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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

コバケン/日フィルの第9

2005年12月22日 | pocknのコンサート感想録2005
12月22日(木)日本フィル「第9交響曲」特別演奏会2005
東京芸術劇場

【曲目】
1.バッハ/コラール前奏曲「目覚めよ、と呼ぶ声あり」BWV645
2.バッハ/トッカータとフーガ ニ短調BWV565

【オルガン】井上圭子


3.ベートーヴェン/交響曲第9番ニ短調Op.125「合唱つき」

【演奏】
S:菅 英三子/A:秋葉京子/T:錦織 健/Bar:青戸 知
小林研一郎指揮 日本フィルハーモニー交響楽団/東京芸術大学声楽科(有志)


3年ぶりにコバケンの第9を聴いた。コバケンの第9には歌う方でも聴く方でも、もう20年来親しんでいるが、一時「やり過ぎでは?」なんて疑問を持った時期も含め、コバケンの「第9哲学」とでも言える強烈なメッセージが伝わってくる演奏は裏切られることがない。

今夜の3年ぶりのコバケン第9も第4楽章では無条件に感動させてくれた。すさまじい程の熱気を帯びた集中力で語りかけ、歌いかけ、呼びかけてくるこの楽章の演奏には全てのドラマが凝縮されている。静かに深く内面へと入りこむ場面から、全身全霊で世界中の人々へ歌いかける場面まで、緊張の糸が途切れることなく伸びて行き、聴くものをどんどんと高みへと導いてくれる。
コバケンの真骨頂である”Ihr stürzt nieder...” のくだり、終盤の”Alle Menschen”から”wo dein sanfter Flügel weilt”に至る世界観、どれも思いっきり健在で嬉しい。以前はオケの長い間奏の後の「喜びの歌」の大合唱でsfzのアクセントを強調していたが、ここはより大らかに歌わせるようにするなどの変化はあるが、やはりコバケンがこの4楽章で伝えるものは不変であり普遍。それが聴きたくて演奏会に出かけるわけでもある。
いつも聴く武蔵野合唱団の血走るほどにパンチの効いたスポーツ感覚の合唱もいいが、芸大の多少の余裕も感じられる輝かしいヴォリューム溢れるしなやかな合唱も良かった。ソロではテノールの錦織さんが好印象だったのを始め、ソプラノの菅さんもキンキンしない伸びやかで美しいソロだった。よくガッカリさせられる4人のアンサンブルも上々。もちろん日フィルも大健闘。目立ったミスがないなどといったレベルを越え、コバケンが求める「第9」を実現するのに大いに貢献した。

但し第3楽章までに関しては、2楽章での切れ味には感じ入るものがあったものの、野暮ったさが抜けない演奏にはやはり進歩が見えない。コバケンの求める世界が空回りしているような気もする… とは言え、4楽章を聴くとそれまでの欲求不満は一気に解消されてしまうのだが。
終演後のブラボーと拍手のすごさもコバケン/日フィルならではだが、団長の挨拶があったり、コバケンが日フィルへの募金を呼びかけたり、おまけにフィナーレ終盤の”Seid umschlungen”からアンコールをやったりするのはコバケン/日フィルのみに許される芸当。ついつい募金する気になってしまうのもコバケンマジックかも。これからもこのコンビには頑張って欲しい。

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