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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

トリオ・テンペストーゾ

2023年09月29日 | pocknのコンサート感想録2023
9月13日(水)トリオ・テンペストーゾ
(Accord:サーニャ・ムリナリク/Cl:アンドラーシュ・ゴローブ/Vc:ウルバン・メグザール)
~フィルハーモニー・ランチコンサート~
ベルリン・フィルハーモニーのホワイエ

【曲目】
1.ストラヴィンスキー/組曲「プルチネルラ」
2.ハイドン/トリオ ト長調 Hob.XV:25
3.ファーガルント/クラリネット、アコーディオン、チェロのための「ブレス(Breath)」
4.ピアソラ/ル・グラン・タンゴ
(アンコール)
♪ ラヴェル/組曲「マ・メール・ロア」~妖精の園



フィルハーモニーのホワイエで毎週火曜日に行われている無料のランチタイムコンサートに出掛けた。30分近く前に着いたが、平日のお昼にもかかわらず会場には大勢の人が集まっていた。若い人も多い。働く人が昼休みに来ることを想定して開催されているそうだ。ホワイエの仮設ステージ前には椅子がたくさん並べられているが、これは重度の障害証明(Schwerbehindertenausweis)を持つ人の専用席と書いてあって係員が誘導していた。元気そうなお年寄りが座っていたので、重度障害というより、所謂介護認定を受けている人の障害者手帳のようなものだろう。僕は、ステージに近い床で空きを見つけてそこに座り込んでコンサートを楽しんだ。


出演はトリオ・テンペストーゾというオーストリアの若手アーティストで結成されているトリオ。アコーディオンが入るのは珍しい。このトリオで、ハイドンから現代の作品まで幅広レパートリーで、それぞれの曲目の特徴を掴んだ多彩な演奏を楽しんだ。3人はお互いのタイミングを見計らいながら、自由で伸び伸びと楽しそうに楽器を奏で、生き生きとしたアンサンブルを聴かせた。

最初のプルチネッラ組曲は瑞々しく潔く弾ける演奏を、ハイドンでは優美でチャーミングで楽しい演奏を、今日の曲目で唯一、このトリオの編成用に書かれたという「ブレス」という曲は、研ぎ澄まされた緊迫感を伴い、微分音が使われたりするなど新鮮な印象の導入のあとは、リズミカルでアヴァンギャルドな音楽になってノリノリの演奏となった。そんな流れを汲んだピアソラもリズミカルで熱い哀愁漂う演奏を繰り広げ、聴衆からの盛大な拍手と歓声に応えてアンコールも演奏された。

3人のプレイヤーはそれぞれ優れた演奏能力を持ち、歌心と自然な呼吸のリズム感を具えている。今日のコンサートでは「ブレス」以外は編曲ものが並び、クラリネットがメロディーを担うことが多かったこともあり、ゴローブの生き生きと自由自在に弾けるクラリネットの演奏がとりわけ光った。チェロのメグザールは思いきりのいい果敢なアプローチで時に打楽器のような響きを聴かせるなどで活躍した。

アコーディオンのムリナリクは味わい深い節回しと、鋭く切り込むリズムでアンサンブル全体の呼吸を作り、ソロを引き立て、アンサンブルに潤いを与える優しいハーモニーを奏でた。せっかくの珍しい楽器だし、ハイドンなんて原曲を重んじれば鍵盤楽器がもっと活躍するはずだし、アレンジでもう少しアコーディオンの聴かせどころを登場させて欲しいとも思った。

珍しい組み合わせのトリオが、このような場所で多くの聴衆を得て活躍している場に居合わせ、こちらでは様々な音楽活動の可能性が開けていると感じた。コンサートは無料だが、国連の難民支援のための募金活動を行っていたので、少しばかり寄附をしてホールを出た。


(順次更新中)ウィーン&ベルリン音楽の旅(2023)

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