facciamo la musica! & Studium in Deutschland

足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

草津国際音楽アカデミー&フェスティバル ~草津音楽の森コンサートホール~

2005年08月30日 | pocknのコンサート感想録2005
8月29日(月)ドイツの都市と音楽/ボン、デュッセルドルフ~若きベートーヴェン
【曲目】
1. バッハ/ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ホ長調 BWV1016
2.ベートーヴェン/二重奏曲 ハ長調 WoO.27-1 
3.ブルッフ/七重奏曲 変ホ長調 Op.ph
4.ベートーヴェン/七重奏曲 変ホ長調 作品20 


【演 奏】Vn:W.ヒンク(1,4)、S.ガヴリロフ(3)、大関博明(3)/Vla:S.コロー(4)/Vc:T.ヴァルガ(4)、柳田耕治(3)/Cb:須崎昌枝(3)、井戸田善之(4)/Fl:W.シュルツ(4)/Fg:M.トルコヴィッチ(2,4)、岡崎耕治(3)/Cl:W.マイヤー(2,4)、四戸世紀(3) /Hrn:高野哲夫(3)、守山光三(4)/Pf:遠山慶子(1)


このコンサートでの一番の聞き物だったのは最後のベートーヴェンのゼプテット。力みのない、自然な響きと活き活きとしたリズム感、溢れる歌… ベテランの名手達がリラックスして奏でるアンサンブルは実にいい。
ヒンクやコローという独特のやわらかくてしかも存在感のある音色の持ち主がこの演奏に味わい深い色を与えている。一糸乱れぬ完璧なアンサンブルというタイプの演奏ではないが、個人の名技を見せつけるのではなく、お互いの音楽を良く聴き合い、微笑みながら合わせ、響きを作っていく、というアンサンブルの楽しさに満ち溢れた演奏だ。2名の日本人プレイヤーも実に自然に無理なく歌い、リズムを刻んでいたのが嬉しい。こういう演奏を聴いていると幸せになる。

同じベートーヴェンのクラリネットとファゴットのデュオも良かった。マイヤーとトルコヴィッチの自由自在のやり取りが曲の面白さを引き立てる。ブルッフが11歳の時に書いたという七重奏曲は、素材の良さは光っていたが、まだ消化しきれていない。それにあれもこれもありという音楽で、興味深く楽しく聴いたが習作の域。最初のバッハも悪くないが、ヒンクはソロよりもアンサンブルがいい。



8月30日(火)スチューデントコンサート
今日は草津音楽祭の最終日。いつものコンサートに先立ち、午前中にはマスタークラスから選ばれた受講生によるコンサートが行われ、途中から聴いた。
各クラスから1名という枠を通った受講生だけあって概して高いレベルの発表だったが、中でも素晴らしかったのはイザイの「無伴奏3番」を弾いたヴァイオリンの大西梓さん(フランチェスキーニクラス)とファーニホウの「カッサンドラの夢の歌」を演奏したフルートの小山裕幾さん。どちらも集中力、テンションの高さ、超越したテクニックという点で他の演奏を圧倒していた。ソリストとして必要な存在感、アピール力を十分に具えて聴衆を引きつけた。


8月30日(火)ドイツの都市と音楽/ワグナーを生んだ音楽都市、ドレスデンとハレ
【曲目】
1. シューマン:3つのロマンス 作品94
2.シューマン:幻想小曲集 作品73
3.ウェーバー:アンダンテとハンガリー風ロンド ハ短調 作品35
4..ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲 ト短調「ドレスデンの管弦楽団のための」P.383, RV577
5.ヘンデル:オルガン協奏曲 ヘ長調 HWV295
6.ヴラニツキー:2つのヴィオラの為の協奏曲


【演 奏】T.インデアミューレ(ob) / M.モレティ(pf) / パノハ弦楽四重奏団
W.マイヤー(cl) / M.トルコヴィッチ(fg) / P.フランチェスキーニ(vn)
守山 光三(hrn) / S.コロー(va) / R.ラニエリ(va)
J.E.デーラー(指揮) / 草津フェスティヴァルオーケストラ、他


室内楽からオーケストラまで、楽器もオルガンまで登場というたいへん多彩で盛りだくさんなプログラムを楽しんだ。
午後のゲネプロも聴けたので初めての曲を聴くための準備もできた。ウェーバーのアンダンテとハンガリー風ロンドは、トルコヴィチの美しく柔らかな音色で雄弁に語りかけるファゴットと、奥行きのある柔らかなハーモニーによるパノハ弦楽四重奏団のアンサンブルがたいへん魅力的だった。
ヘンデルのコンチェルトはブリツィの明瞭なタッチと鮮やかな音選びが冴えていて、清々しい気分にしてくれた。
ヴィヴァルディとヴラニツキのコンチェルトでは、イ・ソリスティ・ディ・ペルージャのメンバーのフランチェスキーニ(Vn)とラニエリ(Vla)がソロを受け持ったが、美しい音色と安定した表現力で大変良い演奏を聴かせてくれた。
ヴラニツキではもう1人のソリストであるコローが加わって2本のヴィオラのコンチェルトという珍しい曲を聴けた。モーツァルトと同時代を生きた作曲家のこの曲は美しいメロディーと穏やかな曲調でたいへん聴きやすく親しみやすいが、きれいなメロディーが出てきて同じようなことをやっている、という印象。音楽が活き活きと躍動することもないし、メロディーがどんなふうに料理されるかという楽しみはないところが、天才モーツァルトとは比較の対象にすらならない。
珍しい知られざる名曲を聴かせるのが草津の音楽祭の魅力の1つだが、「隠れた名曲」の限界というものも感じることとなった。

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