5月30日(日)仲道郁代(Pf)
Road to 2027 幻想曲の系譜 ―心が求めてやまぬもの
サントリーホール
【曲目】
1.モーツァルト/幻想曲ハ短調 K.475
2.シューマン/幻想曲ハ長調 Op.17
3.ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第28番イ長調 Op.101
4.シューベルト/さすらい人幻想曲 D. 760 Op. 15 ハ長調
【アンコール】
♪ ドビュッシー/亜麻色の髪の乙女
ベートーヴェン没後200年と仲道さんの演奏活動40周年が重なる2027年に向けた10年間におよぶ壮大なコンサートシリーズ”road to 2027”の一連のリサイタルを聴いた。今日のテーマは「幻想曲」。ベートーヴェンの作品101の幻想風ソナタを中心に、それに関連した大作が並んだ。リサイタルを通して伝わってきたのは、作曲家が長く抱き続け、追い求め続けてきた哲学とも云える一貫した信念から見えてくる情景だった。
モーツァルトの幻想曲は、様々に変化する楽想がアグレッシブなほど思い切って濃厚に表現されながら、それぞれのドラマを越えた遠くに見える一点の光を見つめたような演奏だった。それをいくら追い求めても、苦難が戻ってきてしまうのだが、また果敢に立ち向かう決意が伝わる終結。
次は、シューマンがクララへの恋い焦がれる想いを込めたという幻想曲。プログラムに掲載された平野昭氏との対談で仲道さんが語っている、主調の主和音に落ち着くことなく常に何かを求め続ける姿は、問いかけだったり、憧れだったり、希求だったり。仲道さんは、以前はよくシューマンをよく取り上げ、多感で移ろいやすく、夢見心地な演奏に魅了されたが、久々に聴いた仲道さんのシューマンからは、悩みや問いの向こうにある光が感じられた。
曲の最後で、第1楽章の終結部で聴かれるベートーヴェンの「遥かな恋人へ」のモチーフが溢れる想いで再び奏でられた瞬間、全身にトリハダが立った。長い旅の最後での求めていたものとの出会い。一般に演奏される譜面では出てこないこのモチーフの再現は、シューマンが出版譜を出す前のものだそうだ。仲道さんは今日の演奏で、あえてこの版を採用したという。これで、シューマンが求めていたものがはっきりと伝わった。これほど納得できる「演出」を、シューマンがなぜカットしたのかという疑問が残るが、シューマンが自分の胸の中だけにしまっておきたかった大切な思いだったのかも知れない。
後半のベートーヴェンのソナタ、ここでも憧れや夢想、決意、迷いといった様々な想念が錯綜するが、そのなかで仲道さんが見ているのは、やはり最後に行きつく崇高な世界。フーガの先で、揺るぎない決意と自信に行きついた。
シューベルトは冒頭から強い決意表明が繰り返されるが、これも何かを追い求める姿か。この曲は名曲の誉れ高く、演奏の機会も多いが、悲しいほどの美しさを湛えた最晩年の3つのソナタなどとはちょっと異なり、頑張り過ぎているようにも感じる。仲道さんは熱いハートで見事な演奏を聴かせてくれたが、もう一つ気持ちが乗れなかったのは、単に僕とこの曲の相性のせいかも知れないが。
それに対して、アンコールの「亜麻色の髪の乙女」の、センチメンタルを排したなんと透明で静謐な世界。これを聴いたら、最近リリースされたドビュッシーの前奏曲集のCDを聴きたくなり、さらにシューベルトの晩年のソナタが聴きたくなった。
仲道郁代 ロマンティックなピアノ ~ 2021.3.5 紀尾井ホール
仲道郁代 フォルテピアノ&ピアノ~ミーツ・ベートーヴェンシリーズ~ 2020.1.10 東京芸術劇場
仲道郁代 ピアノリサイタル~第29回 交詢社「音楽と食事の夕べ」 2019.12.21
仲道郁代 ショパンへの道 2019.1.26 ハクジュホール
#文化芸術は生きるために必要だ
コンサートを中止にしないで!
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3.ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第28番イ長調 Op.101
4.シューベルト/さすらい人幻想曲 D. 760 Op. 15 ハ長調
【アンコール】
♪ ドビュッシー/亜麻色の髪の乙女
ベートーヴェン没後200年と仲道さんの演奏活動40周年が重なる2027年に向けた10年間におよぶ壮大なコンサートシリーズ”road to 2027”の一連のリサイタルを聴いた。今日のテーマは「幻想曲」。ベートーヴェンの作品101の幻想風ソナタを中心に、それに関連した大作が並んだ。リサイタルを通して伝わってきたのは、作曲家が長く抱き続け、追い求め続けてきた哲学とも云える一貫した信念から見えてくる情景だった。
モーツァルトの幻想曲は、様々に変化する楽想がアグレッシブなほど思い切って濃厚に表現されながら、それぞれのドラマを越えた遠くに見える一点の光を見つめたような演奏だった。それをいくら追い求めても、苦難が戻ってきてしまうのだが、また果敢に立ち向かう決意が伝わる終結。
次は、シューマンがクララへの恋い焦がれる想いを込めたという幻想曲。プログラムに掲載された平野昭氏との対談で仲道さんが語っている、主調の主和音に落ち着くことなく常に何かを求め続ける姿は、問いかけだったり、憧れだったり、希求だったり。仲道さんは、以前はよくシューマンをよく取り上げ、多感で移ろいやすく、夢見心地な演奏に魅了されたが、久々に聴いた仲道さんのシューマンからは、悩みや問いの向こうにある光が感じられた。
曲の最後で、第1楽章の終結部で聴かれるベートーヴェンの「遥かな恋人へ」のモチーフが溢れる想いで再び奏でられた瞬間、全身にトリハダが立った。長い旅の最後での求めていたものとの出会い。一般に演奏される譜面では出てこないこのモチーフの再現は、シューマンが出版譜を出す前のものだそうだ。仲道さんは今日の演奏で、あえてこの版を採用したという。これで、シューマンが求めていたものがはっきりと伝わった。これほど納得できる「演出」を、シューマンがなぜカットしたのかという疑問が残るが、シューマンが自分の胸の中だけにしまっておきたかった大切な思いだったのかも知れない。
後半のベートーヴェンのソナタ、ここでも憧れや夢想、決意、迷いといった様々な想念が錯綜するが、そのなかで仲道さんが見ているのは、やはり最後に行きつく崇高な世界。フーガの先で、揺るぎない決意と自信に行きついた。
シューベルトは冒頭から強い決意表明が繰り返されるが、これも何かを追い求める姿か。この曲は名曲の誉れ高く、演奏の機会も多いが、悲しいほどの美しさを湛えた最晩年の3つのソナタなどとはちょっと異なり、頑張り過ぎているようにも感じる。仲道さんは熱いハートで見事な演奏を聴かせてくれたが、もう一つ気持ちが乗れなかったのは、単に僕とこの曲の相性のせいかも知れないが。
それに対して、アンコールの「亜麻色の髪の乙女」の、センチメンタルを排したなんと透明で静謐な世界。これを聴いたら、最近リリースされたドビュッシーの前奏曲集のCDを聴きたくなり、さらにシューベルトの晩年のソナタが聴きたくなった。
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