絵じゃないかおじさん

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あ@仮想はてな物語(逸話) 大和三山 (1/3)

2019-02-04 09:53:07 | 仮想はてな物語 


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 * 大和三山(024)


 冬の寒い晴れ渡った日の朝、
 南大和盆地には靄(もや)が掛かることがある。
 私は、その景色を一度見たいと思っていた。
 そのため、天気予報には特に注意を払っていた。
 土曜日か日曜日の朝であればと願っていた。
 5時起きをしなければならないからだ。
 晴れの日の寒い早朝、目覚ましで起きてはいるのだが、
 なかなか靄は掛からない。
 一冬で数えるほどしか、お目にかかれない。

 不運な(?)ことに、ある月曜日の朝、靄が掛かった。
 私は、Oさんを起こさないように、そっと寝床を抜け出し、
 サヤカを連れ出した。
 近所迷惑になるので、団地のハズレまで手で押して行き、
 エンジンをかけた。
 行く場所は決めてある。
 山の辺の道沿いの小高い丘の上である。
 もう何十回となく行っているので、
 暗闇でもゆけるようになっていた。


つづく




あ@仮想はてな物語   大和三山 (2/3)



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 靄のせいで、ヘルメットは曇るし非常に息苦しい感じがした。
 まだ薄黒白い空気の中を走る。
 丘にたどりついたが太陽はまだ昇ってはいなかった。
 自分の居場所も、はっきりとはわからないが、
 通い慣れた所なので不安はない。


 夜がだんだんと明け始める。
 靄がそれにつれて白っぽく変わってくる。
 そのうち、三山がぽっかりと靄の上に浮き上がってきた。
 左の方から、香具山、畝傍山、耳成山の順に並んでいる。
 青黒い色が白い靄で弱められ別世界を形造っている。
 その下に多くの人々が生活しているとは、
 到底考えられないような風景である。


 その時であった。

 香具山がパッと女性になり畝傍と耳成が男に変わったのだ。
 男二人は剣を持っていた。
 女は両手を合わせて心配そうに二人の様子を見ている。
 男たちの眼は血走り殺気だっていた。
 しかし、何を言っているのか、さっぱり解らない。
 古代語でしゃべっているようだ。


 そうだ!


 サヤカの不可思議な能力を思い出した。
 ガソリンの給油口に耳を当ててみたやっぱり思った通りだ。

 わかる、わかる。

 私は、そこに耳をあて首を傾けて三人の成り行きを
 見守っていた。

 「今日こそは決着をつけよう」
 「望むところだ。来いっ!」

 剣のかち合う音が伝わってくる。
 五分と五分の争い。
 香具山は今にも泣き出しそうな顔をして二人を見守っている。

 そうか!


つづく




あ@仮想はてな物語   大和三山 (3/3)



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 これが、あの三山の争いなのか。
 香具山が女で残りのニ山は男だったのか!

 やはり、私が想像していた通りだ。
 人によっては畝傍が女性という者もいるが、
 私は、名前の響きからして、
 香具山が女性に相応しいと思っている。
 それに男二人が女性をめぐって争うほうが好ましい。
(この偏見! 女性の方すみません)

 香具山の顔は、はっきりとは解らないが、
 私からすると、剣で争うほど美しいとは、
 思われない。


 美女に対する感覚が違うのだろう。
 少なくとも、私だったら争いは避ける。
 けれど二人は必死だ。
 その時、一方の男の耳の辺りから血が噴きだした。
 耳が削がれたのだ勝負はついた。
 香具山は負けた方の男の傍に走り寄って、
 傷口あたりの血を袖で拭ってやっている。


 「こちらにおいで」

 香具山は顔を上げようともしない。

 その時、パアーッと朝日が射してきた。
 それと同時に3人の姿がすっと消えてしまった


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   冬の朝靄 大和ミステリー
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 この項おわり


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