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11月B定期(サンティ指揮)

2009年11月25日 | N響公演の感想(~2016)
11月25日(水)ネルロ・サンティ指揮 NHK交響楽団
《2009年11月Bプロ》 サントリーホール

【曲目】
1.ベートーヴェン/歌劇「フィデリオ」序曲
2.ベートーヴェン/交響曲第4番 変ロ長調Op.60
3.ベートーヴェン/交響曲第6番 ヘ長調Op.68「田園」


2年前のB定期に続き、今回のサンティのBプロもベートーヴェンプロ。その幕開けを飾った「フィデリオ」序曲は草原を颯爽と駆け抜ける駿馬のごとし。ツヤのある引き締まった四肢が隆々とした筋肉を波打たせて走って行く。そのスピード感、前へ前へと進む力強さで聴き手をグイグイと惹きつけて行く。サンティはその馬に跨るベテランの名うての騎士のごとく、巧みな手綱捌きで勢いを自在にコントロールする。そのタイミング、呼吸が実に見事でまた味がある。こうなると続くシンフォニーが大いに楽しみ。

第4シンフォニーの序奏はまるで嵐の前の静けさのように空気が止まり、時おり湿った生温い微風がその空気を揺する。そこに力強く充実した響きと勢いでトゥッティが強烈に鳴り響く。そして現れた第1主題の颯爽とした姿はさっきの「フィデリオ」序曲の感動の再体験!くっきりした明るい音、みなぎる躍動感、溢れる生命力… サンティが名匠であることは間違いないが、これまでの経験でベートーヴェンのシンフォニーでの超名演は期待していなかったのだが、その「超名演」が今まさに生まれている瞬間に居合わせている気分。

しかし結果的にはこの第1楽章が全曲を通して飛び抜けて感動的で、横川さんのクラリネットの惚れ惚れする歌が聴けた第2楽章も良かったが、続く第3、第4楽章は始めの勢いが少々失速し、テンションも持続力が足りないように感じ、自分の中での「超名演」のイメージには正直全く届かなかった。

後半の「田園」はそんなわけでちょっと気落ちして迎えたからという訳ではないのだろうが、悪くはないがやっぱり乗れてない感じ。第1楽章終盤の盛り上がり、サンティならもっと煽ってもよさそうなところも普通に過ぎたし、第2楽章でも弦がたっぷり呼吸して思いっきり歌い上げて欲しいところもあっさりと過ぎた。これは明らかにサンティが抑制を効かせているとしか思えない。それでも第3楽章の「いなかの人々の楽しいつどい」こそサンティらしい底抜けに楽しい踊りを聴けると思いきや、とても調和の取れたお行儀の良い踊りだった。サンティの古典ものでオペラ的な要素を期待し過ぎるのはお門違いと、2007年のベートーヴェンプロを思い出せば気づくのだが、それにしてもこれは凡演では…?

それが第4楽章の「雷と嵐」でググッとテンションが上昇、とても凝縮された勢いが戻ってきて思わず身を乗り出した。そして迎えた終楽章は喜びに満ち溢れた、ウキウキワクワク気分いっぱいの素晴らしい演奏となった。♪♩~♪♩~のリズムが心浮き立つようにスウィングし、聴き手の気分をどんどん盛り立てる。音楽は最高潮に達し、その命溢れる響きのシャワーを全身で浴びてるうちに感動で胸がいっぱいになって目を開けていられなくなり、閉じた目には涙までじわりとしみてきた。「こういうサンティの「田園」が聴きたかった!」とまさに言える「田園」。松崎さんの名ホルンをはじめ、N響の貢献度も文句なし。最後がどんなに良くても前半が冴えないとなかなか感動できないことが多いが、今日は最初からずっと心魅了され続けていたように思えてしまうぐらいの満足感で満たされた。

そう思うと余計に第1楽章や第2楽章の演奏に疑問を感じないでもないが、満面の笑顔をN響にも客席にも向けるサンティを見ていると「終わりよければ全て良し!」と思えてしまった。

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