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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

グラジニーテ=ティーラ指揮 ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団(ベルリン音楽祭)

2023年09月29日 | pocknのコンサート感想録2023
9月12日(火)ミルガ・グラジニーテ=ティーラ指揮 ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団/ミュンヘン・フィルハーモニー合唱団
~ベルリン音楽祭2023~
ベルリン・フィルハーモニーホール

【曲目】
♪ マーラー/交響曲第2番ハ短調「復活」

S:タリサ・トレヴィン/A:オッカ・フォン・デア・ダムラウ




ウィーンからベルリンへ移動した日の夜、ちょうど開催されている「ベルリン音楽祭」のなかで行われたミュンヘン・フィルの演奏会を聴いた。ミュンヘン・フィルは昨夜の客演地のケルンから、ドイツ鉄道(DB)でベルリン入りすることになっていたが、コンミスの青木尚佳さんから「DBが大幅な遅れ」その後、「予定の電車が運行中止になった」とお知らせが続いた。どうなることかと会場へ行ったら開演15分遅れのお知らせ。演奏会は予定通り行われるということで胸を撫で下ろした。開演の遅れについて主催者からステージで報告があったあと(会場には笑いが・・・)始まったマーラーの「復活」は、ハプニング付きの長旅の疲れを微塵も感じさせない感動の名演となった。


開演15分遅れを伝えるデジタルサイネージ

その気合いは冒頭からビンビン伝わって来た。低弦の食らい付きには大地を揺るがすパワーと凄みを感じた。金管は堂々たる厚みと豊かな響きを湛え、弦は輝かしくしなやかに熱く歌い、オーケストラが一丸となってハイテンションの演奏を繰り広げた。更に何が起こるんだろうという緊迫感が、ここぞという時にパワー全開となって炸裂する。

その一方で、第2楽章の優美なダンスなど、色香を湛えた歌が生の喜びを伸び伸びと謳歌する。このオケの底力と柔軟さを感じずにはいられない。楽員の気合いはハンパなく、全身全霊で音楽に向かう姿が肌に伝わってきた。指揮者のグラジニーテ=ティーラは、名前を聴くのも初めてだが、明快でダイナミックな指揮姿で、オケからクリアな響きと熱いパッション、豊かな表情を引き出し、この大曲を見事にまとめ上げて行く。

そこへ歌唱が加わる。第4楽章のアルト独唱による「原光」。ダムラウの歌は彫りが深くて大きくて温かく、言葉がくっきり浮かび上がってくる。息を呑む神々しい名唱に思わず襟を正す。そして終楽章。オーケストラによる緊迫した静寂に続いていよいよ合唱が入る(客席の咳の何と多いことか。。)。ミュンヘン・フィルの合唱は、ため息ほどの静かな声が、塊になるとどれほどの存在感と熱を得ることか!深さ、熱さ、密度、どれも申し分なく、分厚い塊となって抱擁してくる。静寂の中のかすかなバンダの響きが遠くにパラダイスを見るよう。そこにソプラノのトレヴィンの清澄で格調高い歌声が天から舞い降りてくる。

音楽はじわりじわりと高揚し、やがて渾身のパワーで大伽藍を打ち建てた。トリハダがゾワゾワと立ち心拍数が上がり、その大伽藍の最上部へと運び上げられる気分。オケと合唱とソロが巨大な塊となって大地を大きく揺るがし、死を征服して勝ち取った永遠の命を礼賛する。人間の力はこれほどまでに人の心を動かすのだと思い知った。会場はスタオベの聴衆の怒涛の拍手と歓声に包まれた。隣の女性は両手で顔を覆って嗚咽。指揮者がプレイヤーを立たせる度に大きな歓声が沸く。フィルハーモニーは興奮の坩堝と化した。

青木さんは、今夜はトップサイドでコンマスと共に一部ソロも担当してオケを牽引。その姿が頼もしく、嬉しく、誇らしくもあった。終演後、青木さんが会場の外で行われた打ち上げに誘ってくださり、美味しいビールとブレッツェルで熱き名演を振り返った。素晴らしい一夜だった。


(拡大可)



指揮のミルガさんとトップサイドの尚佳さんが並び立つ

(順次更新予定)ウィーン&ベルリン音楽の旅(2023)

ウィーンとベルリンで訪れた演奏会&オペラ(2009)

ドイツ&イタリア旅行2019 ハプニングシリーズ 2「どうなってんの?DB ~その1~」

青木尚佳(Vn)/ジャノ・リスボア(Vla)/ウェン=シン・ヤン(Vc)/2023.4.13 東京文化会館(小)
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