最高高度の宿泊地、ゴラクシェプのロッジを後にする ( 4/6 8:20)
エベレスト街道トレック(23) トレッキング時の体調 Everest Trail Trek (23) Physical conditions during Trekking
トレッキング期間:2015年3月28日 - 4月10日 (カトマンズ発着ベース:往路9日間、帰路5日間、計14日間)
エベレスト街道トレッキングへの挑戦に際して、一番心配したのは“高山病”でした。高度4,000m超える高地を5-6日間歩き、最終目的はエベレストを間近に見られる高度5,550mのカラパタールに登ることでした。これは、私にとって未知の世界です。
その他、往路だけでも約10日間も登り続ける体力があるかどうか、膝痛が発生しないか、現地の食事事情による下痢や腹痛、さらには寒さへの備えが十分かなどの問題などでした。
以下、今回のトレッキングで経験した出来事を、個別に説明します。
1. 高山病
結果的に、高山病にはかかりませんでした。
①個人でガイドを雇い、マイペースを保ってトレッキングをしたこと、②3,500m以上の高地では事前トレーニングで習得した呼吸法を実行したこと及び禁酒をしたこと、③更に高度4,000m以上の高地では高山病予防薬のダイヤモックスを服用したことなどが予防に効果があったと思っています。
ところで、日本登山医学会の情報(http://www.jsmmed.org/info/pg51.html )によりますと、高山病と酸素飽和濃度SPO2とは相関関係があり、“下界ではSpO2 が90%を割ると酸素吸入も考える、80%を下回ると危ない。”と言われています。高山病について理解を深めるために、事前に㈱ミウラ・ドルフィンズのラボで低酸素室トレーニングを受けて、SpO2と体感との関係を認識しました。SpO2と言う指標の重要さに留意して、トレッキング時にパルスオキシメーター(シースター株式会社製)を持参することにしました。
実際のトレッキング中に測定したAPO2の結果は、記事末尾の表に記した通りです。
2. 体力(持久力)
トレッキング時の体力については、背負うリュックの重さと疲労度との間に大きな相関があることを思い知りました。私がエベレスト街道トレッキングを依頼した旅行会社では、荷物10kgを背負うポーターを兼ねたガイドを同行させてくれました。しかし、私が携行したリュックは、一つは重量が約10kg、もう一つは7-8kgでした。つまり、私は7-8kgの荷物を背負うことになります。防寒具、シュラーフ、軽アイゼンなどを持たねばならないので、このような重量になりました。
トレッキングの初日は半日の行程でありかつ下り坂だったこともあり、特に異常な疲れを感じませんでした。しかし、2日目の行程はかなりきつい登り道でした。従って、途中のジョルサレでポーターを雇って身軽になったので、富士山の8合目に相当するナムチェ・バザールまで歩き切ることができました。その後も、行程の厳しさに応じ、随時ポーターを雇って、疲労の過剰な蓄積を何とか防止することができました。
帰路では、ペロチェからキャンジュマまで 13時間歩き続けたときにはグロッキー状態になりましたが、それ以外は特に深刻な身体の消耗はなく、全工程を踏破することができました。
3. 下痢等の防止
誰もが実施しているように、トレッキング中は常に十分なミネラル・ウオーターを携行して水分補給をし、休憩時は主に紅茶を飲みました。さらに、ナムチェ・バザールで出会った下山中のカナダ人女性トレッカーのアドバイスに従い、第3日目以降はソーセージなどの加工品も含めて肉類を食べないことにしました。つまり、ベジテリアンに徹しました。また、万一に備えて、予め東京の病院で下痢止め薬のセットを処方してもらい、現地に携行しました。
結果的に、一時的に便秘を経験した程度で、下痢などに悩まされることはありませんでした。
4. 寒さ対策
この点につては、残念ながら誤算がありました。
その一つは、客室には全く暖房がないことを知りませんでした。4,000mを超えるロッジでは、室内に置いてあるミネラル・ウオーターも凍るほどの寒さです。夜、シュラーフに入っても冷えた足がなかなか温まらず、眠りに入ることが出来ませんでした。ホット・バッグと呼ばれる湯たんぽを貸してくれる宿もありますので、その様な場合は必ず利用しました。
全く暖房がない寒々としたロブチェ(4,910m)のロッジの個室
もう一点は、ナムチェ・バザールでの出来事です。夕食の頃から悪寒に襲われて体の震えが止まらず、風邪を引いてしまいました。体温は、平熱よりも2℃も高くなっていました。原因は、汗で湿った下着を夕食前に着替えなかったことと推測しています。その後は、必ず目的地に到着の都度、速やかに着替えをしました。 尚、この風邪の症状は、翌日にほぼ回復したので、スケジュールには支障がなかったのは幸いでした。
最後に、最も残念だったのは、第10日目の出来事です。夜明け前の午前4時にゴラクシェプの宿を出て、日の出のエベレストを眺めるために、カラパタール山に登った時です。登るにつれて、手や足がどんどん冷えてきました。特に手の指は、凍傷寸前の状態になりました。推測では、マイナス20℃くらいだったのでは思います。5,300m付近に達した頃に夜が明け、エベレストの雄姿を仰ぎ見たときは感激しましたが、一方で指先は無感覚になっていました。凍傷になるととんでもないことになりますので、頂上まで登ることはあきらめました。その時は、使い慣れたスキー用の防寒手袋を着用していたのですが、それでは不十分でした。薄手のウール手袋を内側に重ねて着用するとか、ホッカイロなどを持参すればよかったと反省しています。
表 エベレスト街道トレッキング中のSPO2(酸素飽和濃度)の実装結果
(注)*印は、写真添付。 O2濃度=飽和酸素濃度
日付 |
測定場所(高度) |
時刻 |
O2濃度/脈拍数 |
当日の行動 |
3/28 |
ルクラ (2,840m) タド・コシ付近 (2,580m) パクディン (2,610m) |
9:40 11:30 13:30 |
86 / - 90 / 87 88-92 / 85-87 |
カトマンズ 8:10 → ルクラ* 8:40 飛行機で移動 ルクラ 9:40 → パクディン 13:30 トレッキング |
3/29 |
パクディン モンジョ (2,835m) ナムチェ・バザール (3,440m) |
7:00 12:00 16:40 |
65-74/ 90-93 89-90/101-102 80-85/100-106 |
パクディン 8:00 → モンジョ 12:00 → ジョサレ 12:30 → ナムチェッバザール 16:40 ※この日の夕方、風邪を引いたらしく寒さで震えた。体温は37.3℃。 |
3/30 |
ナムチェ・バザール |
7:10 |
86-90 / 77-81 |
高度順応日。空は雲が厚く周りの山は見えなかったので、午前中、郊外のシェルパ文化博物館を見学した。 ※朝の体温は、36.2℃に下がっていた。 |
3/31 |
タンボチェの手前 タンボチェ (3,860m) |
15:50 17:40 |
89-90 / 93-101 84-88 / 79-84
|
ナムチェ・バザール 8:00 → エベレスト・ビューポイント* 9:40 → キャンジュマ 11:00 → プンキ・テンガ 12:30 → タンボチェ16:30 ※夕方の体温は35.3℃(17:40)、35.6℃(20:40)。 |
4/1 |
ショマレ (4,010m) ディンボチェ (4,410m) |
13:40 18:00 |
81-86/ 82-88 80-86 / 75-80 |
タンボチェ 8:00 → デボチェ* 8:40 → パンボチェ 11:00 → ショマレ 12:50 → ディンボチェ 16:30 |
4/2 |
ディンボチェ |
6:30 |
77-86 / 69-72 |
高度順応日。9:30 - 15:00 チュクンの入口までハイキング。 ※この日の夕方より、ダイヤモックスの服用を開始。 |
4/3 |
ディンボチェ トクラ(4,620m) |
7:10 13:00 |
88 / 71-74 79-86 / 67-73 |
ディンボチェ* 7:40 → トクラ 11:45 ※高度が高いので、ユックリペースで登行。明後日まで同様。 ※午後、近所の山を約1時間ハイキング。 |
4/4 |
トクラ ロブチェ(4,910m) |
7:40 18:30 |
70 / 76 87 / 76 |
トクラ 7:30 → ロブチェ 12:50 ※午後、近所の山を約1時間ハイキング。 |
4/5 |
ゴラクシェップ(5,140m) |
12:00 16:00 |
79-86 / 71-74 77-86 / 66-69 |
ロブチェ* 7:00 → ゴラクシェプ 12:00 午後、ベース・キャンプの途中までハイキング。 |
4/6 |
ロブチェ ペリチェ(4,240m) |
13:20 20:00 |
81-87 / 71-82 81-84 / 71-72 |
4:00 – 6:30 カラパタールの中腹(約5,300m)まで登行。 ゴラウシェプ* 8:15 → ロブチェ 12:20 → トクラ 15:00 → ペリチェ 17:15 |
4/7 |
キャンジュマ(3,550m) |
21:00 |
86-91 / 72-77 |
ペリチェ 7:00 → ショマレ 10:00 → タンボチェ 13:00 → プンキ・テンガ 16:00 → キャンジュマ 18:00 ※この日は13時間も歩き続け、疲労困憊の極みに達した。 |
4/8 |
キャンジュマ モンジョ (2,835m) |
8:00 20:00 |
94 / 64-66 93-95 / 68-77 |
キャンジュマ 8:40 → ナムチェ・バザール 10:40 → モンジョ 15:50 ※昨日の疲労感が残っていたので、朝リポビタンを飲んだ。 |
4/9 |
モンジョ ルクラ |
6:20 15:30 |
93-98 / 59-62 94-96 / 70-74 |
モンジョ 7:00 → ベンカール 9:00 → パクティン 10:00 → タド・コシ 12:00 → チェプルン 13:50 → ルクラ 15:00 |
4/10 |
ルクラ |
6:00 |
93-98 / 61-63 |
ルクラ 8:30 → カトマンズ 9:00 飛行機で移動 |
3/28 8:40 ルクラ空港に到着、白雪を抱くコンデリ山を見て感激。
3/31 9:40 エベレスト・ビューポイントにて(矢印はエベレスト)
4/1 8:40 アマダブラムを背景にして(デボチェ付近)
4/4 8:00 タボチェを背景にして(タンボチェ出発30分後)
4/5 9:30 クンブ氷河を背景にして(ロブチェからゴラクシェプへの途中)
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