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2014年4月B定期(ネーメ・ヤルヴィ指揮)

2014年04月24日 | N響公演の感想(~2016)
4月24日(木)ネーメ・ヤルヴィ指揮 NHK交響楽団
《2014年4月Bプロ》 サントリーホール


【曲目】
1. R. シュトラウス/祝典前奏曲 Op.61
2.R. シュトラウス/紀元2600年祝典曲 Op.84
3.R. シュトラウス/バレエ音楽「ヨセフの伝説」Op.63

久々のN響定期は、マエストロ、ネーメ・ヤルヴィ指揮で、今年生誕150年のシュトラウスプロ、とは言っても馴染みの曲が一つもない。B定期らしいと言えばらしいのだが・・・

前半の2曲は国家的一大祭事のために委嘱されたいわゆる「おめでたい」曲。この手の音楽には名曲はあまりないという先入観があるが、やっぱりこれはちょっとヤバい。どちらもオルガンまで加わった超大編成で、シュトラウスならではのゴージャスなサウンドを惜し気もなく繰り広げる。

最初の「祝典前奏曲」は「歓喜の凱旋」なんて名前を付けたくなるおめでたい音楽。日本政府の委嘱で書かれた次の「紀元2600年祝典曲」の方は、お寺にあるでかいりんを並べたりして異国情緒を演出。不安げなシーンなんかも出てくるが、結局それを打ち破って高らかな勝利の凱歌をぶち上げる構図で、これもやっぱり「ご馳走さまでした」的な曲。N響はよく鳴るし、下品になることもないのはさすがだが、これ以上はやりようがない。

後半の「ヨセフの伝説」は今までに多分一度も聴いたことはない。おまけに演奏時間は1時間もかかるというので覚悟を決めた。曲目解説によると、聖書の創世記を官能的にアレンジした物語に付けたバレエ音楽、ということで前半よりは期待が持てそうだったが、これが予想以上の素晴らしい音楽で、演奏もお見事だった。

休憩時間に読んでおいたバレエのストーリーを、音楽を聴きながらイメージすることは殆どできなかったが、これは音楽だけで十分に訴えかけてくる。前半のおめでたいだけの音楽とは打って変わって、バレエならではのリズムの躍動あり、室内楽的なアンサンブルの妙あり、柔らかく奏でる歌もあれば、管弦楽の大饗宴もある。実に変化に富み、魅力的な旋律も満載の宝箱のような音楽だ。

そして素晴らしかったのがヤルヴィ/N響の演奏!今どの場面かといったストーリーとは結びつけられなかったが、バレエでダンサーがフワリと跳躍したり、軽々とリフトして踊ったりといったシーンがひとつひとつ目に浮かび、ダンサー達の呼吸や動きが、薫りを伴って伝わってくるよう。小編成でアンサンブルを奏でるシーンでの、ソロ楽器達が呼び交わす歌も素敵だ。伸びやかで透明感があり、歌がある。歌と言えば弦のアンサンブルの妖艶な魅力を湛えた歌に心を奪われた。マロさんが色気たっぷりにソロを奏でたところだけは、ポティファルの妻がヨセフを誘惑する場面だな、とわかった。

そして、シュトラウスがここぞと力を入れたであろう、大編成のオケが総動員となるシーン、ここはマスゲームのようにビシッと揃って突き進めばいいというタイプの音楽とは異なり、様々なテクスチュアが折り重なり、いろいろな動きが同時進行していくアクロバット的な音楽。それらの異なる要素が実に滑らかに有機的に連なっていく。バレエに例えれば、大勢のダンサーがそれぞれに別の動きをしつつ、それらが全体から見ると見事に統制されたアンサンブルを形成しているという感じ。ヤルヴィの棒が冴え、鮮やかで瑞々しく、活き活きと息づいている。聴いているとうちに意識が覚醒して、どんどん演奏に引きずり込まれて行った。終盤で音楽が益々盛り上がると、サウンドもいっそう輝きを増し、最後のほうでは黄金の光を放っているように感じたほど。「すごい!」としか言いようがない大団円のフィナーレ!ヤルヴィの手腕と、N響のプレイヤーの力量+合奏力がフルに発揮された名演となった。

この「ヨセフの伝説」は、コンサートのメインの曲目として、ボリューム面でも質でも大変優れていて、「英雄の生涯」とか「ドン・キ・ホーテ」と並んで演奏会でもっと取り上げられる価値のある曲だと思ったが、それは今夜のような演奏があってこそのことなのだろう。これは是非N響のお箱としてレパートリーに加えて欲しい。

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