絵じゃないかおじさん

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あ@仮想はてな物語(逸話) 信楽焼 (1/3)

2019-02-04 07:23:05 | 仮想はてな物語 



逸話(いつわ、英: anecdote)とは、
Wikipediaによりますと、
世間や世人にあまり知られていない興味深い話、
世人の目から逸した(逃れた)話のこと。
のようですが・・・・


これらのお話は、
世間や世人にあまり知られていないと思われますが、
興味深いかどうかは分かりませんお話です。
(傘;傘;) カサ、カサ、よれよれ
(40+40=80)マークです。


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             平成はじめのころです。


 * 信楽焼(044)


 その日は琵琶湖を一周した。
 初夏の風が気持良かった。
 気の早い者はもう泳いでいる。
 何台ものバイクに出会った。
 女の子ばかりのグループもいた。
 湖は、ヨットやウインド・サーフィン、
 水上バイクを楽しむ若者で溢れていた。
 琵琶湖の西岸沿いを走る161号は通行量も多いので、
 よそ見は禁物だ。
 時折、サヤカを止め麦茶で咽喉を潤す。
 夏場はこれに限る。
 旨い。
 じっと湖を見つめていると暑さが気になってくる。
 飛び込んで泳いでやろうかという気にもなってくる。

 湖といえど結構波は高かった。
 途中一回転倒した。
 幸い軽い擦り傷ですんだ。
 砂利でスリップしたのだ。
 湖岸の小道で車は走って来てなかった。
 助かった。
 事故など何処でどう起こるかわからない。
 国道で張り詰めさせた神経が、ポッと弛んだのだろうか?
 湖ばかりに気をとられて、道路の状態に、
 気がつかなかったのがいけなかったのだろう。
 気を抜くとバイクは危ない、危ない。

 奥琵琶湖を走っていると、竹生島の形が、
 いろいろと変わって面白かった。

 絵ハガキなどとは、全然違った形に見えるのだ。
 ゆっくりと時間をかけあちらこちら見学しながら、
 走れば良いのだろうが、
 私は、一周するのが目的である。

 強いて言えば、サヤカに一周感覚を植えつけるとでも言えば
 当たっているのだろうか?
 そんなところだ。

 東岸は8号線である。
 賎ケ岳・長浜・彦根などを通り瀬田まで帰ってきた。
 出発地点である。
 午後の8時を過ぎていた。
 琵琶湖の夕日を見たかったのだが、
 道に迷ったので主に8号ばかり通った。
 やったという満足感を味わう。

 後は家に帰るのみ。
 信楽を通って木津で24号に入るつもりだった。
 その道に入った時には車もかなり走っていたのだが、
 1台・2台と居なくなり、
 30分も走ると、私一人になってしまった。

 人家などロクに無い真っ暗な山道であった。
 道が舗装され白線が引かれているのが、
 せめてもの救いである。

 何とも心細い。
 その内、軽自動車が後から来たので追い越させ、
 後を付いてゆこうと思ったのだが、
 すぐに脇道に消えてしまった。
 ハンドルにしがみつき前方だけに注意を集中する。

 まだその時にはサヤカが話をする事など、
 夢にも知らなかったから、
 まったくの一人であった。
 泣きたくなるような気持になってくる。

 家まで後どのくらいで帰れるのだろうか?
 Oさんも心配しているかもしれない。
 でも、夜道の知らない道。
 事故など起こしては元も子もない。
 徐行運転に努める。
 遅くとも走っていれば、前に進む。
 進めば帰れる。
 単純な原理である。

 どんな道でも、何100キロ離れていても、
 わが家の玄関まで、
 一本の線で繋がっているからである。
 その糸を頼りに走るしかない。

 そんな道路のヘッドライトの先端に、
 何かがいっぱい蠢いているのに気づいた。
 今更引き返す訳にもゆかない。
 おそるおそる進んでよく見ると、それは狸の焼き物だった。
 中狸、小狸が挙って踊り狂っているみたいだ。

 ヤツらは、私に気が付いているのか、いないのか、
 道路を占領して道を開けようともしない。
 私は、ヤツらがあまりに小さいので恐くはなかった。
 しかし、どうしていいのか分からなかったので、
 サヤカを止め彼らの様子を見ていた。


 そのうち、その中の目付きの悪そうな中狸が、
 私をキラリと睨んだ。
 サヤカのヘッドライトに目玉がまともに反射したのだ。
 ぞおーっと背筋が縮み込む。
 それにつられたのか、
 何10匹もの焼き狸の目が、キラーッと光った。
 生きた心地はしない。

 どうされるんだろう?



つづく

あ@仮想はてな物語 信楽焼 (2/3)


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 そのなかの一匹が、
 サヤカの荷台につけてある土産物を指差して、
 何か言っているようだったが、
 私には、何のことだか分からなかった。


 それは近江八幡で買った水茎焼のコーヒーカップであった。
 Oさんへの大事なお土産である。
 ヤツがそれを引っ張り取ろうとする。

 渡してなるものか!

 私は必死で押さえる。
 ヤツらが、次々と私に襲いかかってきた。
 こちらは、革ジャン・革ズボン・革手袋にロングブーツで、
 身を固めている。
 夏と言えども夜間用にいつでも持っているのが幸いした。
 ヤツらも歯が立たないようだ。
 メットに飛び乗って滑り落ちるヤツもいる。

 私は、もうこうなったら何が何でも、
 これをOさんに手渡してやろうと意地になって、
 抱え込んでやった。
 そのうち、サヤカのバランスが崩れて狸ともども
 倒れてしまった。

 その時、

 [一同全員、ヤメー!!]

 ドスの利いた太い声が聞こえた。
 狸どもが離れてゆく。
 人の声が聞こえたので、ヤレヤレと思った。
 声のする方を見た途端、これまたびっくり。

 ナ、ナンダ!!

 一難去ってまた一難。
 どでかい大狸が、デデーンと道路そばの広場に、
 仁王だちに立っているではないか。
 あんなヤツに一撃されたら、ひとたまりもない。

 [これ、そこのオッさん]






つづく

あ@仮想はてな物語 信楽焼 (3/3)


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 アンタに、オッさん呼ばわりされるほど年食って無いぞ、
 この古狸!
 と思うが、身体はブルブル震えていた。

 [今時、見上げた心掛け。天晴れ! 天晴れ!]

 何のことだか、訳が分からない。

 その大狸によると、

 今どきコーヒーカップに命を張るヤツも珍しい。
 そのカップもワシラも同じ焼き物仲間。
 何処に連れていかれるのか、わからないので、
 子分どもが助けようとしたのだ。
 しかしながら、日が昇ればワシラは動けなくなる。

 結局は今助けてやったとしても、カップは何時かは
 誰かに買われてゆく運命にある。
 それならば、お前のような者に連れていってもらったら、
 きっと大事に使ってくれるだろうから、彼女も幸せだろう。

 必死にしがみついている姿を見てそう感じた。
 連れて行ってくれ。
 そして、大事に使ってやってくれ。
 何か困った事が起きたら、いつでも相談にのってやる。
 気に入ったぞ、

 というような事であった。

 片腹痛い。
 私は、ヘソクリで買ったOさんへのお土産を、
 取られたくなかっただけだ。
 ?千円もしたものだから執着しただけだ。
 ヤツらが小さかったので見縊っていたこともある。

 大狸を見ていたら、ボオーッとつっ立って、
 為すがままにされていたであろう。
 運が良かったのだ。
 これで大狸とも縁が出来たし。

 サヤカを起こして家路についた。
 標識には信楽と出ていた。
 もう恐いものは何も無かった。
 大狸が後に付いていてくれていると思うだけで、
 気持が何10倍にも大きくなっていた。


 信楽の 愛敬狸の 道の番
   深夜の走りに 徳利サイン
                      ち ふ

           
 この項おわり








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