facciamo la musica! & Studium in Deutschland

足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

信州の鎌倉 別所温泉

2008年09月04日 | 山&ハイキング
2008年7月31日(木)

別所温泉

海野宿の用水路で洗い物をしていたおじさんが別所温泉へ行く裏道を教えてくれたおかげで迷うことなく30分もかからないうちに別所温泉も間近となった。

【前山寺】
別所温泉の手前、山道を少し車で上がったところにある前山寺に寄った。城壁のような立派な外壁の門を通り石段を上ってゆくと有名な三重塔がある。



この三重塔は構造上未完成の部分があるにも関わらず、それが反ってすっきりとした美しさを醸し出しているということから「未完成の完成塔」とも言われている。

端正でキリッとした塔が青々と繁る木立の中に聳えている姿に心を奪われる。

住職さんがちょうど鐘楼で4時の鐘を撞き始めた。お昼と4時の2回だけ鳴らされるという鐘の音を聞くことができてラッキー。ヒグラシの蝉しぐれの中、山の向こうまで響いて行く鐘の音に耳を傾けながら三重塔を見上げれば、この塔が建った室町時代の昔から日々行われてきた営みに悠久の時の流れを感じる。


撞かれた数は全部で7つ。4時に7つとはどういうことだろう?
娘が住職さんに「どうして7つなんですか?」と質問すると、「7つぐらいが丁度いいように思うんです。」という返事。これはちょっと意外な答え…

鐘撞もそれを撞く住職さんによって個性が出るようだ。

前山寺の「眠り猫」

宿でチェックインを済ませて近くの外湯へ出かけた。別所温泉にはいくつも外湯がある。下駄を引っ掛けて外湯巡り(行ったのは1つだけだが…)するというのも楽しい。



宿から一番近い「大湯」は地元の人で賑わっていて「庶民の湯」といった素朴な味わいがあった。小さいながら露天風呂もあった。

花屋

家族旅行の1泊目はちょっと贅沢をして、職場の補助がきく旅館「花屋」に泊まった。
「別所温泉ではどこに泊まるんですか?」
ということを海野宿でしゃべった人や道を尋ねた人に訊かれ、
「花屋です」と答えると、誰もが
「へぇーっ、花屋ですか!? あそこは別所温泉で一番の宿ですよ!」
みたいな反応が返ってくる。実際「花屋」は期待以上の素晴らしい宿だった。

二間続きの広い部屋は角部屋で、その周りをぐるりと広い廊下が半周してトイレまでつながっている。天井板の絵や欄干の透かし彫り、調度品や照明器具も歴史を感じる見事なもの。そして窓からは大きな池のある日本庭園が見渡せる。ちなみにここが一般の客室。

広い敷地内にいくつもの建物が建っていて、屋根付きの渡り廊下がつないでいる。フロントへ行くときも、風呂へ行くときもこの渡り廊下を歩くわけだが、渡り廊下自体が素晴らしい歴史建造物だ。



庭を眺めながらよく磨かれた木の渡り廊下をそぞろ歩けば、ベンチがあったり水車小屋があったりと、ちょっとした散歩気分。県指定の重要歴史建造物になっているというのも納得。

食事は夕食も朝食も部屋食。とても感じのいい仲居さんが見た目も味も絶品の料理を一品ずつ順番に運んできてくれる。



すっかり気をよくしたpocknは、日本では一度も渡したことがなかった(というか、チップの心配をするような旅館にはまず泊まらない)チップを差し出すと、なんだか困ってしまって「お心付けは一切頂けないことになっているんです…」とのこと。娘もこの仲居さんがとても気に入って、帰るときに一緒に写真を撮らせてもらっていた。

フロントで別所温泉の見所について教えてくれたご主人風の人もとても親切だし、何よりも老舗を支えてきた自負と謙虚なプライドを感じる。良い旅館というのはこうも何もかもがお客に非日常的な満足感を満たしてくれるものなのか、とつくづく感じ入ってしまった。
ちなみに、こんなに大満足の老舗旅館に4人で泊まって職場の補助がなくても5万円程度。ひとり1万円前半という金額は、伊豆あたりに泊まることを考えればリーズナブルといっていい。



2008年8月1日(金)

【別所温泉名所めぐり】
午前中は旅館のご主人から聞いた別所温泉内の見所を見学した。




旅館「花屋」の門から坂道に沿って続く情緒ある白壁は「花屋」の塀。古都の散策気分を盛り立ててくれる。

間もなく「花屋」に一番近いお寺、北向観音堂へと導かれる。



「南向き」の長野の善光寺と向かい合わせに「北向き」に建てられた北向観音でお参りしてから、くるりと後ろを向いて背後にもお参りすれば善光寺参りも済んでしまうという。
境内には愛染桂とよばれる桂の巨木がそびえ、縁結びの霊木として祀られている。

また、本堂の横の崖に張り付くように建っている温泉薬師瑠璃殿もなにやら歴史を感じるし、参道に並ぶお店の雰囲気もいい。


北向観音から次のお目当て、国宝の八角三重塔がある安楽寺へ向かう途中、河原の近くに足湯があった。さすが湯の町別所。

照りつける真夏の日差しを遮る東屋があるのもありがたい。足だけでも、別所温泉のお湯につかるとほんとに肌がサラサラになる。



安楽寺近くにあった大きな蓮池には見事な蓮の花がいくつも咲いていた。花芯の雌しべの部分は蓮根みたいな穴が開いているが、本当の蓮根は根の部分ですよね…

【安楽寺・八角三重塔】
安楽寺の入口から折れ曲がった長い石段を上ってゆくと、木立の中に国宝の八角三重塔が見えてくる。

この遠くから見上げた塔の姿はそこにだけ後光が射しているかのように浮かび上がって見えて何やら神秘的。


近づくと、三重塔はその風格と威光を一層強く放ってきた。

それは人を威圧するようなものではなく、塔全体から優しい光が降り注ぎ、それが体に染み込んでくるような感覚だ。

紅がかった塔の色調は雅やかで温かみがあり、周りの景色から浮かび上って見える。珍しい八角の形も調和が取れていて、塔全体の色調とのバランスが見事。

この色と形、そして緻密な構造が織り成す「美」の力が、あたりに霊気のようなものを漂わせている。それは700年以上もの風雪に耐え、建ち続けてきた建造物のみが放つ神々しい霊気だ。

見る場所を変えていろいろな角度で眺めてみたが、どこから見ても気高く美しい。

いつまでも見入っていたい気持ちにさせる不思議な力を持つ八角三重塔だった。


【常楽寺】
常楽寺は落着いた茅葺の本堂や睡蓮やショウブが咲く彼岸を思わせる池もいいが、お目当ては石造多宝塔。旅館「花屋」のご主人が、「常楽寺の多宝塔は石造りの多宝塔としては日本で2つしかない重要文化財のうちの1つなんですよ。」と教えてくれたので是非見たいと思った。

多宝塔は本堂の裏手の鬱蒼とした森の中の石畳の道を行く。その脇には苔むした石塔がひしめくように並んでいた。

お目当ての多宝塔はその石畳の道の奥にあった。両脇の石塔に護衛されるように鎮座する多宝塔が700年を超える歴史を物語っているようだった。



【別所神社】
別所温泉の観光マップには載っていなかったが、常楽寺のすぐ近くにあったので寄ってみた。広くて荒涼とした境内に鳥居や小さな社が点在していたが、本殿らしきものが見当たらない。朽ちかけた能舞台のような建物があってとてもいい雰囲気。背景はそのまま借景に… こんなところで夜薪能でも見物したらさぞかしムード満点だろう。



上田電鉄別所線

ほぼ午前中かけて別所温泉の徒歩でまわれる見所をひととおり訪ねた。次は電車好きの息子も喜ぶ人気のローカル線、上田電鉄別所線に体験乗車した。

時刻を調べて、ちょうど戻る電車がすぐ来る中塩田まで行って、ふりだしの別所温泉に戻ってくることにした。別所線は丸い窓のついたレトロな車両が人気で、改札にはそれに合わせたようなはかま姿の女の駅員さんがいた。

レトロ電車を期待して待っていたら、ちょうどこの日デビューとなった新型車両が来た。なんだかいつも見ている東急の車両に似ていておもしろくない。けれど、息子は新型車両にご満悦だし、車内には何やら鉄道マニアくんがちらほら。

単線の別所線は山間の町を通り抜け、のどかな里山の風景がなごませてくれる。下車駅、中塩田は木造のレトロな駅舎。台湾の平渓線というローカル線に乗って行き着いた青桐駅の雰囲気によく似ていた。



帰りこそレトロ電車を期待していたら、来たのはまたまた新型君!! 今日はデビュー記念でこればっかり走っているのだろうか… かなり残念。。。



別所温泉をあとにして、向かうはおなじみ清里の貸し別荘「野わけ」。途中、古い宿場としてガイドに載っていた「茂田井宿」にちょっとだけ寄ってみた。時間も押していたので車から殆ど降りなかったが、歴史を感じる古い街並が続いていた。



海野宿と比べると「観光地」としての様相はかなり希薄で、住宅街といった感じ。遅いお昼にうまい蕎麦でも食べようと店を探してみたが、そもそも食べ物屋らしき店は一軒も見当たらなかった。

結局茂田井の近くの回転寿司屋に寄って、一路清里へ…

清里の貸別荘「野わけ」ライフ2008

海野宿

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