8月23日(月)アンゲリカ・キルヒシュラーガー(MS)/クリストファー・ヒンターフーバー(Pf)
草津音楽の森国際コンサートホール
【曲目】
♪ シューベルト/シルヴィアに Op.106-4 D 891
♪ シューベルト/春の小川に寄せて Op.109-1 D 361
♪ シューベルト/月に寄せてD 296
♪ シューベルト/ノルナの歌 Op.85-2 D 831
♪ シューベルト/あなたのそばにいるだけで Op.95-2 D 866
♪ ブラームス/永遠の愛 Op.43-1
♪ ブラームス/窓辺で Op.14-1
♪ ブラームス/1本の菩提樹が~4つのドイツ民謡集WoO33
♪ ブラームス/別れ Op.97-6
♪ ブラームス/荒野の上を~6つの歌曲 Op.86-4
♪ ブラームス/動かぬなまぬるい空気~8つのリートと歌 Op.57-8
♪ ♪ ♪ ♪ シューマン/花の曲 Op.19(ピアノソロ)
♪ シューマン/愛の歌~歌曲と歌 第2集 Op.51-5
♪ シューマン/兵士の花嫁 Op.64-1
♪ シューマン/蓮の花 Op.25-7
♪ シューマン/世捨て人~3つの歌より
♪ R.シュトラウス/何も!Op.10-2 TrV 141~「最後の葉」からの8つの詩
♪ R.シュトラウス/憩え、我が魂よ 作品27-1 TrV170~4つの歌より
♪ R.シュトラウス/献呈 Op.10-1 TrV 141
♪ マーラー/ラインの伝説~ 子供の不思議な角笛
♪ マーラー/高遠なる知性の賛美 ~子供の不思議な角笛
♪ マーラー/それ行け!~若き日の歌 第2集
(アンコール)
♪ ブラームス/月は明るく照らさないで~ドイツ民謡集WoO33-35
草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティバルが、3年ぶりに海外からアーティストを迎えて開催されている。毎日のコンサートのなかで一番行きたかったのがキルヒシュラーガーのリサイタル。
アンゲリカ・キルヒシュラーガーと云えば、アバドが目当てでベルリンに行って聴いたベルリンフィルの演奏会でのソリストとして深い感銘を受けたアーティスト。あれから13年。ドイツリートで構成された魅力的なプログラムによるリサイタルを聴くために、日帰りで草津へ出かけた。
ステージに登場したキルヒシュラーガーは、華やかな衣装を身に着けてゴージャス感が漂う。そして始まった「シルビアに」でいきなり心を鷲掴みにされ、アンコールの最後の1曲まで魅了し続けた。キルヒシュラーガーは言葉と歌唱の両方で稀有の魅力を発揮した。
まず言葉。滑らかな美しい発音で発せられる一つ一つの言葉の意味が、をデリケートに、かつはっきりと伝わってくる。喜びの光が射しているかと思えば、次の言葉ではさっと変化して不安の影がよぎる。これは単に明瞭な発音とか、美しい発音とかでは成し得ない、もちろんネイティブだからというだけではあり得ない、言葉に対する緻密なプランと扱い、繊細な感性があってのことだろう。例えば、子音が発せられるタイミングや摩擦音の持続時間などを緻密にコントロールすることで言葉の持つ特性が伝えられ、詩全体が生き生きと立ち上がってくる。詩の脚韻が、歌曲でこれほど引き立って、しかも自然に生えて聴こえるのをこれまで聞いたことがあっただろうか。ブラームスのドイツ民謡で使われている方言もとても自然に語られる。
そんな生きた言葉を乗せる歌唱が、言葉の魅力を伝えるのに最も相応しい声と表現力を具えている。微風が水面を細かく震わせるような微細で心地よい振動を含むデリケートな声が、心の琴線を震わせ、聴き手を優しく包み込む。喜び、悲しみ、憧れ、勇気、願い・・・ あらゆる感情を自然に表現する。ある時は心の底から温かく、ある時はチャーミングに、また魔性やおどけが顔を出すことも。決して大げさではなく、ソフトなタッチが基本。そんな歌唱に親近感を覚え、安心して身を委ねたくなるが、ここぞという場面でのエネルギー全開の濃厚な熱量もすごかった。そんな時はデリケートな声が俄然パワフルに輝く。
キルヒシュラーガーの歌唱は詩の佇まいと音楽の佇まいが一致し、詩と音楽が格調高く融和する。ドイツリートの理想像、あるべき姿を感じた。きっとマスタークラスでは、ドイツリートの奥義を伝授してくれるのだろう。是非聴講したいところだが今回は日帰り。。
草津でおなじみのヒンターフーバーのピアノも素晴らしかった。キルヒシュラーガーの歌に影のように寄り添い、いくぶんくぐもった音(ベーゼンドルファーの特質?)は、心の奥底の感情をそっとデリケート伝える。音の色彩が淡いグラデーションで仄かに香り、また、盛り上がる場面では先導して煽ることも。ソロで弾いた「花の曲」も柔らかなテイストで詩情を醸し出していたが、伴奏のときよりアグレッシブ。ヒンターフーバーはキルヒシュラーガーの歌に最適のピアニストではないだろうか。
はるばる草津まで聴きに来て本当に良かった。
ところで、僕は演奏曲目の対訳を事前にネット検索して印刷して、歌詞を見ながら聴いた。そうしないと歌の魅力は半分も伝わらない。販売していたパンフレットには対訳も載っているはずだが、周囲で歌詞を見ている人がいなかったのが不思議でならない。歌曲の演奏会では、言葉の一つ一つがわかる対訳が欠かせないと思うのだが。
公開レッスン(クリストファー・ヒンターフーバー)草津音楽アカデミー&フェス2017(8/28)
公開レッスン(クリストファー・ヒンターフーバー)草津音楽アカデミー&フェス2015(8/21)
ヴァルガとヒンターフーバー(草津音楽アカデミー&フェス2015(8/20))
アバド指揮ベルリン・フィル(MS:キルヒシュラーガー)2009.5.22 ベルリン・フィルハーモニー
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♪ シューベルト/月に寄せてD 296
♪ シューベルト/ノルナの歌 Op.85-2 D 831
♪ シューベルト/あなたのそばにいるだけで Op.95-2 D 866
♪ ブラームス/永遠の愛 Op.43-1
♪ ブラームス/窓辺で Op.14-1
♪ ブラームス/1本の菩提樹が~4つのドイツ民謡集WoO33
♪ ブラームス/別れ Op.97-6
♪ ブラームス/荒野の上を~6つの歌曲 Op.86-4
♪ ブラームス/動かぬなまぬるい空気~8つのリートと歌 Op.57-8
♪ シューマン/愛の歌~歌曲と歌 第2集 Op.51-5
♪ シューマン/兵士の花嫁 Op.64-1
♪ シューマン/蓮の花 Op.25-7
♪ シューマン/世捨て人~3つの歌より
♪ R.シュトラウス/何も!Op.10-2 TrV 141~「最後の葉」からの8つの詩
♪ R.シュトラウス/憩え、我が魂よ 作品27-1 TrV170~4つの歌より
♪ R.シュトラウス/献呈 Op.10-1 TrV 141
♪ マーラー/ラインの伝説~ 子供の不思議な角笛
♪ マーラー/高遠なる知性の賛美 ~子供の不思議な角笛
♪ マーラー/それ行け!~若き日の歌 第2集
(アンコール)
♪ ブラームス/月は明るく照らさないで~ドイツ民謡集WoO33-35
草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティバルが、3年ぶりに海外からアーティストを迎えて開催されている。毎日のコンサートのなかで一番行きたかったのがキルヒシュラーガーのリサイタル。
アンゲリカ・キルヒシュラーガーと云えば、アバドが目当てでベルリンに行って聴いたベルリンフィルの演奏会でのソリストとして深い感銘を受けたアーティスト。あれから13年。ドイツリートで構成された魅力的なプログラムによるリサイタルを聴くために、日帰りで草津へ出かけた。
ステージに登場したキルヒシュラーガーは、華やかな衣装を身に着けてゴージャス感が漂う。そして始まった「シルビアに」でいきなり心を鷲掴みにされ、アンコールの最後の1曲まで魅了し続けた。キルヒシュラーガーは言葉と歌唱の両方で稀有の魅力を発揮した。
まず言葉。滑らかな美しい発音で発せられる一つ一つの言葉の意味が、をデリケートに、かつはっきりと伝わってくる。喜びの光が射しているかと思えば、次の言葉ではさっと変化して不安の影がよぎる。これは単に明瞭な発音とか、美しい発音とかでは成し得ない、もちろんネイティブだからというだけではあり得ない、言葉に対する緻密なプランと扱い、繊細な感性があってのことだろう。例えば、子音が発せられるタイミングや摩擦音の持続時間などを緻密にコントロールすることで言葉の持つ特性が伝えられ、詩全体が生き生きと立ち上がってくる。詩の脚韻が、歌曲でこれほど引き立って、しかも自然に生えて聴こえるのをこれまで聞いたことがあっただろうか。ブラームスのドイツ民謡で使われている方言もとても自然に語られる。
そんな生きた言葉を乗せる歌唱が、言葉の魅力を伝えるのに最も相応しい声と表現力を具えている。微風が水面を細かく震わせるような微細で心地よい振動を含むデリケートな声が、心の琴線を震わせ、聴き手を優しく包み込む。喜び、悲しみ、憧れ、勇気、願い・・・ あらゆる感情を自然に表現する。ある時は心の底から温かく、ある時はチャーミングに、また魔性やおどけが顔を出すことも。決して大げさではなく、ソフトなタッチが基本。そんな歌唱に親近感を覚え、安心して身を委ねたくなるが、ここぞという場面でのエネルギー全開の濃厚な熱量もすごかった。そんな時はデリケートな声が俄然パワフルに輝く。
キルヒシュラーガーの歌唱は詩の佇まいと音楽の佇まいが一致し、詩と音楽が格調高く融和する。ドイツリートの理想像、あるべき姿を感じた。きっとマスタークラスでは、ドイツリートの奥義を伝授してくれるのだろう。是非聴講したいところだが今回は日帰り。。
草津でおなじみのヒンターフーバーのピアノも素晴らしかった。キルヒシュラーガーの歌に影のように寄り添い、いくぶんくぐもった音(ベーゼンドルファーの特質?)は、心の奥底の感情をそっとデリケート伝える。音の色彩が淡いグラデーションで仄かに香り、また、盛り上がる場面では先導して煽ることも。ソロで弾いた「花の曲」も柔らかなテイストで詩情を醸し出していたが、伴奏のときよりアグレッシブ。ヒンターフーバーはキルヒシュラーガーの歌に最適のピアニストではないだろうか。
はるばる草津まで聴きに来て本当に良かった。
ところで、僕は演奏曲目の対訳を事前にネット検索して印刷して、歌詞を見ながら聴いた。そうしないと歌の魅力は半分も伝わらない。販売していたパンフレットには対訳も載っているはずだが、周囲で歌詞を見ている人がいなかったのが不思議でならない。歌曲の演奏会では、言葉の一つ一つがわかる対訳が欠かせないと思うのだが。
公開レッスン(クリストファー・ヒンターフーバー)草津音楽アカデミー&フェス2017(8/28)
公開レッスン(クリストファー・ヒンターフーバー)草津音楽アカデミー&フェス2015(8/21)
ヴァルガとヒンターフーバー(草津音楽アカデミー&フェス2015(8/20))
アバド指揮ベルリン・フィル(MS:キルヒシュラーガー)2009.5.22 ベルリン・フィルハーモニー
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キルヒシュラーガー来日してたんですね。そうと知っていれば、私も草津まで行ったのに~。残念!