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2014年2月B定期(マリナー指揮)

2014年02月22日 | N響公演の感想(~2016)
2月20日(木)ネヴィル・マリナー指揮 NHK交響楽団
《2014年2月Bプロ》 サントリーホール

【曲目】
1. モーツァルト/交響曲第35番ニ長調 K.385「ハフナー」
2. モーツァルト/ピアノ協奏曲第22番変ホ長調 K.482
 【アンコール】
 リスト/巡礼の年第1年「スイス」~第2曲「ワレンシュタット湖畔で」
Pf:ティル・フェルナー
3.モーツァルト/交響曲第39番変ホ長調 K.543

2010年以来のマリナー/N響。前回はブラームスやシューマンで名演を聴かせてくれたが、今回は元祖オールモーツァルトプログラム。

「ハフナー」は全体としては手堅くまとめたという感じ。フルートとクラリネットの入らない初稿版を用いたせいか、例えば第1楽章の上行音階で元気なクラリネットが聴こえなかったりすると、音楽のダイナミズムという点では物足りなさを感じる。その代わり、かどうかはわからないが、弦の各パートが室内楽的に語り合い、親密なアンサンブルを作っていた。中でも第2楽章の弦の語り口はとても雄弁だった。

ティル・フェルナーをソリストに迎えたコンチェルトは今夜の白眉。フェルナーはスタインウェイのフルコンサートピアノから、フォルテピアノのようななんともデリケートな表情を紡ぎ出した。音量的にもこの楽器で出せるほんの何割かぐらいのダイナミックレンジしか使わずに、大きな広がりと深みを出し、多彩な音世界を聴かせた。スタインウェイならではの艶やかに磨かれた美音でも聴き手を魅了。

第1楽章のワクワク感、第2楽章の奥ゆかしいしっとり感、そして第3楽章の軽やかさ!ダンスに例えるなら、全然踊れない自分が、すごく上手なパートナーに導かれて自由自在に踊れてしまっているような感覚。中間部のニュアンス豊かな詩情もとろけるよう。フェルナーはモーツァルトの音楽を、呼吸、リズム、細かな力加減など全てのエレメントで最上の姿に仕上げていた。マリナー/N響は「ハフナー」のときより生気も柔軟性も増し、第2楽章など木管アンサンブルの温かく柔らかな調べも絶品!フェルナーとの軽妙洒脱なやり取りはミューズの饗宴を思わせた。アンコールも素晴らしく、フェルナーのリサイタルを聴きたくなった。

後半は39番のシンフォニー。伸びやかな弦の冴えが耳を引いた第1楽章、「ハフナー」同様に能動的に語りかけてきた第2楽章、軽やかなリズムに乗って木管の典雅な調べが素敵だった第3楽章、エネルギーよりも内面的な深みを大切にした第4楽章… 全体を魅力的にきっちりとまとめたマリナーの手腕とN響の精度の高いアンサンブルが光る好演だった。かつてのプレヴィンのような気高さには一歩及ばないし、ノリントンのようなサプライズもないが、もうすぐ90歳を迎えるとは想像もできない生気に満ち、かつ年輪を重ねた味わいもあるとてもいい演奏だった。

ネヴィル・マリナー指揮 NHK交響楽団《2010年9月Bプロ》 ~2010.9.16 サントリーホール~

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