11月26日(木)原田慶太楼 指揮 NHK交響楽団
サントリーホール
【曲目】
1.バーンスタイン/「オン・ザ・タウン」─「3つのダンス・エピソード」
2.G.ウォーカー/弦楽のための叙情詩
3.ピアソラ/タンガーソ(ブエノスアイレス変奏曲)
4.コープランド/バレエ組曲「アパラチアの春」
5.マルケス/ダンソン 第2番
11月のN響も、本来定期会員として聴く予定だった同じ日に同じ席で聴いた。でもこれは内容で選んだ結果。指揮者の原田慶太楼のことは、原田が様々なアーティストを迎えるラジオのトーク番組で知った。アメリカでの生活が長いせいか、ルー大柴顔負けのきれいな発音で会話のあちこちに英語を散りばめ、物怖じしない話し方がちょっと鼻につくが、指揮者としての活躍も目覚ましいようだし、このアメリカ音楽を特集したプログラムが面白そうだったのでこれを聴くことにした。
原田の指揮は実際抜群のセンスが光り、曲のキャラクターになり切って、濃厚な歌も気おくれすることなくエンターテインメントとして徹底的に歌わせ、N響から切れと冴えのある艶やかで輝かしいサウンドを引き出し、ノリノリの演奏でお客を楽しませた。
それは最初のバーンスタインからビンビン伝わってきた。ご機嫌なジャズのセンスもふんだんに、パンチの効いた底抜けに楽しいバーンスタインの遊び心が炸裂した。それに加えて郷愁や哀愁も感じさせ、最初から原田/N響は聴衆の心をすっかり捉えてしまった。
続くウォーカーの「弦楽のための抒情詩」は、一転してノスタルジックな心温まる世界。美しすぎる音色のN響弦楽セクションによる暖かくて親密な歌が奏でられると、大切な身内の告別式を済ませたその晩にコンサートを聴いている身として、そのことがずっと思い出され、涙が込み上げてきた。原田は人の心に熱く優しく訴えてくるハートも持つ指揮者だ。
後半はピアソラから。プログラムノートに、ピアソラは「正統的なクラシック音楽作曲家でもあった」と記されていて、この「タンガーソ」はそんな一面を如実に示していた。緻密で濃密で熱い本格的な多声楽曲の導入部から、やがてピアソラらしいタンゴが聴こえてくるが、手を変え品を変え、様々なテクスチャーを織り交ぜた音楽は少々盛りすぎ、やり過ぎの観ありで、焦点が定まらない印象だった。
続くコープランドの「アパラチアの春」は今夜の白眉。音楽も演奏もとにかく美しい!薄いヴェールを一枚一枚剥がしていくようなデリケートな美しさ。天上的で哀しいほど透明で、薄明のなか、ノスタルジックな寂寥感を誘う。クラリネット、オーボエ、ヴァイオリン、フルート、ファゴットなどのソロ楽器による歌が詩情を湛える。いつまでも静かに浸っていたい気分になった。この曲もピアソラ同様に様々な手法が用いられているが、全てが有機的に繋がっていて必然性を感じた。愛聴曲にしたい一曲。そして聴くときはこの原田/N響がいい(レコーディングがあるのか、ステージにはマイクが沢山セッティングされていた)。
最後はマルケスの「ダンソン第2番」。これは冒頭のバーンスタインの曲とシンメトリックに呼応したノリノリのビッグバンドナンバーという感じ。原田もバンドの指揮者のように全身を使って音楽を表現。パンチが効いて、ご機嫌なリズムとノリで聴いていて自然と体が揺れる。ソロもみんな役者になり切って最高のパフォーマンスを演じた。こういう楽しい演奏に細かい感想は不要だろう。終わったとき、声かけ禁止が恨めしい気分になった。
原田慶太楼はどんなタイプの音楽でも、その聴かせどころに的確に焦点を当て、おいしいところを本当に美味しく味わわせてくれる才能の持ち主だと感じた。この先、大いに注目して行きたい。
NHK交響楽団 10⽉公演 サントリーホール(鈴木雅明 指揮)2020.10.29 サントリーホール
N響公演の感想タイトルリスト(2017~)
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1.バーンスタイン/「オン・ザ・タウン」─「3つのダンス・エピソード」
2.G.ウォーカー/弦楽のための叙情詩
3.ピアソラ/タンガーソ(ブエノスアイレス変奏曲)
4.コープランド/バレエ組曲「アパラチアの春」
5.マルケス/ダンソン 第2番
11月のN響も、本来定期会員として聴く予定だった同じ日に同じ席で聴いた。でもこれは内容で選んだ結果。指揮者の原田慶太楼のことは、原田が様々なアーティストを迎えるラジオのトーク番組で知った。アメリカでの生活が長いせいか、ルー大柴顔負けのきれいな発音で会話のあちこちに英語を散りばめ、物怖じしない話し方がちょっと鼻につくが、指揮者としての活躍も目覚ましいようだし、このアメリカ音楽を特集したプログラムが面白そうだったのでこれを聴くことにした。
原田の指揮は実際抜群のセンスが光り、曲のキャラクターになり切って、濃厚な歌も気おくれすることなくエンターテインメントとして徹底的に歌わせ、N響から切れと冴えのある艶やかで輝かしいサウンドを引き出し、ノリノリの演奏でお客を楽しませた。
それは最初のバーンスタインからビンビン伝わってきた。ご機嫌なジャズのセンスもふんだんに、パンチの効いた底抜けに楽しいバーンスタインの遊び心が炸裂した。それに加えて郷愁や哀愁も感じさせ、最初から原田/N響は聴衆の心をすっかり捉えてしまった。
続くウォーカーの「弦楽のための抒情詩」は、一転してノスタルジックな心温まる世界。美しすぎる音色のN響弦楽セクションによる暖かくて親密な歌が奏でられると、大切な身内の告別式を済ませたその晩にコンサートを聴いている身として、そのことがずっと思い出され、涙が込み上げてきた。原田は人の心に熱く優しく訴えてくるハートも持つ指揮者だ。
後半はピアソラから。プログラムノートに、ピアソラは「正統的なクラシック音楽作曲家でもあった」と記されていて、この「タンガーソ」はそんな一面を如実に示していた。緻密で濃密で熱い本格的な多声楽曲の導入部から、やがてピアソラらしいタンゴが聴こえてくるが、手を変え品を変え、様々なテクスチャーを織り交ぜた音楽は少々盛りすぎ、やり過ぎの観ありで、焦点が定まらない印象だった。
続くコープランドの「アパラチアの春」は今夜の白眉。音楽も演奏もとにかく美しい!薄いヴェールを一枚一枚剥がしていくようなデリケートな美しさ。天上的で哀しいほど透明で、薄明のなか、ノスタルジックな寂寥感を誘う。クラリネット、オーボエ、ヴァイオリン、フルート、ファゴットなどのソロ楽器による歌が詩情を湛える。いつまでも静かに浸っていたい気分になった。この曲もピアソラ同様に様々な手法が用いられているが、全てが有機的に繋がっていて必然性を感じた。愛聴曲にしたい一曲。そして聴くときはこの原田/N響がいい(レコーディングがあるのか、ステージにはマイクが沢山セッティングされていた)。
最後はマルケスの「ダンソン第2番」。これは冒頭のバーンスタインの曲とシンメトリックに呼応したノリノリのビッグバンドナンバーという感じ。原田もバンドの指揮者のように全身を使って音楽を表現。パンチが効いて、ご機嫌なリズムとノリで聴いていて自然と体が揺れる。ソロもみんな役者になり切って最高のパフォーマンスを演じた。こういう楽しい演奏に細かい感想は不要だろう。終わったとき、声かけ禁止が恨めしい気分になった。
原田慶太楼はどんなタイプの音楽でも、その聴かせどころに的確に焦点を当て、おいしいところを本当に美味しく味わわせてくれる才能の持ち主だと感じた。この先、大いに注目して行きたい。
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