8月18日(金)Duo Axia 山口徳花(Vc)/伏木唯(Pf)
ベートーヴェン・チクルス vol.3
ルーテル市ヶ谷ホール
【曲目】
1.ベートーヴェン/「マカベウスのユダ」の主題による12の変奏曲ト長調 WoO 45
2.ベートーヴェン/ピアノとチェロのためのソナタ第3番 イ長調 Op.69
3.ベートーヴェン/「魔笛」の主題による12の変奏曲ヘ長調 Op.66
4.ベートーヴェン/ピアノとチェロのためのソナタ第5番 ニ長調 Op.102-2
(アンコール)
♪ ベートーヴェン/アデライーデ Op.46
Duo Axiaによるベートーヴェン全曲チクルス最終回。去年8月にあった第2回は、公演当日に発熱して行けずに悔しい思いをしたが、3回目はしっかり聴くことが出来た。これまでの積み重ねの上に築かれたことを実感できる完成度の高い充実した演奏会だった。
最初は作品番号なしのヘンデルのヴァリエーション。テーマを奏でる伏木さんのピアノが生き生きと弾けて躍動する。山口さんのチェロは少々控え目で、もう少しアグレッシブにやってもいいのでは… とも感じたが、この曲のあとに入った伏木さんのトークで、今の曲はピアノがメインだったが、次のソナタではピアノとチェロが対等に活躍するというのを聞いて、この曲では意図してチェロが裏方に回ったのかな、とも思った。
次はソナタ第3番。ここでは、チェロが俄然存在感を発揮した。この存在感は、落ち着きを保ち、隅々まで丁寧な表現を積み重ねることで得られる存在感。難しい高音のパッセージも美しく奏で、心の奥に秘めた情熱を滲ませつつ大きな息遣いで朗々と奏でるチェロと、益々冴えて流麗に煌めくピアノがしっかり手を組み、調和の取れた美しい演奏だった。熱量も十分で、エネルギーが迸り起伏に富むベートーヴェン中期の傑作の持ち味を捉え、腰の据わった演奏を繰り広げた。このソナタはチクルスの1回目でも演奏されたが、その時よりも懐の深い安定感が具わり、ひと際味わいが加わった印象を受けた。
後半は「魔笛」のヴァリエーションで開始。「ヘンデルの主題」のときよりも山口さんのチェロは雄弁に歌い、語り、伏木さんのピアノとの対話を楽しんでいる様子。とりわけ印象に残ったのは第10~11変奏の切々とした歌。単なるメランコリックな歌というより、心の奥に痛みをそっと仕舞い込むような哀切がこもっていた。ここから最後の第12変奏への転換が素晴らしく、暗闇に柔らかな陽光が射しこみ、命が再生するような厳かさを感じた。
最後は、ベートーヴェン最後のチェロソナタ。Duo Axiaは、肩肘張り過ぎず、泰然自若とした演奏を堂々と繰り広げた。細部においては、ここでも丁寧で繊細な表情付けが光り、創作活動の後期に入ったベートーヴェンの内面から湧き上がる熱いスピリットを迸らせた。とりわけ締めくくりのフーガは雄弁で、ひとつひとつの声部をじっくりと吟味して、様々な思索を経ながらも確かな足取りで高みに昇りつめて行く様子は頼もしく、自然な高揚感が伝わった。
アンコールは歌曲の「アデライーデ」。山口さんがトークで、ある歌手が晩年のベートーヴェンを尋ねてこの曲を歌い、耳の聞こえないベートーヴェンが、耳以外で感じ取った印象を語ったというエピソードを紹介。そして始まった「アデライーデ」は、言葉はないけれど温かな歌心に溢れた美しい演奏。チェロによる"Adelaide!"と包み込むような最後の呼びかけが、なんとも優しくジーンと心に沁みた。第1回のアンコールで演奏してくれた「遥かな恋人へ」とともに、これはDuo Axiaの持ち歌にしてほしい。
ベートーヴェンをコンプリートしたDuo Axiaの次の挑戦が楽しみだ。
Duo Axia ベートーヴェン・チクルス vol.1 ~2022.1.8 スタジオピオティータ~
Duo Axia vol.6 ~2020.2.19 渋谷ホール新宿~
山口徳花 Solo Bach Project – Vol.6 ~2020.12.28 ガルバホール新宿~
山口徳花&守重結加 デュオ ~2018.10.7 練馬区立美術館~
♪山口徳花さん出演のYouTubeを聴く
トリオ「森の詩」(MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美)
「子守歌」(Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美)
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(アンコール)
♪ ベートーヴェン/アデライーデ Op.46
Duo Axiaによるベートーヴェン全曲チクルス最終回。去年8月にあった第2回は、公演当日に発熱して行けずに悔しい思いをしたが、3回目はしっかり聴くことが出来た。これまでの積み重ねの上に築かれたことを実感できる完成度の高い充実した演奏会だった。
最初は作品番号なしのヘンデルのヴァリエーション。テーマを奏でる伏木さんのピアノが生き生きと弾けて躍動する。山口さんのチェロは少々控え目で、もう少しアグレッシブにやってもいいのでは… とも感じたが、この曲のあとに入った伏木さんのトークで、今の曲はピアノがメインだったが、次のソナタではピアノとチェロが対等に活躍するというのを聞いて、この曲では意図してチェロが裏方に回ったのかな、とも思った。
次はソナタ第3番。ここでは、チェロが俄然存在感を発揮した。この存在感は、落ち着きを保ち、隅々まで丁寧な表現を積み重ねることで得られる存在感。難しい高音のパッセージも美しく奏で、心の奥に秘めた情熱を滲ませつつ大きな息遣いで朗々と奏でるチェロと、益々冴えて流麗に煌めくピアノがしっかり手を組み、調和の取れた美しい演奏だった。熱量も十分で、エネルギーが迸り起伏に富むベートーヴェン中期の傑作の持ち味を捉え、腰の据わった演奏を繰り広げた。このソナタはチクルスの1回目でも演奏されたが、その時よりも懐の深い安定感が具わり、ひと際味わいが加わった印象を受けた。
後半は「魔笛」のヴァリエーションで開始。「ヘンデルの主題」のときよりも山口さんのチェロは雄弁に歌い、語り、伏木さんのピアノとの対話を楽しんでいる様子。とりわけ印象に残ったのは第10~11変奏の切々とした歌。単なるメランコリックな歌というより、心の奥に痛みをそっと仕舞い込むような哀切がこもっていた。ここから最後の第12変奏への転換が素晴らしく、暗闇に柔らかな陽光が射しこみ、命が再生するような厳かさを感じた。
最後は、ベートーヴェン最後のチェロソナタ。Duo Axiaは、肩肘張り過ぎず、泰然自若とした演奏を堂々と繰り広げた。細部においては、ここでも丁寧で繊細な表情付けが光り、創作活動の後期に入ったベートーヴェンの内面から湧き上がる熱いスピリットを迸らせた。とりわけ締めくくりのフーガは雄弁で、ひとつひとつの声部をじっくりと吟味して、様々な思索を経ながらも確かな足取りで高みに昇りつめて行く様子は頼もしく、自然な高揚感が伝わった。
アンコールは歌曲の「アデライーデ」。山口さんがトークで、ある歌手が晩年のベートーヴェンを尋ねてこの曲を歌い、耳の聞こえないベートーヴェンが、耳以外で感じ取った印象を語ったというエピソードを紹介。そして始まった「アデライーデ」は、言葉はないけれど温かな歌心に溢れた美しい演奏。チェロによる"Adelaide!"と包み込むような最後の呼びかけが、なんとも優しくジーンと心に沁みた。第1回のアンコールで演奏してくれた「遥かな恋人へ」とともに、これはDuo Axiaの持ち歌にしてほしい。
ベートーヴェンをコンプリートしたDuo Axiaの次の挑戦が楽しみだ。
Duo Axia ベートーヴェン・チクルス vol.1 ~2022.1.8 スタジオピオティータ~
Duo Axia vol.6 ~2020.2.19 渋谷ホール新宿~
山口徳花 Solo Bach Project – Vol.6 ~2020.12.28 ガルバホール新宿~
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