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あ@仮想はてな物語(逸話) 蒲生野紫野にあかねさす (1/3)
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* 蒲生野紫野にあかねさす(045)
あかねさす 紫野行き 標野(しめの)行き
野守(のもり)は見ずや 君が袖振る
額田王 (万葉集・巻1・20)
私は、この歌が好きだ。
紫草は初夏に咲くという。
この歌は琵琶湖の近くの蒲生野で詠まれたものらしい。
蒲生野の野と言っても、今では特定できない。
とにかく、安土町のあたりに行ってみることにする。
24号から京滋バイパスを通って8号に入る。
24号の木津のあたりの渋滞には毎度泣かされている。
バイクでも巻き込まれるのだ。
バイパスもあるにはあるのだが、
いつも見過ごして通りすぎてしまっている。
蒲生郡に入った。
何処でもいい。
走っていれば野もあるだろう。
水田が多かった。
つづく
あ@仮想はてな物語 蒲生野紫野にあかねさす (2/3)
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初々しい早苗を渡る風が心地よい。
昔は一番草と呼ばれた草取りの季節だろうか?
「はじめは浅く、なか深く、終りはそっとなでておけ」でいう、
はじめの草取りにあたる頃である。
田植え後、2週間ぐらいをメドに、
女の人が這いつくばって手で草を取っていた。
今は化学肥料の普及で誰もあんなきつい仕事はしなくなった。
田植えも草取りも、見る分には何とも風情があって
いいものだが、自分がするとなると誰もが嫌がる。
嫌がる仕事を化学肥料と機械に押しつけるのだから、
いつか彼らのしっぺ返しを食らったとしても自業自得だ。
今の所、彼らの反乱を小さくする以外には手はないのだろう。
休耕田の脇にサヤカを止め畦道に腰を下ろし麦茶を飲む。
メットを脱いだ頭を風が撫であげてくれる。
額田王の歌が思い出される。私は、勝手に解釈を施す。
「朝日輝く、紫草咲き乱れる通行禁止の道を、
あなたは、白いバイクで帰ってゆく。
取得禁止通学禁止の掟を破り私の為に、
毎朝毎朝会いにやって来てくれる。
私は高校生。
あなたも。
しかし、二人の通う高校は違っている。
一秒でも一緒にいたい。
話したい。
そんな私の気持を察してか、
あなたは、時間ぎりぎりまで出かけない。
でも時間が迫ってくる。
つづく
仮想はてな あ@仮想はてな物語 蒲生野紫野にあかねさす (3/3)
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あなたは、紫草の咲き揃う通行禁止の公園の近道を通って、
高校へと走り去ってゆく。
少し茶目っ気のあるあなたは、
ハンカチにLOVEと書いて腕に巻いて、
大きく振りかざしながら、遠ざかってゆく。
公園の管理人や交通警官に見つかりはしないでしょうか?
ああ、あんなに手をふって。
大丈夫かしら?
気をつけてね」
主人公は、もちろん、かっての私とOさん。
これは、あくまでも私の想像である。
この歌は、中年のオバはんが詠んだものとは思いたくはない。
私が言う中年とは、二人の男に心を許すような、
垢汚れた人間をさすのだ。
それも一つの生き方だとは思う。
思いはするが、淋しい。
朝日さす ラベンダーの野を 走りゆく
北海原野 君初々しき
ち ふ
この項おわり
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