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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

マティアス・ゲルネ シューマンを歌う

2005年10月18日 | pocknのコンサート感想録2005
10月18日(火)マティアス・ゲルネ バリトンリサイタル
所沢ミューズ・アークホール

【曲目】
1.シューマン/「詩人の恋」Op.48
2.シューマン/黄昏の渚Op.45-3、わが愛は輝くOp.127-3、わが馬車はゆっくりとOp.142-4
3.シューマン/「リーダークライス」Op.24
アンコール:シューマン/君は花のようOp.24-25

【演 奏】
マティアス・ゲルネ(Bar)/アレクサンダー・シュマルツ(Pf)


今若い世代で最も注目を浴びている1人、ゲルネの歌を初めて聴いた。
「詩人の恋」の冒頭”Im wunderschönen Monat Mai…”を聴いた瞬間からゲルネの歌に引き込まれてしまった。なんともやわらかく、デリケートな美声、歌い口もデリケートで流麗。ハイネの詩がシューマンのロマンティックなメロディーに乗って溢れる泉のように流れ出てくる。音と音、言葉と言葉をこれほど滑らかに繋げ、柔らかな曲線を描けるなんて!
この絶妙な歌いまわしでゲルネは、ロマンティシズムの極みと言いたいような、切なさ、憧れ、焦燥… 主人公の若者の壊れそうなデリケートな心をたっぷりと抑揚をつけ、あくまでも度を越すことなく、穏やかに歌い紡いで行く。そうした柔らかさ、繊細さを基調としながらも、「聖なるラインの流れ」や「嘆くまい」、「忌まわしき昔の歌」のような歌では、ふわりと漂うような歌がにわかに根を生やし、芯の通った太い声で全く違う表情を見せる。そうした表現力の幅にも感嘆。絶品の「詩人の恋」だ。
後半の「リーダークライス」も同様に素晴らしい。深い心の痛み、手が届かないものへの遠い遠い思いといったもので、聴く者の心が包み込まれるよう。ゲルネは今のバリトン界で最も注目に値する歌手だと感じた。

ひとつだけ気になったのはゲルネのドイツ語があまりに自然なこと。ネイティヴなのでそれが当然と言えば当然なのだが、ディースカウのように言葉の子音の末端まで全神経が行き届き、研ぎ澄まされ磨かれたドイツ語と比べると、言葉へのアプローチに弱い部分があるのでは、という気持ちがよぎった。

ピアノのシュマルツはゲルネの歌にぴったりと添い、自然な呼吸で歌と一体となった良い伴奏だったが、音色にもっとシューマンらしい陰影に富んだ色彩感が欲しかったし、一つ一つの音にもう一つ磨きをかけられるようにも感じた。
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