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夏山歩き(北アルプス・野口五郎岳~水晶岳~黒部五郎岳)

2006年08月10日 | 山&ハイキング
 2006年7月30日(日)夜~8月3日(木)

今年の夏山はどこに行こうか… と今回はぎりぎりまで決まらなかったが、11年前、気合いを入れて出かけた裏銀座コースが、天気に恵まれず失意の下山をしたときのリベンジをして、それに加えてまだ登っていない北アルプスの奥地に静かにたたずむ黒部五郎岳へ行こう!と決め、7月30日の夜、新宿駅から夜行電車「ムーンライト信州号」に乗り込んで、アルプスへと向かった。
7月31日(月)一時キリ

信濃大町からタクシーで高瀬ダムへ。以前来た時は6時半までダムへの道が閉鎖されていたが、今は5時半に開くので早く登り始めることができる。タクシーにはもう一人同じ行き先の人と相乗りさせてもらったのだが、この人と最後まで全く同じ行程!でも混んでいた3泊目の双六小屋では会えなかった。きっとぼくと同じように素晴らしい山の旅を楽しんだことと思う。もしこれを読んでいたらコメントしてくださーい!

高瀬ダムから長いトンネルを歩き、水場を過ぎると本格的な登りの始まり。「日本3大急坂」と呼ばれる「ブナ立尾根」を3時間ほど上り詰めると、烏帽子小屋が建っている。ここで初めて山の反対側の視界が開ける。大きな赤牛岳がシラビソの木々の向こうにおだやかな稜線を広げた姿が美しい。

烏帽子小屋からは展望抜群の稜線歩き。野口五郎岳までの砂地のコースの両側にはコマクサがあちこちに可憐な姿を見せてくれた。

野口五郎小屋と野口五郎岳
途中、スケッチをしたりお昼を食べたりしながらようやく4時に野口五郎小屋に到着。あたりはガスに覆われていた。食事はカリカリの天ぷらやポテトサラダ、おでんなど種類も豊富でとてもおいしかった。

食事が終わった頃にガスがすっきりと晴れてきたので、すぐそこの山頂まで出かけた。槍、水晶、針ノ木、燕岳などなど、みんなくっきりと見え、立山が遠くの空に浮かんで見える。
夕日が水晶岳方面に落ちたあと、まわりの雲がピンク色に染まって美しい光景が広がった。かなり寒かったが(多分5℃ぐらい)、相当暗くなるまで山頂に1人居残り、刻一刻と変わリ行く空と雲のグラデーションを眺めていた。明日の天気予報はしかし「曇り」… 何とか晴れてくれないかなぁ。

8月1日(火)雨&キリ

 野口五郎小屋は軽くてふかふかの羽根布団でとても寝心地がよかったが、明け方すごい雨の音で目が覚めた。「これじゃあ水晶岳を往復しても仕方ない」とゆっくり朝飯を食べ(ハート型の目玉焼きがうまかった!)、雨具で武装して小屋を出た時は雨は止んでいた。
「生憎の天気になってしまいましたね。」とても穏やかそうな、感じの良い女主人に見送られ歩いているうちに青空が広がってきた。でもガスの合間にたまに広がる青空にこれまで何度ぬか喜びさせられたことか。天気予報も「曇り一時雨」だし期待せずに歩いていたら、遠くの山も見え始め、槍の穂先も見えてきた。「よっしゃ、これなら期待できる!」と気分も乗って来た。

水晶岳往復
気がつくと夏山らしい青空が大きく広がり、水晶岳や鷲羽岳などが眼前に迫る抜群の稜線歩きとなった。残雪を多く残す水晶岳をスケッチ、そしてその水晶岳の山頂に登った。

東沢乗越のちょい手前から水晶岳をスケッチ。残雪があると描くのに時間をとられる。

11年振りに立った水晶岳の山頂。あの時は霧の中だったが、今回は薬師、槍・穂、赤牛、歩いてきた野口五郎岳からの稜線、これから向かう黒部五郎岳、そして思い出深い雲ノ平などなど、雄大な眺めが広がっていた。

長い読売新道の向こうは大きな赤牛岳

このコースは「山の懐の深さと大きさ」を体感できる。いつまでも山頂にいたいのだが、今日はまだ先が長い。30分程で水晶小屋まで戻り、その近くでお昼を食べて黒部源流コースへと下って行った。

高山植物
この時季(7月下旬~8月上旬)は、高山地帯は花盛り。今年は7月の長雨のせいか花の数はいつもよりも少なめ、特に黄色系の花が少なかったような気がする。でも行く先々で素晴らしいお花畑を楽しむことができた。
北アルプスの北部はやっぱり高山植物のスケールがすごい。南アルプスもきれいと言われているが、ここら辺の規模にはやっぱりかなわないと思う。



黒部源流コースはずっと沢沿いの道で、水の豊富さを実感。水の傍にはいろいろな種類の高山植物がいっぱい咲いていて目を楽しませてくれる。ここでは小さな滝とハクサンイチゲがよくマッチしていた。


お花畑を歩いていると何とも言えない甘くて良い香りが漂ってくる。以前、この香りの源を探し当てようと、そこらじゅうの花に鼻をつけて嗅いでみたことがあるが、とうとうこの香りがどの花のものかはわからずじまいだった。今ではこの香りは、いろんな花の香りがブレンドしてできるものなのでは、という気がしている。この香りの中、花を眺めながら歩くのも夏山の楽しみ。

とは言っても、この後は確実に登りになるのにいったいどこまで下って行くのか… と思いたくなるほどに下りが続く。そして随分上の方に三俣山荘の赤い屋根が見えた。「ひぇ~、あそこまで登るのか。」覚悟を決めて登って辿り着いた時は相当バテた。そんな時、テント場の水場で飲んだ水のうまかったこと! 気を取りなおして更に歩を進めた。


三俣山荘のテント場から黒部五郎小屋への道を進むと、気持ちの良い大地に出る。ここからの水晶~鷲羽の山並みがでかくて本当に素晴らしい(写真)。黒部五郎方面から三俣蓮華岳への分岐を過ぎてしばらく歩くと、今度はゴロゴロの下りの始まり。三俣小屋から2時間というコースタイムなのに、もう2時間を過ぎようとしている。

この日の行程の最後にいつまでも続くきつい下りはホントにこたえた。ようやく見えた黒部五郎小舎がなんと遠くはるか下に見えたことか。たまに道が平らになってもちっともラクチンなんて思えないほどバテバテで、小屋に着いたのはもう5時過ぎ。三俣山荘から2時間40分もかかってしまった。
小屋の人から「普通の足で2時間半から3時間」と聞いて多少は安心したが、とにかくバテた。すぐに夕食とか言われたらとても食えそうになかったが、食事は6時ということで助かった。ここも天ぷらがおいしく、そうめんが付いたのも嬉しかった。


黒部五郎小舎の前の木道から夕日にシルエットで浮かぶ薬師岳が、一瞬茜色に染まった。

 小屋の横からはおいらの山「笠ヶ岳」がきれいな笠の形をして夕日に映え、正面には薬師岳のたおやかな姿が美しい。昨日に続いて夕映えから闇へと少しずつ色を変えてゆく空と山の姿をずっと眺めていた。星が輝き出し、天気予報など聞くまでもなく翌日の好天は確信できた。

8月2日(水)キリ
黒部五郎岳へ
4時半から朝食を食べて、荷物を半分ぐらい小屋に置いてあこがれの黒部五郎岳を目指した。歩き始めると朝日を浴びて金色に輝く黒部五郎岳が姿を現した。黒部五郎カールのコースは花と水に溢れた素晴らしいコースだった。

歩を進めるごとに広いカールを従えた黒部五郎岳が徐々に迫ってくる。黒部五郎岳はその山肌の至るところに大小の雪解け水の沢が流れ、山全体が水に覆われているよう。沢の音があちこちから聞こえ、いくつもの流れをまたいだり、沢の中を歩いたりしながら「水で潤う山」を実感。
カールを越えて、長めの急坂を登り詰めると黒部五郎の肩に出た。そこからは北ノ俣岳から太郎平にいたる北海道の大地を思わせるような、なだらかで雄大な丘陵が広がる光景が目に飛び込んできた。
2時間弱で黒部五郎岳山頂に到着。これまでは遠くに鎮座する姿を眺めるだけだった山の頂に立てた感慨はひとしお。ここの山頂はさすがに多くの人たちで賑わっていた。

小屋まで戻り、減らしていた荷物をまた全部ザックに詰め、15キロもの荷物を背負って昨日ヘバリにヘバったゴロゴロの急坂を今日は登らなければならない。覚悟を決めてゆっくりと歩いたところ、覚悟していた程キツくはなかった。実際、昨日の下りの時と同じぐらいの時間で登れてしまった。自分の回復力にちょっとびっくり。

登ってきた黒部五郎岳や、水晶岳~鷲羽岳方面の雄大な眺めを楽しみつつ歩いていたが、三俣蓮華岳への登りに差しかかる頃からガスに覆われてしまった。三俣蓮華岳山頂でカレーを食っていたらナント雨粒が… でもこの数粒の雨が今回の山での唯一外で降られた雨だった。眺望が見込めないので双六岳を巻くコースを花を楽しみながらぶらぶらとゆっくり散歩しつつ、双六小屋に到着。3時50分。
双六小屋はこれまでいつも通過していた小屋だが、水が豊富で眺めも良く一度泊まってみたいと思っていた。今夜はここに宿泊。これまでで一番の混雑だったが、チキンフライとやはり天ぷらのメニューはとても豪華だったし、案内された別棟は何とか寝返りもできるくらいの入りで疲れを取ることができた。

8月3日(木)
樅沢岳からの大パノラマを満喫して下山
4時に目覚ましをかけていたのに、目が覚めたら4時20分。樅沢岳の頂上からご来光を眺めるつもりだったのに出遅れた。急いで出かけたが途中で日の出を迎えた。
今日も絶好の山日和。無事の下山を祈ってお日様に手を合わせた。樅沢岳の山頂のちょい手前のハイマツ帯に細い通路みたいのがあって、そこを登ったところが360度見渡せる絶好の見晴らし場になっていた。

 朝日を浴びて眼前に聳える槍・穂高連峰の眺めはやっぱりスゴイ!

眼前に槍・穂連峰がそそり立つ。「うおー!」と思わず歓声。やっぱりこの光景はダイナミックですごい!西鎌尾根が立体的にこちらへ迫り、険しい北鎌尾根を左へと従えたこちら側から見る槍ヶ岳は実に格好よくて好きだ。乗鞍岳、御岳もくっきりと見渡せ、遠くには白山も見える。鷲羽、薬師方面の眺めも素晴らしい。
ここで写真撮影と朝飯とスケッチで2時間半も過ごした。でもまだまだ居足りない気分。しかし今日は下山してゆっくり温泉につかり、うまい昼飯を食って、昨日予約した平湯からの直行バスに3時半に乗る予定だったのでこれも捨てられない。ということで8時前に双六小屋を出発。

これでもギリギリ… それなのに、途中の素晴らしいお花畑や最後に360度の展望が臨める弓折岳でつい長居してしまい、おまけに鏡平では池に映る逆さ槍を見入り、前回のここから新穂高までの所要時間を考えても5分しか余裕がなくなってしまった。
ガンガン下りたいところだが、登ってくる人も多かったのが原因だと思う… 時計とにらめっこしながら相当早足で下りてきたにもかかわらず、途中のワサビ平小屋に予定よりも15分近くも遅れて着き、もう新穂高で乗るつもりだったバスはあきらめるしかなくなった。平湯で温泉、というプランは新穂高の、前にあまり良い印象がなかった無料の温泉で我慢するしかない。でももう時計を1分ごとに見ながら歩く必要はなく、正直ホッとした。
新穂高の無料温泉「アルプスの湯」は思っていたよりもずっとキレイで気持ちよく、4日間の汗をゆっくりと流した。下山して入る温泉の気持ち良いこと!「ふぇ~!」と思わず腹の底から声がもれる。
風呂から出てすぐにバスに乗り、平湯のターミナルで飲んだビールのうまかったこと!ほう葉味噌の飛騨牛ステーキ定食もゆっくり食べ、新宿行きの直通バスに乗り込んだ。

不思議なもので、4日間全然感じなかった筋肉痛が、バスに乗ってたらジワジワと襲ってきた。家に帰って体重を測ると案の定3キロ以上も増えている。ぼくの場合は山に行くと必ずドカンと体重が増え、それが数日で戻る。気圧とか激しい運動とかのせいで体がビックリして水を蓄えてしまうための「むくみ」だということに最近気がついた。ぼくにとって登山は良い運動を超えた結構過酷な行動なのかも知れない。
でも今回の山旅のように天気に恵まれ、忘れられない光景が新たに目に焼きついて、良い思いをするとまた山に行きたくなってしまう。山はいいよネ。
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1 コメント

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素敵ですね~! (一静庵)
2006-08-12 08:46:06
きれいな写真、それと絵も見せていただきました。有難うございました
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