【自己実現の7原則】 第3の原則、感情とのつきあい方を学ぶ
野口嘉則
2019/09/24
おはようございます、野口嘉則です。
今回は、
「自己実現のための7つの原則」
のうち、
第3の原則についてお話しします。
第3の原則は、
「感情とのつきあい方を学ぶ」
です。
では、はじめましょう。
味わいたくない感情って、
いろいろありますよね。
たとえば、
悲しみとか、不安とか、孤独感とか、
がっかりとか、残念とか、焦りとか・・・
これらの感情は、
できるなら味わいたくないですよね。
ですが、
これらの感情が湧いてきたときに、
その感情を受け入れて、
ちゃんと感じて味わうことができたら、
感情は次第に和らいできます。
感情は十分に感じて味わうと、
次第に解放されていって、
和らいでくるのです。
(ただし、怒りのような第二感情は、
そのまま味わうのではなく、
その背後にある第一感情を見つけて
それを感じて味わうと、
怒りの感情も和らいできます)
しかし、
感じるにはあまりにも苦しい感情や、
感じると呑み込まれてしまいそうな
強い感情もありますよね。
そのような感情を
無理に感じて解放しようとすることは、
おすすめできません。
心のバランスが崩れて
情緒不安定になったり、
心がダメージを受けたりする場合が
あるからです。
心の深い傷から来る感情や、
トラウマチックな出来事にまつわる感情
についても、
無理に感じようとしたり、
解放しようとすると、
心が不安定になることがあります。
余談ですが・・・
心理的デブリーフィングという言葉を
ご存知ですか?
心理的デブリーフィングというのは、
1990年代に、
災害や事故の被災者・被害者に対する
心理的援助法として、
よく用いられた方法です。
ジェフリー・ミッチェルという人が
考案した方法で、
強いストレスを生じるような出来事や
トラウマチックな出来事を体験した人に、
その体験について語ってもらいながら、
その体験にまつわる感情の表出を促す
方法です。
この方法がPTSDの予防になると信じられ、
1990年代においては、
アメリカにおける被災者支援の定番とされました。
(「PTSD」とは、
トラウマの傷が後々にまで残り、
その人の人生に影響をもたらすこと。
「心的外傷後ストレス障害」とも言う)
援助者が被災者にインタビューする形で、
体験を語ってもらって、
感情の表出を促したり、
あるいは大きな災害が起きた後などに、
被災者を何人か集めてグル-プを作り、
グループ内で個々の体験を語り合ってもらって、
感情の表現を促したり、
そのような形で
心理的デブリーフィングは行われました。
被災者があまり話したがらない場合でも、
「話して感情を解放すれば楽になりますよ」
と促したのです。
(この心理的デブリーフィングは、
日本にも、阪神淡路大震災の直後、
アメリカから紹介され、入ってきました)
ところが、21世紀に入ったころから、
心理的デブリーフィングは、
PTSDの予防に有効でないばかりか、
トラウマ反応を強化してしまったり、
トラウマからの回復を遅らせたりする
場合がある、
という報告が相次ぎました。
「心理的デブリーフィングを行った直後には、
良くなった感じが得られるのだが、
将来的にはかえってPTSD症状が悪化する」
という実証データも提出されました。
こういった経緯もあって、現在では、
国際学会やアメリカの精神医学界において、
「被災者に対して心理的デブリーフィングを
行うべきではない」
というコンセンサスが成立しており、
また、日本でも、
『災害時地域精神保健活動ガイドライン』
には、
「災害直後に体験を聞きだすような介入は
有害であり、行ってはならない」
と記されています。
トラウマチックな出来事の記憶にともなう
強い感情や、
長年に渡るストレスにともなう強い感情を
安全に扱うには、
その感情に圧倒されないだけの強さを持った
柔軟かつ丈夫な「心の器」が必要です。
まず、「心の器」づくりが先決なのです。
「心の器」の柔軟さと丈夫さが
十分ではない状態で、
強い感情や根深い感情に
無理に向き合うと、
その感情に圧倒されてしまって、
精神的に不安定になってしまったり、
怒りっぽくなってしまったり、
トラウマ反応を強化してしまったりする
ことがよくあるのです。
もう一つ、別の話をしますね。
1970年代から1990年代くらいにかけて、
主にアメリカの西海岸で、
感情のストレートな発散や表出を促す
ワークショップが流行りました。
それらのワークショップでは、
「感情の解放」という名目のもとに、
感情を喚起し表出させる手法が用いられ、
感情をゆさぶられた参加者の号泣する姿が、
会場のあちこちで見られました。
高揚した雰囲気の中で、
感情を喚起し増幅させる手法を用いる
タイプのセミナーもありました。
また、怒りの感情なども
ストレートに表出・発散するよう促す
ものがかなり多かったようです。
参加者の中には、
「スッキリして、楽になった」
「素晴らしい体験をした」
といった感想を述べる人も
多くいましたが、
一方、
ワークショップに参加したことで
情緒不安定になってしまった人や、
怒りっぽくなってしまった人や、
感情のコントロールができなくなって
しまった人も
たくさん出たのです。
丈夫な「心の器」が
できあがってない状態で
感情をストレートに発散・表出することを
繰り返すと、
「心の器」が脆弱化したり、
損傷することもあります。
上記のようなワークショップの
参加者の中には、
そのようなことになってしまった方も
かなりおられたものと思います。
以上、
心理的デブリーフィングの話と
感情解放系ワークショップの話を通して
僕がお伝えしたかったことは、
どんな感情でも感じて味わえばよい
というわけではありません、
ということです。
落ち着いて静かに感じることができる感情
については、
じっくりと感じて味わうとよいと思います。
そうすると、その感情は、
徐々に解放されていき、和らいできます。
ですが、
圧倒されるような感情や
呑み込まれそうな感情や
向き合うことに強い抵抗が生じる感情
については、
無理に感じようとするのではなく、
一旦、フタをすることが大切です。
そして、この「フタをする」ことも、
「心の器」づくりを促します。
圧倒されるような感情には一旦フタをし、
静かに感じて味わえる感情は
じっくりと感じて味わう、
この繰り返しによって、
柔軟かつ丈夫な「心の器」が育ちます。
柔軟かつ丈夫な「心の器」とは、
ケース・バイ・ケースで、
状況に応じて、
感情にフタをすることもできるし、
感情を感じて解放することもできる、
そんな器です。
そして、
「心の器」づくりがさらに進めば、
やがて、フタをした感情とも
向き合うことができるようになります。
一旦フタをした感情を、
静かに感じて、安全に解放できるように
なるのです。
というわけで、
ここまでのところをまとめますと、
感情を感じて解放することも、
感情にフタをすることも、
状況に応じて、
どちらもできるようになることが大切、
ということです。
ちなみに、
アクティング・アウトを頻繁にする人は
感情にフタをする力が弱い、
とも言えます。
つまり、自分では抱えきれない感情を
衝動的に行動や態度で表してしまう人は、
感情にフタをする力が
十分ではないわけです。
ビジネスの世界で普及しつつある
アンガー・マネジメントにおいても、
「感情の直接的な発散を頻繁にしていると、
心の膜が薄くなって、
ますます怒りっぽくなる」
ということを教えていますね。
アクティング・アウトを頻繁にやっていると、
「心の器」が脆弱化してしまい、
感情にフタをする力も弱まってしまうのです。
ただ、
アクティング・アウトも
心を守る方法の一つであり、
それはまったくなくすことはできないと
僕は思っています。
大切なのは、
アクティング・アウトの頻度を
少しずつ減らしながら、
「心の器」を育んでいくことです。
そして、
そのためのカギを握るのが、
感情とのつきあい方なのです。
以上、今回は、
自己実現のための第3の原則として
「感情とのつきあい方を学ぶ」
というお話をしました。
感情とのつきあい方に関しては、
大切なことがいくつもあり、
詳しくお話しすると本一冊くらいの
ボリュームになりそうな気がするので、
いずれ、このテーマで
本を書いてみたいと思います。
あと、ご参考までに、
感情とのつきあい方を習得する上で、
非常に効果的な手法としては、
・マインドフルネス認知療法
・弁証法的行動療法(DBT)
・アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)
などの手法があります。
これらの手法はどれも、
マインドフルネスと心理療法を
組み合わせたもので、
極めて効果的です。
僕もよく活用しており、
その恩恵にあずかっています。
ちなみに、
マインドフルネスというのは、
今この瞬間の自分の心の状態に
あるがままに気づくためのエクササイズ
のことです。
このマインドフルネスは、
Google や Intel をはじめとする先端企業が
社員のストレス解消や能力開発のために
取り入れていることで話題になったので、
ご存知の方も多いかもしれませんね。
今回の記事を読んで感じたことや
気づいたことを
以下の記事のコメント欄にご記入ください。
⇒ http://bit.ly/2m6cScD
(中略)
感じたことや気づいたことを
アウトプットすることで、
理解と気づきが深まり、
学んだことが定着しますので、
よかったらぜひ、
書き込んでみてください。
あなたのコメントを
楽しみにしています。
⇒ http://bit.ly/2m6cScD
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野口嘉則 メールレター
★このメールレターは自由に転送していただいて
けっこうです
今回は、
「自己実現のための7つの原則」
のうち、
第3の原則についてお話しします。
第3の原則は、
「感情とのつきあい方を学ぶ」
です。
では、はじめましょう。
味わいたくない感情って、
いろいろありますよね。
たとえば、
悲しみとか、不安とか、孤独感とか、
がっかりとか、残念とか、焦りとか・・・
これらの感情は、
できるなら味わいたくないですよね。
ですが、
これらの感情が湧いてきたときに、
その感情を受け入れて、
ちゃんと感じて味わうことができたら、
感情は次第に和らいできます。
感情は十分に感じて味わうと、
次第に解放されていって、
和らいでくるのです。
(ただし、怒りのような第二感情は、
そのまま味わうのではなく、
その背後にある第一感情を見つけて
それを感じて味わうと、
怒りの感情も和らいできます)
しかし、
感じるにはあまりにも苦しい感情や、
感じると呑み込まれてしまいそうな
強い感情もありますよね。
そのような感情を
無理に感じて解放しようとすることは、
おすすめできません。
心のバランスが崩れて
情緒不安定になったり、
心がダメージを受けたりする場合が
あるからです。
心の深い傷から来る感情や、
トラウマチックな出来事にまつわる感情
についても、
無理に感じようとしたり、
解放しようとすると、
心が不安定になることがあります。
余談ですが・・・
心理的デブリーフィングという言葉を
ご存知ですか?
心理的デブリーフィングというのは、
1990年代に、
災害や事故の被災者・被害者に対する
心理的援助法として、
よく用いられた方法です。
ジェフリー・ミッチェルという人が
考案した方法で、
強いストレスを生じるような出来事や
トラウマチックな出来事を体験した人に、
その体験について語ってもらいながら、
その体験にまつわる感情の表出を促す
方法です。
この方法がPTSDの予防になると信じられ、
1990年代においては、
アメリカにおける被災者支援の定番とされました。
(「PTSD」とは、
トラウマの傷が後々にまで残り、
その人の人生に影響をもたらすこと。
「心的外傷後ストレス障害」とも言う)
援助者が被災者にインタビューする形で、
体験を語ってもらって、
感情の表出を促したり、
あるいは大きな災害が起きた後などに、
被災者を何人か集めてグル-プを作り、
グループ内で個々の体験を語り合ってもらって、
感情の表現を促したり、
そのような形で
心理的デブリーフィングは行われました。
被災者があまり話したがらない場合でも、
「話して感情を解放すれば楽になりますよ」
と促したのです。
(この心理的デブリーフィングは、
日本にも、阪神淡路大震災の直後、
アメリカから紹介され、入ってきました)
ところが、21世紀に入ったころから、
心理的デブリーフィングは、
PTSDの予防に有効でないばかりか、
トラウマ反応を強化してしまったり、
トラウマからの回復を遅らせたりする
場合がある、
という報告が相次ぎました。
「心理的デブリーフィングを行った直後には、
良くなった感じが得られるのだが、
将来的にはかえってPTSD症状が悪化する」
という実証データも提出されました。
こういった経緯もあって、現在では、
国際学会やアメリカの精神医学界において、
「被災者に対して心理的デブリーフィングを
行うべきではない」
というコンセンサスが成立しており、
また、日本でも、
『災害時地域精神保健活動ガイドライン』
には、
「災害直後に体験を聞きだすような介入は
有害であり、行ってはならない」
と記されています。
トラウマチックな出来事の記憶にともなう
強い感情や、
長年に渡るストレスにともなう強い感情を
安全に扱うには、
その感情に圧倒されないだけの強さを持った
柔軟かつ丈夫な「心の器」が必要です。
まず、「心の器」づくりが先決なのです。
「心の器」の柔軟さと丈夫さが
十分ではない状態で、
強い感情や根深い感情に
無理に向き合うと、
その感情に圧倒されてしまって、
精神的に不安定になってしまったり、
怒りっぽくなってしまったり、
トラウマ反応を強化してしまったりする
ことがよくあるのです。
もう一つ、別の話をしますね。
1970年代から1990年代くらいにかけて、
主にアメリカの西海岸で、
感情のストレートな発散や表出を促す
ワークショップが流行りました。
それらのワークショップでは、
「感情の解放」という名目のもとに、
感情を喚起し表出させる手法が用いられ、
感情をゆさぶられた参加者の号泣する姿が、
会場のあちこちで見られました。
高揚した雰囲気の中で、
感情を喚起し増幅させる手法を用いる
タイプのセミナーもありました。
また、怒りの感情なども
ストレートに表出・発散するよう促す
ものがかなり多かったようです。
参加者の中には、
「スッキリして、楽になった」
「素晴らしい体験をした」
といった感想を述べる人も
多くいましたが、
一方、
ワークショップに参加したことで
情緒不安定になってしまった人や、
怒りっぽくなってしまった人や、
感情のコントロールができなくなって
しまった人も
たくさん出たのです。
丈夫な「心の器」が
できあがってない状態で
感情をストレートに発散・表出することを
繰り返すと、
「心の器」が脆弱化したり、
損傷することもあります。
上記のようなワークショップの
参加者の中には、
そのようなことになってしまった方も
かなりおられたものと思います。
以上、
心理的デブリーフィングの話と
感情解放系ワークショップの話を通して
僕がお伝えしたかったことは、
どんな感情でも感じて味わえばよい
というわけではありません、
ということです。
落ち着いて静かに感じることができる感情
については、
じっくりと感じて味わうとよいと思います。
そうすると、その感情は、
徐々に解放されていき、和らいできます。
ですが、
圧倒されるような感情や
呑み込まれそうな感情や
向き合うことに強い抵抗が生じる感情
については、
無理に感じようとするのではなく、
一旦、フタをすることが大切です。
そして、この「フタをする」ことも、
「心の器」づくりを促します。
圧倒されるような感情には一旦フタをし、
静かに感じて味わえる感情は
じっくりと感じて味わう、
この繰り返しによって、
柔軟かつ丈夫な「心の器」が育ちます。
柔軟かつ丈夫な「心の器」とは、
ケース・バイ・ケースで、
状況に応じて、
感情にフタをすることもできるし、
感情を感じて解放することもできる、
そんな器です。
そして、
「心の器」づくりがさらに進めば、
やがて、フタをした感情とも
向き合うことができるようになります。
一旦フタをした感情を、
静かに感じて、安全に解放できるように
なるのです。
というわけで、
ここまでのところをまとめますと、
感情を感じて解放することも、
感情にフタをすることも、
状況に応じて、
どちらもできるようになることが大切、
ということです。
ちなみに、
アクティング・アウトを頻繁にする人は
感情にフタをする力が弱い、
とも言えます。
つまり、自分では抱えきれない感情を
衝動的に行動や態度で表してしまう人は、
感情にフタをする力が
十分ではないわけです。
ビジネスの世界で普及しつつある
アンガー・マネジメントにおいても、
「感情の直接的な発散を頻繁にしていると、
心の膜が薄くなって、
ますます怒りっぽくなる」
ということを教えていますね。
アクティング・アウトを頻繁にやっていると、
「心の器」が脆弱化してしまい、
感情にフタをする力も弱まってしまうのです。
ただ、
アクティング・アウトも
心を守る方法の一つであり、
それはまったくなくすことはできないと
僕は思っています。
大切なのは、
アクティング・アウトの頻度を
少しずつ減らしながら、
「心の器」を育んでいくことです。
そして、
そのためのカギを握るのが、
感情とのつきあい方なのです。
以上、今回は、
自己実現のための第3の原則として
「感情とのつきあい方を学ぶ」
というお話をしました。
感情とのつきあい方に関しては、
大切なことがいくつもあり、
詳しくお話しすると本一冊くらいの
ボリュームになりそうな気がするので、
いずれ、このテーマで
本を書いてみたいと思います。
あと、ご参考までに、
感情とのつきあい方を習得する上で、
非常に効果的な手法としては、
・マインドフルネス認知療法
・弁証法的行動療法(DBT)
・アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)
などの手法があります。
これらの手法はどれも、
マインドフルネスと心理療法を
組み合わせたもので、
極めて効果的です。
僕もよく活用しており、
その恩恵にあずかっています。
ちなみに、
マインドフルネスというのは、
今この瞬間の自分の心の状態に
あるがままに気づくためのエクササイズ
のことです。
このマインドフルネスは、
Google や Intel をはじめとする先端企業が
社員のストレス解消や能力開発のために
取り入れていることで話題になったので、
ご存知の方も多いかもしれませんね。
今回の記事を読んで感じたことや
気づいたことを
以下の記事のコメント欄にご記入ください。
⇒ http://bit.ly/2m6cScD
(中略)
感じたことや気づいたことを
アウトプットすることで、
理解と気づきが深まり、
学んだことが定着しますので、
よかったらぜひ、
書き込んでみてください。
あなたのコメントを
楽しみにしています。
⇒ http://bit.ly/2m6cScD
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