「ポーチュラカとスベリヒユとマツバボタン」シリーズの第5回目です。顕微鏡でポーチュラカとマツバボタンの葉の断面を観察したのでそれを報告します。
比較対象としてマツバボタンとよく似た肉厚の葉をもつマツバギクも調べました。マツバボタンとマツバギク(ハマミズナ科 デロスペルマ属)の断面構造に違いはあるのでしょうか。
最初にマツバボタンの葉の断面です。薄く切って顕微鏡で観察しました・・
マツバボタンの葉は細長い棒状で多肉質の葉を持っているので葉の断面も楕円状です。C4植物に特徴的なクランツ構造が見られます。葉の一周をぐるりと取り囲んだ感じ、二つ並んだところだけ見ると目玉模様?。中心の目玉の部分が維管束鞘細胞の葉緑体が集まった部分で、周りの放射状の緑の部分が葉肉細胞です。C4植物、クランツ構造などの語句の解説は一番最後にまとめてあります。
次に比較対象のマツバギクです。
今回用いたのは、花色が紅紫色の品種です。高温や乾燥に強く低温にも耐えて比較的丈夫な植物なので、各地の庭先や道路沿いに半野生化しているのをよく見かけると思います。葉はマツバボタンより太くてやや大型ですが雰囲気はそっくりです。
葉の断面はというと・・
このようにクランツ構造は見られず、葉緑体を豊富に含んだ柵状組織が外周を取り囲んでいました。マツバギクはC4植物ではなくC3植物なのでクランツ構造がありません。
次にポーチュラカの葉の断面です・・
ポーチュラカはマツバボタンと同じスベリヒユ科でクランツ構造を持っていますが、葉が平たいので一列に並んだ構造です。維管束鞘細胞の周りに葉肉細胞が一列放射状に並んでいるのがよくわかります。
次にC4植物として知られているトウモロコシの葉の断面です。たまたま家庭菜園でトウモロコシも育てていたのでこの葉も観察しました。
こちらのクランツ構造も密に並んでいるのがよくわかります。写真の上が葉の表側です。トウモロコシは葉の表側の方に毛が生えてザラザラしています。葉の上に乗っている丸い粒は花粉でしょうか?雄花が終わってだいぶ経っていますが葉上に長期間とどまることもあるようですね。
語句の説明
- クランツ構造について
C4植物の葉組織に特徴的な構造で、維管束を葉緑体を含む維管束鞘細胞が取り囲み、さらにその外側を1層の葉肉細胞が放射状に取り囲むという構造です。この構造が花冠に見えることからドイツ語の花冠を意味するクランツ(Kranz)と呼ばれています。
- C4植物
葉の内部で二酸化炭素を濃縮させる光合成様式です。この機能により光合成の律速段階になる二酸化炭素の供給量を増やせるので、光線の強い地域や乾燥で気孔を最大に開けられない状況でも光合成効率が高くなります。具体的には葉肉細胞で炭素3個の化合物のホスホエノールピルビン酸(PEP)に 二酸化炭素からの炭素を仮固定して炭素4個のオキサロ酢酸を生成します。炭素(C)が4個の化合物を作るところからC4植物と呼ばれています。その後、維管束鞘細胞に運ばれてそこで二酸化炭素が再放出され、維管束鞘細胞内の葉緑体でカルビンベンソン回路による炭酸固定に用いられるという仕組み。二酸化炭素を放出した炭素3個の化合物は再び葉肉細胞に戻されPEPとなって二酸化炭素を結合するのに用いられます。すなわち葉肉細胞は、二酸化炭素をどんどん維管束鞘細胞に送り続けてその濃度を上げられるので光合成効率が高められるのですね。
このように葉肉細胞と維管束鞘細胞の関係が強く水供給や物流にも都合の良い維管束周りにこの構造ができたのでしょう。
今回、都合によりスベリヒユは観察しませんでした。おそらく、ポーチュラカと同じようなクランツ構造が観察できるはずです。特記することはないとは思いますが時間がある時に顕微鏡で見ておきますね。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます