら走ったが、
肉に食らいついて、
その場から離れようとはしなかった。
あれから3ヵ月もたつのに、コロはまだ帰ってこない。
どこをウロついているのだろうか?
野犬になるような悪い犬ではないはずだ。
あちらこちらで餌を貰いながら何とかそのうち帰ってくるだろう。
わが駄犬 寝そべるだけの 日日(にちにち)に
喝のショックを 1(わん)プレゼント
(コロのうた:この姿 明日のアンタの 写し絵よ
腹立てる前に よく見ときなはれ)
ち ふ
この項おわり
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