絵じゃないかおじさん

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あ@仮想はてな物語(逸話) 薬師寺の塔 (1/3)

2019-02-04 13:02:25 | 仮想はてな物語 

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 * 薬師寺の塔(040)


 月が清やかな金曜日の夜だった。
 明日は休みである。
 私が家に帰ったのは7時半。
 Oさんは、まだ内職をしていた。
 私はサヤカに乗りたくなった。

 季節は初秋。
 革ジャンを着て24号に出た。
 一時間半ぐらいで家に帰れるだろうと思った。
 Oさんに「すぐ帰るから」と声を掛けておいた。

 「遅くならないでね」
 晩飯は帰ってから食うつもりである。

 薬師寺の大池に映る月が見たくなったのだ。
 24号では、相変わらずゼロハンに乗った
 ガキどもがウロウロしていた。
 私に挑みかかるような運転をして来るヤツもいる。

 無視! 無視!


つづく


あ@仮想はてな物語 薬師寺の塔 (2/3)


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 ヘルメットを被っていない奴も多い。
 持っていても背中の方に掛けている。
 <>型に脚を曲げている者もいる。
 ヤツらの身体はヤツらのものなのにと思うが、
 どうしようも出来ない。

 無力感を感ずるのみ!

 薬師寺は奈良の西はずれにある。
 西の京とも呼ばれている。
 わが家の方面からは、24号を奈良市街に入る手前で、
 左に折れて数分の所にある。
 その高さ33mの東塔と西塔が、うっすらとシルエットを
掲げている。
 大池は薬師寺のすぐ南にある、その名の通りの池である。
 サヤカを止め池の堤に立つ。

 金堂、西塔、東塔がひっそりと大池に影を落としていた。
 初秋の夜の走りは肌寒いが、
 バイクを下りると少しだけひんやりとして気持がいい。

 小波が表面を覆っている。
 キラッ、キラッと小ネオンのように輝いている。
 静かだ。
 虫の音が、ジィーン。

 ぼんやりと佇む。
 何も考えず、ただ風景に溶けこむ。
 私は、こういう時間も大好きだ。
 自分の存在はあるのだが、己れが人であることを、
 すっかり忘れてしまう。

 そんな時であった。

つづく


あ@仮想はてな物語 薬師寺の塔 (3/3)



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 塔の上部にあるアンテナのような相輪が、
 ぼんやりと浮かんでいる。
 相輪は下の方から、9輪の宝輪、4枚の水煙、竜車、宝珠とから
 なっているという。

 その二塔の相輪の上を、ぴよよーん、ぴよよーんと、
 月が交互に飛び跳ねている、のである。

 まさかと思って顔を水面から上げて、
 二つの塔、その上空にある、
 月を見上げてみたのだが、何も変わりはない。

 だが、再び水面に目を落とすと、
 明らかに、月が跳ねているのである。


 これは何としたことだ!!


 二塔の相輪が、月をピンポン玉にしたてて、
 卓球をしているみたいだ。


 二塔が遊んでいるのか?
 月が飛び跳ねているのか?

 私には、よくは分からないが、何にしろこれは現実だ。
 ヤツらも人知れず、結構楽しんでいるのだな!
 ヤツらの笑い声が聞こえて来そうな夜だった。


 大池や 東塔・西塔 豪快に
  月の羽根つき 長月青夜
                    ち ふ


                 
   この項おわり





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