5月20日(水)ベルリン・ドイツオペラ公演
ドイチェ・オーパー・ベルリン
【演目】
ロッシーニ/歌劇「ラ・チェネレントラ」
【配役】
ラミーロ王子:マリオ・ゼッフィーリ(T)/ダンディーニ:サイモン・ポーリー(Bar)/ドン・マニフィコ:ロレンツォ・レガッツォ(B)/クロリンダ:マルティナ・ヴェルシェンバッハ(S)/ティスベ:ルチア・チリッロ(MS)/アンジェリーナ(チェネレントラ):ルクサンドラ・ドノーゼ(MS)/アリドーロ:ヴォチェック・ジールラッハ"Wojtek Gierlach"(B)
【演出】サー・ペーター・ホール
【舞台】ヒルデガルト・ベヒトラー 【衣装】モーリッツ・ユンゲ
【演奏】
グイレルモ・ガルシア・カルヴォ指揮 ベルリン・ドイツオペラ管弦楽団/ベルリン・ドイツオペラ合唱団
ベルリン・ドイツオペラで「チェネレントラ」のプレミエを観た。バレンボイムが音楽監督を務めるベルリン国立歌劇場に人気は少々取られているかも知れないが、こちらも大変充実した公演だった。
新演出ということだが、序曲に続いて幕が上がるとフェルメールの絵画を思わせるような陰影のある深くて美しい色彩の舞台が目に入って来た。天井まで抜ける大きな窓から漏れる光の向こうにまで奥行きを感じる。置かれた家具調度類も人々の衣装もそんなセットに調和している。もう一つの主要な場面である王子様の宮殿は明るくすっきりした格調あるセット。こうした美しい伝統的な舞台は観ていて気持が落ち着く。
一方で登場人物達がそれぞれに内面を歌う場面や、何かをこっそりたくらんだりする時は背景が暗くなり人物だけが浮かび上がるなど心理描写を上手く演出していた。演出で他に面白いと思ったのは2幕の嵐の場面。驚くばかりの凄まじさで窓がドシンバタンと開閉し、照明が大きく揺れ、壁に掛かった額や棚のものが容赦なく落ちる中を人々が逃げ惑ったりテーブルの下に潜り込んだり… まるで大地震の光景だ。そして窓からは馬車が派手につんのめるのが見えてまたリアル!視覚的にいろいろと大いに楽しめる。
人物で目を引いたのは賢者アリドーロの立ち回り。この物語りの大切な場面でアリドーロが果たす役目をその動作が巧みに伝えていた。この役が印象に残ったのはジールラッハの演技と歌唱に負うところが大きい。ジールラッハの歌は賢者の名にふさわしく深い機知に富み、大きな説得力がある。声もツヤがあって冴えていて、この歌で説得されればアンジェリーナ(チェネレントラ)も王子様のパーティーに行く決心をするというもの。こうしてアリドーロはこの物語りのキーマンとして見事に役を決めた。
チェネレントラ役のドノーゼもとても印象に残った。最初のアリア「昔あるところに王さまが」のなんと深い哀しみを湛えた情感。ドノーゼはタイトルロールにふさわしい技量と存在感を発揮し、感情の深い何層ものヒダを表現していた。随所に現れるコロラトゥーラも見事で、最後のアリア「悲しみと涙のうちに生まれ」も大きな喝采とブラボーをもらっていた。ラミーロ王子役のゼッフィーリも良かった。骨太ではないが、高貴な空気を伝える美声は高音でも冴えわたり、終盤でハイCを楽々と出しまくり会場を大いに沸かせた。
ベルリンのオペラも歌唱のレベルは皆高く、全ての歌手がこの好公演に貢献した。指揮のガルシア・カルヴォが活き活きと音楽を運び、オーケストラはウィーン・シュターツオーパーのような独特の響きはないが、クリアなアンサンブルで全幕を支えて文句なし。初めて接するチェネレントラを心行くまで楽しむことができた。
ドイチェ・オーパー・ベルリン
【演目】
ロッシーニ/歌劇「ラ・チェネレントラ」
【配役】
ラミーロ王子:マリオ・ゼッフィーリ(T)/ダンディーニ:サイモン・ポーリー(Bar)/ドン・マニフィコ:ロレンツォ・レガッツォ(B)/クロリンダ:マルティナ・ヴェルシェンバッハ(S)/ティスベ:ルチア・チリッロ(MS)/アンジェリーナ(チェネレントラ):ルクサンドラ・ドノーゼ(MS)/アリドーロ:ヴォチェック・ジールラッハ"Wojtek Gierlach"(B)
【演出】サー・ペーター・ホール
【舞台】ヒルデガルト・ベヒトラー 【衣装】モーリッツ・ユンゲ
【演奏】
グイレルモ・ガルシア・カルヴォ指揮 ベルリン・ドイツオペラ管弦楽団/ベルリン・ドイツオペラ合唱団
ベルリン・ドイツオペラで「チェネレントラ」のプレミエを観た。バレンボイムが音楽監督を務めるベルリン国立歌劇場に人気は少々取られているかも知れないが、こちらも大変充実した公演だった。
新演出ということだが、序曲に続いて幕が上がるとフェルメールの絵画を思わせるような陰影のある深くて美しい色彩の舞台が目に入って来た。天井まで抜ける大きな窓から漏れる光の向こうにまで奥行きを感じる。置かれた家具調度類も人々の衣装もそんなセットに調和している。もう一つの主要な場面である王子様の宮殿は明るくすっきりした格調あるセット。こうした美しい伝統的な舞台は観ていて気持が落ち着く。
一方で登場人物達がそれぞれに内面を歌う場面や、何かをこっそりたくらんだりする時は背景が暗くなり人物だけが浮かび上がるなど心理描写を上手く演出していた。演出で他に面白いと思ったのは2幕の嵐の場面。驚くばかりの凄まじさで窓がドシンバタンと開閉し、照明が大きく揺れ、壁に掛かった額や棚のものが容赦なく落ちる中を人々が逃げ惑ったりテーブルの下に潜り込んだり… まるで大地震の光景だ。そして窓からは馬車が派手につんのめるのが見えてまたリアル!視覚的にいろいろと大いに楽しめる。
人物で目を引いたのは賢者アリドーロの立ち回り。この物語りの大切な場面でアリドーロが果たす役目をその動作が巧みに伝えていた。この役が印象に残ったのはジールラッハの演技と歌唱に負うところが大きい。ジールラッハの歌は賢者の名にふさわしく深い機知に富み、大きな説得力がある。声もツヤがあって冴えていて、この歌で説得されればアンジェリーナ(チェネレントラ)も王子様のパーティーに行く決心をするというもの。こうしてアリドーロはこの物語りのキーマンとして見事に役を決めた。
チェネレントラ役のドノーゼもとても印象に残った。最初のアリア「昔あるところに王さまが」のなんと深い哀しみを湛えた情感。ドノーゼはタイトルロールにふさわしい技量と存在感を発揮し、感情の深い何層ものヒダを表現していた。随所に現れるコロラトゥーラも見事で、最後のアリア「悲しみと涙のうちに生まれ」も大きな喝采とブラボーをもらっていた。ラミーロ王子役のゼッフィーリも良かった。骨太ではないが、高貴な空気を伝える美声は高音でも冴えわたり、終盤でハイCを楽々と出しまくり会場を大いに沸かせた。
ベルリンのオペラも歌唱のレベルは皆高く、全ての歌手がこの好公演に貢献した。指揮のガルシア・カルヴォが活き活きと音楽を運び、オーケストラはウィーン・シュターツオーパーのような独特の響きはないが、クリアなアンサンブルで全幕を支えて文句なし。初めて接するチェネレントラを心行くまで楽しむことができた。