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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

七倉岳~蓮華岳 コマクサと雷鳥の宝庫を歩く

2010年10月24日 | 山&ハイキング
ヨーロッパ旅行が控えているので、今年はいつもより短めの行程で夏山へ出かけた。今回は後立山連峰や裏銀座コースの近くにありながら、これらのメインコースからちょっと外れていて、静かな山歩きが期待できそうな七倉岳~蓮華岳~針ノ木岳というコースを選んだ。途中の泊まりは船窪小屋と針ノ木小屋のテント場の2泊。

新宿駅深夜発の夜行列車「ムーンライト信州号」の指定席を、出発2日前に「みどりの窓口」で買ったとき「最後の1席です」と言われた。いやぁ、これに乗れないと早朝に現地に着く手段がないので、本当にギリギリセーフという感じ。でも隣の席は空いていたので、しっかり車内で睡眠を取ることができた。

2010年7月31日(土)時々

午前5時過ぎに信濃大町に到着。登山口の七倉ダムまでの交通手段はタクシーしかない。行き先を書いた紙を用意しておいて、それを広げて相乗りの相手を探したら、その先の高瀬ダムまで行く人を2人ゲット。3人の相乗りとなった。七倉までタクシー代2000円で済んだ。

七倉山荘で登山届けを出し、6時過ぎに登山開始。いきなり、なかなかの急坂が始まった。夕食は山小屋でお世話になる予定とはいえ、テント泊用の荷物が入ったザックはずっしりと重い。水も入れると20キロを超える。

1時間ほど登った頃、登山道でいきなりカモシカの親子に遭遇した。親のカモシカと目が合った。立派な体格だ。カメラを取り出そうとザックを降ろしているあいだに、カモシカの親子は逃げていってしまった。

日中、登山中にこんな大型動物に遭うのは珍しい。こんどこんなチャンスがあったらシャッターチャンスは逃したくないので、デジカメをすぐ出せるようにベルトにぶら下げた。

熊!?
そこから30分ほど歩いたところで、前の方で「バキバキッ」という、大きな枝を折るような音が聞こえた。「またカモシカかも!」今度はまずカメラを準備して、歩みをゆっくりにして音が聞こえる方に目を凝らしながら進むと…

登山道からわずかに下ったところに動物が見えた。よく見ると、その動物はカモシカよりずっと黒くて、木の幹に両前足を掛けて2本足立ちをして、木の皮をバリバリと大きな音をたてて剥がしている様子だった。すごい鼻息の音も聞こえる。
「えっ!?クマ。。。!?」
全身は見えなかったが、どう見てもクマのようだ。これはヤバイ。少しずつ後ずさりしつつもデジカメのスイッチを入れたが、クマはノシノシと山の斜面を下っていってしまった。

ふぅ。。。肝を冷やした。山でクマに出くわしたのは初めてだった。クマが前足を掛けていた木の幹は、皮が剥がされて白い木の肌が露出していた。近くまで下りてよく見てみたかったが、あのクマが戻ってきそうな気がして怖かったのでやめた。

そこから5分ほど登山道を登ったところで、さっきと同じように皮を剥がされた木があった。下には剥がされた木の皮が落ちていた。縄張りのためのマーキングのようだ。ちょっと前にあのクマがやったに違いない。

もう少し早く歩いていたら、登山道でクマとばったり鉢合わせになってしまった可能性が強い。こわっ。。。!! 「唐沢のぞき」という、見晴らしのいい場所に差し掛かる少し前のところだった。

その後は、下山して来た人に「下でクマを見ましたよ、気をつけて」と情報提供しながら登った。

ひたすら登り続け、鼻突き八丁という急坂を越え、七倉山荘を出発して約4時間40分で着いたところが、「天狗の庭」と呼ばれる稜線上の広々とした展望台。標識には「船窪小屋まで50分」と書かれている。



ここからは、周囲の山々が見渡せるはずだったが、山々は雲に覆われていた。それでも見通しはよく、眼下には高瀬ダムとダム湖がよく見えた。ダムの上には、烏帽子岳や野口五郎岳へ行くときに何度も歩いたブナ立尾根が延びている。

長かった樹林帯の登りからも開放され、花々を楽しみながらの稜線歩きとなった。



ウサギギク、コイワカガミ、ハハコグサ、ヨツバシオガマ、チングルマ… 次々と高山植物が目を楽しませてくれるので、ペースを落として写真を撮りながらゆっくりと登っていった。

12時過ぎに船窪小屋に到着。チベット風のカラフルな小旗がはためく、こじんまりとした良さそうな小屋だ。



でも泊まるのはここから結構離れたテント場だ。小屋の前で昼食を済ませ、テント場へ行った。テント場は七倉岳への分岐を左にそれ、小屋から20分ほどのところにある。なかなか広い。水場は10分ほど下った岩壁の谷の真ん中にあり、冷たくておいしい水が豊富に出ていた。体も拭いてさっぱりした。



夕食は小屋でとらせてもらった。船窪小屋はランプのアットホームな小屋。食事をする部屋の中央には囲炉裏があり、それを食卓が囲んでいる。元気のいいアルバイトの若い女性が、料理を一品一品説明してくれる。山人参、フキ味噌、野菜のマリネ、冬の間凍らせておいた食感のいい大根などなど、珍しい食材がいろいろ… そしてご飯は白馬古代米。デザートはルバーブのゼリー… どれも手の込んだ手作りの品だ。



調理をしたお母さんが紹介され、みんな拍手。とてもなごやかな雰囲気。料理の味も絶品だ。メインコースから外れた山小屋でこんな素晴らしい料理が食べられるなんて幸せ。山小屋を守るご夫婦の情熱と愛情が伝わってきた。

おいしくご飯を頂き、テント場に戻ろうとしたら、アルバイトのコに「このあと、ネパールのお茶でお茶会をやりますから、是非残っていてください。」と言われた。小屋の客でもない僕にまで、なんて親切なんだろう!少し待たせて頂いたが、お茶会の開始は遅れるということで、外も暗くなりはじめ、天気も心配。20分の道のりも考えて、残念ながらお茶会は出ずに失礼した。お茶会、出たかったなぁ… 船窪小屋まで来たら絶対小屋に泊まるべきだな。次は小屋泊まりでここに来たい。

2010年8月1日(日)のち/キリ/小雨

4時に起きた。上空は晴れているようで星が見えた。4時半過ぎにテントをそのままにして七倉岳に上がった。テント場からの所要時間は17分。とりあえず晴れているが、空気は湿った感じ。東の方面には雲の層があって、日の出の時刻を過ぎてしばらくしてから、太陽が雲の中から顔を出した。



北には稜線の向こうに、針ノ木岳とこれから登る蓮華岳がどっしりと並んでいた。



針ノ木岳の左奥には朝日を浴びてピンク色に染まる立山、西には北アルプスの槍・穂高、燕岳などがずらりと見えた。七倉岳は360度の展望が楽しめる絶好のビューポイントだ。






眺望を楽しんでテント場に戻ったころ、どこからやってきたのか、ガスが周囲の山々を隠しはじめてしまった。

というわけで、七倉岳から北葛岳を越え、蓮華岳へ向かう絶景のはずの縦走コースでは、残念ながら眺望にはあまり恵まれず、なかなかハードなアップダウンとなった。慰めは、あちこちに咲く可憐な高山植物…



それでも、北葛岳からの下りで、蓮華岳の全容を見ることができた。



でかい!なだらかな山頂部と壁のように立ちはだかる斜面との対比が特徴的だ。北葛岳の最低部、北葛乗越まで下り、いよいよ蓮華岳への登りにとりかかる。

「蓮華の大下り」と呼ばれる長くて急な斜面を、逆コースでひたすら登り続けなければならない。

いきなり立ちはだかった鎖場の岩壁をはじめ、岩峰がひしめく急斜面は、なだらかでどっしりとした蓮華岳のイメージとは随分異なる。荷物が重いので慎重に一歩ずつ登って行く。

約1時間登り続け、ようやく急な登りが一息ついた頃から、あちこちにコマクサの群生が目につくようになってきた。


山頂近くのなだらかなで大きな斜面に達すると、そこは一面のコマクサ、と言っていいほどに大規模な群落をあちこちに形成している。これほどのコマクサの大群落は、これまでに見たことがない。

遠望が利かない代わりに、コマクサを楽しんでいたら、雷鳥の親子に出会った。

北アルプスの北部を歩けばたいてい一度ぐらいは雷鳥を見かけるが、ここ蓮華岳では一度どころか、ちょっと歩けばまた別の雷鳥の親子に会う。こんなに接近していて縄張りは大丈夫なんだろうか、と思うほど。

雷鳥のバックには一面コマクサが咲いていた



コマクサを愛で、雷鳥と遊ぶ山歩きは楽しい。だけど、お昼を食べ終え、コマクサを絵手紙に描いていたら細かい雨が落ちてきた。テント泊の身の上としては、雨はなおさら勘弁願いたい。蓮華岳の山頂も小雨とガスの中で眺望は望めない。コマクサと、雷鳥たちの姿が慰め。幻の白いコマクサも見つけた!


針ノ木小屋へは、コースタイムより少々遅れての到着。この雨、本降りになるようなら、テント泊はやめようかとも思ったが、小屋では本格的な雨にはならない、というので、雨のなか、テントを設営した。針ノ木のテン場は、小屋のすぐ近く。雪渓の上部のへりを割り当てられた。

テントの設営を終えたころ、雨が止んだ。なんだ、もう少し待っていればよかった。今夜の食事も小屋でとらせてもらった。魚の煮付けがうまかった。



食事が済んで外に出ると視界が開け、北アルプス方面は槍も見えていた。今日歩いてきた峰々が夕日に照らされ、針ノ木雪渓の向こうに目を遣れば、爺ヶ岳から鹿島槍まで、後立山の山々が見渡せる。


クリックでスケッチを見る

爺ヶ岳と鹿島槍をスケッチしているうちに夕闇が迫ってきた。星がまたたきはじめた。明朝の天気に期待して、テントのなか、シュラフに潜り込んだ。

2010年8月2日(月)

本当はこの日は針ノ木岳に登る予定だったが、昨日は雨のなか、眺望を楽しめなかったリベンジで、東の空が白み始めた頃に再び蓮華岳へ向かった。

高度を稼ぐに連れて、針ノ木岳がだんだん見えてくる。テントを出発して30分で、山頂から続く稜線上の西のピークに立てば、針ノ木岳も全容を現わした。四方の山も見渡せる。このピークでご来光を迎えた。



ご来光を拝み、ここでゆっくりすることにした。昨日と同じような雲の層が出ていて、天気はあまりもたないかも知れないが、下山するまではガスってこないでもらいたい。

針ノ木岳からスバリ岳の稜線の向こうには、残雪の剣と立山が、朝日を受けてピンクに染まってきた。


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そして、太陽が光線を強めるに従って、ピンク色から金色に変わると、あとは昼間の普通の色になってくる。


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朝飯を食べ、スケッチをし、雄大な眺めを楽しみながらこの西のピークで2時間近くが過ぎた。



蓮華岳の山頂部はとても広く、頂上は随分先に見える。



でもやっぱりもう一度頂上まで行くことにした。

群生する高山植物の女王コマクサも、太陽の光を受けると昨日とはまた違った輝きと色を発している。



西のピークから約15分で頂上に着いた。頂上からは、昨日歩いてきた稜線や山々がよく見渡せた。



コーヒーを沸かし、しばし小休止。小さな石の祠でお参りをして、来た道を戻った。持つかどうか心配だった天気はすっかり安定して、夏空が広がっていた。

戻り道は針ノ木岳、剣・立山を正面に見ながらの贅沢な散歩道。針ノ木峠へ下る道からは、今回は登らなかった針ノ木岳が大きく迫って見え、針ノ木峠の小屋の裏手には、一張のオレンジのテントがぽつんと残されている。僕のテントなわけだが、晴天のもと、よく乾いていた。


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下山は針ノ木雪渓へ。高山植物と水が豊富な急斜面を下ると50分で雪渓の入口に着く。アイゼンを着けて雪渓を下る。雪から立ち上る蒸気のせいか、雪渓を歩き出して間もなくガスに覆われた。



あちこちに岩がころがっている。雪渓といえば、何年か前、白馬大雪渓での落石による事故を思い出す。これがまともにぶつかれば、命はないだろうという大きな岩もごろごろしていた。雪渓の上を岩が転がっても、音が聞こえないから余計に危険だ。雪渓は早く通過するに限る。

雪渓を通過し、沢を何度も越えながら樹林帯に入っていった。ブナの森の緑が目に染みる。

小休止した大沢小屋は、そんな森の中にあり、そこの水は甘みがあってとてもうまい。ただの雪解け水ではなく、本当の森の天然水だ。

大沢小屋から小一時間で扇沢に着いた。信濃大町行きのバスに乗って大町温泉郷で下車し、日帰り温泉の「薬師の湯」につかる。大きな露天風呂のある気持ちのいい温泉だ。信濃大町で遅い昼メシに特大のトンカツを食べ、新宿行きの中央高速バスに乗った。

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