
下の写真は、過去レポートした「カランコエの花色・直射日光下と室内の違い」の時に示しました。
写真左上が室内栽培(レースカーテン越しの外光)の一重咲き、左下が室内栽培の八重咲き 右上ができるだけ直射日光を当てての一重咲き、右下が同八重咲き。
今回、オレンジ色への変色を担う色素は何かを検討しました。
まずは、花弁の断面を顕微鏡で見てみると・・
上の写真で上半分は、直射日光下で栽培した花から、下半分は室内で栽培した花から花弁を取って断面にして顕微鏡で見てみました。
直射日光下で栽培したものでは、花弁表側の表皮に赤色の色素が溜まっていました。それより下の層では明らかな赤い色素はないように見えました。一方、室内栽培のレモンイエローの花では、赤色の色素は見られませんでした。レモンイエローを担う黄色い色素は円錐形の表皮より下にある細胞に存在しているように見えました。断面試料が上手に作れなかったため、はっきりした画像でなく断言できませんが・・
次に、その色素の特徴を調べるために、クエン酸水とセスキ炭酸ソーダ水で酸・アルカリテストをしてみました。
上の黄色は室内栽培のレモンイエローの花弁を、そして下の赤紫は直射日光栽培のオレンジ色の花弁を濾紙に叩き出したものです。オレンジ色の花弁を用いても叩き出すと濾紙は赤紫色に着色しました。
左はセスキ炭酸ソーダ水作用させ、右はクエン酸を作用させました。すると、上のレモンイエローの叩き出しでは酸、アルカリでほとんど変化せず、オレンジ色の花では、セスキ炭酸ソーダ水で緑色、クエン酸水で鮮やかな赤に変色しました。これにより、オレンジ色の花では、アントシアニンが合成されたと推測できました。
オレンジ色の変化が小さかった八重咲きの方も調べてみました(写真にはありません)。八重咲でも、直射日光栽培ではセスキ炭酸ソーダ水で緑色、クエン酸水で赤色に変色しました。ただし、発色は薄く、色素量は一重に比べて少ないとわかりました。多い花弁によって陰を作り合い光ストレスが低いのでアントシアニン色素合成が減るのかも。しかし、それだけでは説明できない感じ。品種差でしょうか。
【まとめ】
- 黄花のカランコエを直射日光下で育てると、花色がオレンジ色に変化します
- それは、花弁の表側表皮に赤色のアントシアニンが蓄積するためです
- 元々の黄色い色素は、表皮細胞以外にも存在するように見えました
- 黄色の色素と表皮に貯められた赤色アントシアニンが足し合わされてオレンジ色に見えるようになります
- 色の変化の少ない八重咲きでも直射日光下栽培すれば色素量は一重に比べて少ないもののアントシアニンが作られます
- カランコエはアントシアニン色素も持つことができるので、黄色はカロテノイド色素であると考えられます
- 他の植物でも見られたように、直射日光下でアントシアニンを貯め始めたことから光ストレスに対抗しているのかもしれません
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