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フェルメールの「牛乳を注ぐ女」

2007年12月03日 | pocknの気まぐれダイアリー
12月3日(月)

9月から六本木の国立新美術館でやっているフェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展。このフェルメールの有名な絵はチラシでみているだけで強力な魅力を放っている。9月~10月にシリーズで聴いて感銘を受けたフェルメール・カルテットの名もこの画家にちなんだというし、ずっと気になっていたのだが、古い絵はピカソとかマチス、モネやボナールなどの直接感覚に訴えてくる絵と比べると、時代背景や聖書なんかをわかっていないと楽しめない気がして少々引いていたのだが、仕事の代休が取れたので月曜日なら少しはゆっくり見れると思って出かけた。

この展覧会、つい「フェルメール展」と呼んでしまうが、実はフェルメールの絵は「牛乳を注ぐ女」1点のみ。しかし、この絵を見るためだけに1500円払って来るだけの甲斐は十分過ぎるほどあった。

この絵が部屋の奥に遠く見えたその瞬間から、既にその部屋の空気が変わったかのように感じた。それほどにこの「名画」は人を惹きつける魅力を放っている。そして、近くで見ているともう足は釘付けになる。「立ち止まらずにご覧下さい」と言われても… 後ろの立ち止まっていいエリアまで下がってその絵を見つめ続けた。

他の同時代の風俗画がどれも全体が暗い影の中に主題だけに光が当てられているのに対し、この絵は全体が明るく背景が実にシンプル。この時代の絵としてはこのこと自体が画期的なことではないだろうか。背景が明るい白であるため光が当っている主人公の女性にできる淡い影がやわらな印象を与える。黄色やデルフトブルーの服の色が鮮やかに映える。

手馴れたしぐさで牛乳を注ぐ姿は実に自然でしなやかで、細い筋となって注がれる白いミルクが容器に落ちるやわらかで心地よい音が聞こえてくるようだ。この調和の取れた行為全体から、何か厳かな儀式のような神々しささえ伝わってくる。

「古い絵は直接感覚に訴えてこないからちょっと…」なんていう思いは、この絵を一目見れば僕だけでなく、きっと誰でも消し飛ばされるに違いない。この絵に秘められたX線調査の結果とか、透視法の巧みな利用とかはもちろん興味深い話題ではあるが、この絵に共感し、この絵の世界に没入するのにはただ絵を眺めること以外に必要なものは何もない。

「牛乳を注ぐ女」以外の展示も、17世紀当時のヨーロッパの生活や風俗を知る上で、また、当時の絵画の手法を知る上でとても興味深かったし、絵画以外に陶器や、楽器の展示なんかもあって全体としてもとても楽しめた。「牛乳を注ぐ女」のおかげで他のいろいろな展示にも接することができたことはよかった。

この展覧会もいよいよ12月17日まで。アムステルダムへ行く予定がない人は絶対に見に行っておくといいですよー!

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